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平面線形R=80m、横断勾配10%の曲線桁を移動多軸台車により架設

NEXCO東日本 横浜環状南線釜利谷ジャンクションで横浜横須賀道路を跨ぐランプ橋の桁を一括架設

公開日:2022.09.12

 NEXCO東日本関東支社横浜工事事務所は7月27日夜間、高速横浜環状南線釜利谷ジャンクションFランプ橋の横浜横須賀道路を跨ぐ桁を移動多軸台車により一括架設した。架設桁は平面線形R=80m、横断勾配10%(L側からR側への下り勾配)の曲線桁であり、移動多軸台車から架設位置への受け変えの際に、曲率半径が小さいために桁の倒れ方が変わることが最大の課題となった。そのため、架設桁の両側にベント設備を構築し、鉛直ジャッキとスライドシップを設置して施工に臨んだ。

桁長は38.9m、鋼重は176.2t
 交差道路上の俯角75°の範囲に金属溶射を採用

 同橋は、橋長178.2m、幅員11.5m~7.8mの鋼3径間連続非合成2主箱桁ラーメン橋。高速横浜環状南線(以下、横環南)の戸塚方面から横浜横須賀道路(以下、横横)の横須賀方面に向かうランプ橋となる。


釜利谷JCT概要図(NEXCO東日本横浜工事事務所提供。注釈なき場合は以下、同)

 一括架設したのはA1~P1間(P1上は剛結構造のため、ブロックではA1~J5)の桁で、桁長38.9m、幅員11.5m、鋼重176.2t、縦断勾配は下り4.3%~同2%となっている。床版はチャンネルビーム合成床版(IHIインフラシステム)を採用。また、架設桁を含め、交差道路である横横および横環南上下線の俯角75°の範囲(A1~J14)には供用後の維持管理の重要性の観点から、主構造と合成床版パネルに金属溶射(Al-Mg)を採用した。


同橋 上部工構造一般図(※拡大してご覧ください)/同橋全景(大柴功治撮影。以下、撮影=*)

一括架設を行ったA1~P1間の桁。R=80mの曲線桁だ(撮影=*)

横環南本線トンネル上を地組ヤードとして使用
 地組用ベントは6基構築 橋軸方向はすべて現場溶接

 架設桁の地組は、高田機工和歌山工場で製作した桁ブロックを横横に隣接した横環南本線トンネル上のヤードに陸送して行っている(本線トンネルは完成済み)。同ヤードはトンネル掘削土の仮置き場として使用されていた場所で、「地盤が良く、コンクリート舗装もされていたので、ヤードの条件は良かった」(元請の高田機工)という。本線トンネルに荷重による影響を与えることもなく、ベント直下の敷鉄板の敷設のみで対応できた。
 2022年4月から地組用ベントの構築と地組を開始し、ベントは桁両端部および各ジョイントの下となる位置に合計6基を構築した。地組は1ブロックずつ行っていき、各ジョイントを橋軸方向はすべて現場溶接で接合し、横桁はボルト接合している。7月上旬には地組を完了させた。


地組用ベントの構築と桁の地組

 架設用ベントはA1とJ5の手前に各1基を設置。地耐力を確認したうえで、基礎杭は打設せずに敷鉄板基面にて構築している。


一括架設前の状況(撮影=*)

9軸×2列の移動多軸台車を用いて施工
 ヤードから本線進入時の車輪の高低差は約600mm

 一括架設は、横横の港南台IC~朝比奈IC間(上下線)を21時から翌5時まで通行止めにして行われた。横横上の架設でベント設置場所が限られたうえにクレーンの設置場所もないことから、移動多軸台車を用いての架設となった。
 使用した移動多軸台車は「マックスキャリアV」で、4軸台車と5軸台車の2両を連結したうえで並列(2列)に配置している。最大積載重量494.1t/1列×2列に対して、桁重量にユニットジャッキや受梁などの設備を加えた台車上の総重量は328.9tであったが、「桁を搭載した時の重量バランスも考慮して、能力的にかなり余裕をみた台車構成にした」(同社)。


移動多軸台車は4軸台車と5軸台車の2両を並列に配置。台車上にユニットジャッキを2列2段搭載した(撮影=*)

 台車の車輪ストロークが700mm(±350m)であったことも同台車を採用した理由のひとつだ。架設位置手前までは横横下り線上を移動していくが、ヤードからの進入地点の下り線横断勾配が7%(中央分離帯から路肩への下り勾配)となっていた。そのため、進入時には一番高いJ5右側のタイヤと一番低いA1左側のタイヤの差が約600mmに達することから、台車上の重量バランスを保つために車輪を上下させて調整する必要があり、最大700mmのストロークが必要となったのだ。
 台車上には昇降能力150t、最大ストローク2,100mmの「ユニットジャッキ(UJ1501)」を2列2段(4台)搭載して、迅速で確実な昇降作業を可能にした。


移動多軸台車積付図/油圧により車輪を上下させる(撮影=*)

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