道路構造物ジャーナルNET

「実施要領」を制定 空いた時間を技術継承や抜き打ち検査などに有効活用

NEXCO中日本 「原則」遠隔臨場を実施へ

公開日:2022.06.01

 NEXCO 中日本は、工事・維持修繕作業の施工現場において「材料確認」や「現地立会」などの検査業務を、遠隔臨場で実施するための「遠隔臨場実施要領」を制定し、土木・施設工事等に原則適用することにした。2020年度から試行的に実施した結果、遠隔臨場は、受注者・発注者双方に労働時間の削減効果があり、施工管理の省力化に寄与することが確認され、積極的な活用に向けて遠隔臨場の「検査等の適用の範囲」や「使用する機器や留意事項」などを要領として制定したもの。時間削減効果だけでなく、検査業務について経験の深い技術者が、若手の技術者と共同で画面確認することで技術の継承につなげることや、捻出した時間を抜き打ち検査などに充当することで現場の引き締めも狙う。(井手迫瑞樹)

ウェアラブルカメラなどを用いてリアルタイムに現場の状況を撮影、確認
 電子入力の定型化も進めていく方針

 遠隔臨場は、現場の受注者がウェアラブルカメラなどを用いて、リアルタイムに現場の状況を撮影し、発注者は現場から離れた事務所で映像(動画)を確認するもの。これまでの工事に係る施工現場での検査などは、現地で受注者と発注者双方の目視などでの確認により実施されてきた。しかし、現場によってはNEXCO中日本の工事事務所や保全・サービスセンターから、1時間以上離れているところもある。例えば、橋脚の下部工業務の場合、基礎から橋脚コンクリートの打設まで6、7回の立会検査が必要であり、発注者側はその準備や移動、受注者側も待ち受け準備やその後の文書作成に合計約12時間を要し、お互いにデメリットとなっていた。これに遠隔臨場を適用することで、大幅に検査業務に要する時間を短縮できる。また、試行的に実施している新東名川西工事の現場(元請は清水建設)などでは、検査業務後の入力情報もタブレット入力により電子化しており、検査業務そのものだけでなく、検査後の書類作成も効率化している。NEXCO中日本では電子入力の定型化も進めていく方針だ。


施工者が現場の状況を撮影し

NEXCO中日本側は事務所にいながらにして状況を確認できる

 遠隔臨場実施要領の適用範囲は、土木工事共通仕様書、維持修繕業務仕様書、建築工事共通仕様書、機械設備工事共通仕様書、電気通信工事共通仕様書、施設保全管理業務共通仕様書、車両管理業務共通仕様書を適用している工事の検査が対象だ。但し、出来栄え(外観)確認や広範囲での確認や狭小部での確認は、現在のデジタル技術通信では確認が困難、現場で打音や触診によって確認する必要がある場合、測量機器を使用して視準する必要がある場合は遠隔臨場の範囲外としている。

各要領ごとの適用性(クリックすると拡大します)


施工管理が十分でない場合は現場での検査も

 適用範囲内であっても、遠隔臨場は全ての現場で使えるわけではない。「原則」というのは、そういう意味で、既にNEXCO中日本で実績があって良好な施工状況の会社は、信頼性があることから積極的に適用できるが、初めて受注した会社など施工管理が十分でない場合については、NEXCOが「遠隔臨場」の方法を通知しつつ、従来までの現場での検査も含めて業務を実施していく。これは中央道の耐震補強工事施工不良などでの反省材料を踏まえたもの。同様に「遠隔臨場」には業務の信頼性を増すための「録画」などができる余地があるが、それはデータサーバーの容量などから現実的ではないと判断。まずは遠隔臨場の適用をスムーズに進めていくことに全力を挙げる方針だ。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム