高欄を先行撤去し、両端部から中央に進む形で施工
桁上はフランジブラスターを用いて研掃
床版の撤去・架設、フランジブラスターの活用
床版の撤去架設は、両端部から中央に向かって追い込む形で施工していった。床版の撤去前にまず高欄を先行撤去する。具体的にはワイヤーソーなどで先行切断し、ずれないようアングルで止めた後、4.9tのミニクレーンで吊って横倒しにして、3tフォークリフトで橋面を走行して桁下に配置したクレーンに近い箇所まで運搬し、側道から吊下ろしていく。床版と一緒に撤去したかったが、門型架設機の寸法上の問題から、高欄があると機械が収まりきらなかったためである。
高欄の先行撤去状況①
高欄の先行撤去状況②
高欄の先行撤去状況③
床版の撤去は、センターホールジャッキで引きはがす従来の手法を採用している。撤去・架設サイズは半断面のためいずれも1パネル当たりの大きさは橋軸方向2m×橋軸直角方向5.5m、重量は約7tとなっている。これをハイウェイストライダーで吊り上げ、台車上に搭載し、中央の撤去専用の門型揚重機まで運び、場外に搬出する。
床版のコア抜き
床版のカッター切断(井手迫瑞樹撮影)
桁上に残った残コンを撤去し、既設スタッド部を平滑にした後は、床版上面の残錆などを「フランジブラスター」で研掃する。上フランジ幅に合わせた箱状の設備を使って研掃するブラストマシンで、周囲を覆ってバキュームしながら研掃するため、粉塵は発生するが飛散はおこらず、衛生環境が極めて良い現場となっている。 また、機能面でも優れている。ブラストヘッドは自動首振り装置が付いているため、何度もフランジ上を往復せずに済む。ブラストの鉛直噴射により添接板でも容易に研掃が可能だ。
フランジブラスターの施工状況
フランジ上面のケレン完了状況
上フランジの防錆塗装
ブラスト材は塗膜くずなどを選り分けて回収して再利用している。
ブラスト施工後は、桁・床版接合部にモルタル打設用の型枠シール材を配置し、運んできたPCaPC床版をハイウェイストライダーで架設していく。床版は工場で製作(トヨタT&Sと富士ピー・エスが製作)し、現場ヤードでクレーンを使ってプレキャストRC壁高欄(EMC壁高欄)と接合させた形で運びこむ(壁高欄の通りが微調整できるようモルタル打設は桁上で最後に行う)。
EMC壁高欄
床版は工場で製作し、現場ヤードでクレーンを使ってプレキャストRC壁高欄(EMC壁高欄)と接合させた形で運ぶ
床版の架設状況⑤
床版の高さ調整モルタルの打設には、スポンジ型枠としてモルトメールを使っている。幅5cmであるが、高さは床版の変化に応じて対応できる。床版架設施工時に生じるせん断抵抗をすべり面によって吸収し、シールパッキンの圧縮によるシール機能で合成部のグラウトコンクリートの漏れを防止する。2層構造となっており 、高さ調整機能と復元性の両方を兼ね備えている。
モルトメール
床版架設後は500mmピッチに1列3本でスタッド(M25)を溶植し、無収縮モルタルを打設して桁と一体化する。
スリムファスナー工法と「伸縮装置付きPcaPC床版」の採用
圧縮強度180N/mm2のスリムクリート SEFジョイント用いる
スリムファスナー工法
床版間の継手工法は、他の大林組が施工している現場と同様、超高強度繊維補強コンクリートを間詰材として用いるスリムファスナー工法を採用する。今回架設する床版同士の継手はもちろん、来春に打設する予定である追越車線側の半断面の床版との間に生じる縦継ぎ目の部分もスリムファスナー工法を使う予定としている。縦横の継手ともコンクリート圧縮強度180N/mm2のスリムクリートを使用している。継手の幅は210mmとしている。
スリムクリート(間詰材)の製作
スリムクリートの運搬
間詰コンクリートの打設①
間詰コンクリートの打設②
間詰コンクリートの打設完了後の状況(打設後はアクアマットで養生している)
「伸縮装置付きPcaPC床版」
連続桁間にある伸縮装置部両側は現場打ちの後打ちコンクリートではなく、伸縮装置両側に短いPcaPC床版をつないだ形で一体化したものを、架設する手法を採用している。現場で伸縮装置設置や現場打ちの手間を少なくし、施工効率および品質を向上させた。伸縮装置は横河NSエンジニアリングのSEFジョイントを用いている。これは「施工時の効率向上だけでなく、耐久性や損傷した場合の補修もしやすい構造を考慮したため採用した」(NEXCO中日本)。
床版と高欄の一体架設図
伸縮装置付きPcaPC床版を採用
現在は今シーズン(走行車線側)で取り替える対象805枚の半断面床版のうち約7割の架設が完了している。
桁塗替え面積は合計48,342m2に達する
支承はBP支承から高面圧系のコンパクト支承に交換
床版取替以外の補修補強
床版取替以外では、支承の交換、桁補強、塗装塗替え、排水管の一部補修、ジョイント交換などを行う。主桁の補強はL字の当て板補強が主となる。支承はBP支承から高面圧系のコンパクト支承へ交換する。桁塗替え面積は一般部が46,398m2、特殊部が1,944m2で合計48,342m2に達する予定だ。既設塗膜にPCBは含まれていないが、鉛が含まれているため、周辺環境及び作業員の健康に配慮した塗膜除去方法が必要となるため工法選定中である。
元請は大林組・本間組・加藤建設JV。一次下請は川口組(床版架設⼯、間詰⼯、半断⾯機組⽴解体、⾜場⼯、シールスポンジ)、岸本建設(床版撤去⼯、半断⾯機組⽴解体、⾜場⼯、ケレン⼯)、橋本建設(床版架設⼯、間詰⼯、半断⾯機組⽴解体、⾜場⼯、シールスポンジ)、アイワ工業(スタッド⼯)、宮本組(床版場内運搬⼯、床版破砕⼯)、ケミカル工事(床版・⾼欄無収縮⼯)、東海エンジニアリング、田中測量(測量工)、髙橋電機(仮設電気⼯)、中⽇本ハイウェイメンテナンス、シンコーハイウェイサービス(固定規制⼯)、エイワ(交通誘導)、髙橋電機工業(仮設電気⼯)、アイチ建運(クレーン⼯)。増設桁製作はJFEエンジニアリング。プレキャスト壁高欄製・仮設防護柵製作は揖斐川工業、ケイコン、ベルテクス。プレキャストPC床版製作は富士ピー・エス、トヨタT&S建設。足場材供給はタカミヤ。半断面機・揚重機製作は三信工業。