道路構造物ジャーナルNET

検査路は全体で5850m設置、塗替えも最大18,000㎡施工予定

NEXCO西日本九州支社 九州自動車道天降川橋の床版取替完了し、塗替え・検査路設置工事が進む

公開日:2022.05.30

 西日本高速道路九州支社は、九州自動車道の栗野IC~横川IC間の天降川渡河部(鹿児島県霧島市横川町字中ノ)に位置する天降川橋の大規模更新工事を進めている。メインとなる床版取替工事は既に完了しており、現在は検査路の設置工、塗装塗替え工などを進めている。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

供用42年が経過、床版厚は150~160mmに減厚している個所も
 建設時の海砂の脱塩処理が不十分で塩害による劣化を促進

 同橋は、1980年3月22日に供用された橋長422.6m、全幅20.5mの鋼3+4径間連続トラス橋。道路橋示方書は昭和48年2月を用いている。4本の主構の他に横梁上に2本の縦桁を配置する構造となっており、主桁間隔は2.45m、トラスの格点間隔は6mとなっている。床版厚は200mmで設計されているが、過年度の舗装切削によるものであろうか、150~160mmに減厚している個所もあった。累積疲労(1日交通量は10,600台)に加えて、南国とはいえ山間のため冬季には凍結防止剤を散布している影響や、塩分総量規制前の建設時であるため、建設時に海砂(骨材)が十分に脱塩処理されておらず、塩害による劣化を促進する状態となっていた。その結果、路面のポットホールの発生、床版下面には亀甲状のひび割れやエフロレッセンスの析出が見られていたこともあり、床版を取り替えることにしたものだ。

床版取替は合計8,600㎡超 中央から両端に開いていく形で施工
 エンドバンド継手、HQハイブレンAU工法を採用

 床版取替は上り線が4,444㎡、下り線が4,199㎡。取替枚数は上下線とも212枚だった上下線のうち、片方を対面通行規制とした上で、上り線、下り線の順に施工した。上下線とも施工班は2班体制として、中央から両端に開いていく形で、新設床版換算で1班当たり6枚(1枚2m)12m撤去・架設を行っていった。撤去前に地覆壁高欄はワイヤーソーで切断して吊り撤去し、既設床版は2mごとにあらかじめカッターで切断する。さらにセンターホールジャッキで桁から床版を剥離し、吊り撤去後、トラス主構および縦桁の上フランジ上のガラを除去し、残っている既設スタッドを切断し、上面をケレンして保護塗装を施した上で新設スタッド部のスポンジ型枠を配置し、新設床版の架設に備えた。

天降川橋補修一般図(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)

床版および桁断面図/床版構造一般図


既設床版の切断/同剥離/同吊り上げ状況

ジベル筋の撤去/フランジ上に残った鉄筋の切断

上フランジ上面のケレン作業/夜間にプレキャストPC床版を設置

プレキャストPC床版の設置状況

 撤去架設には200tオールテレーンクレーンを2台用いた。クレーンのアウトリガーは両側のトラス主構の格点上に配置するが、古いトラス橋のためアウトリガーの配置に際しては格点(6m)間にH鋼を配置して荷重を分散させるように配慮し、桁の損傷が起きないように努めている。

架設手順/200tオールテレーンクレーンを用いた


 クレーンの運用にも配慮している。片方は供用線、外側には民家が点在しているため、ブームは施工ヤード内での旋回をしなければならない。そのためブームは70°以上立てた状況での運用が必要となり、結果的に盛り替え回数が多く必要になった。
 新設床版の設置後は、翌日以降に設置完了分のスタッドを溶殖し、ハンチ部の型枠を設置した上で保護モルタルの打設を行い、床版の間詰コンクリートを施工した。継手構造としてはエンドバンド継手を採用している。高欄は現場打ちとし、これも1径間ごとに施工した。床版防水はニチレキのHQハイブレンAU工法、舗装の基層はFB13、表層は高機能Ⅰ型を採用している。床版防水以降の施工は、全径間の架設が完了した上で施工している。

間詰コンクリートの打設状況/打設後の床版上面

床版防水の施工状況

栗本鐵工所製のFRP検査路を採用、鋼製検査路に比べて重量は4分の1
 塗替え時の既設塗膜除去はNE-1,NE-3を使用し、ブラストで素地調整

塗替え・検査路設置
 塗替えは上下線合わせて最大18,000㎡施工する。Rc-Ⅰ(1種ケレン)を採用するが、既設塗膜には鉛を含んでいるため、塗膜剥離剤で掻き落とした上で、ブラストで素地調整を行う。剥離剤はネオスのNE-1、NE-3を用いている。膜厚が厚いため、夏場でも2回、冬場では3回塗布が必要であった。現在はJR肥薩線直上部のP4-P5の1径間が完了しており、他の3径間についても施工中だ。


塗膜剥離剤の施工と掻き落とし作業

ブラスト施工(左)/塗替え状況

塗替え前後の塗膜状況

 検査路は栗本鐵工所製のFRP製検査路を採用した。FRP製を採用したのは塩害への耐久性が強いことや、JRや県道などを跨ぐためメンテナンスサイクル(塗替えなど)を長期化する必要があったため。同検査路は、腐食が生じないFRP製であり、加えて紫外線落下対策としてふっ素樹脂塗装を施している。また、製作の際に主桁と床版を一体化した構造にしており、検査路本体の点検効率化と施工性を追求した。床版にはわずかな勾配を付けて水たまりが生じることを防いでおり、床版表面は砂入り塗料で粗く仕上げており、点検時に滑りにくくなる安全上の工夫も施している。


開口部から検査路の部材を投入する(中、右写真のみ井手迫瑞樹撮影)

上段検査路の設置状況

架台金具の設置状況/下段検査路設置状況

 検査路は全体で5,850mに達する。検査路の設置は桁下のヤードからクレーンで吊り上げて設置していく。足場はクイックデッキを採用しているが、一部に開口部を設けてそこから荷入れし、足場内に配置した台車で所定部まで運んで組み立てていく。FRP製は重量が金属製の検査路と比べて軽い(鋼製検査路に比べて約4分の1に軽量化)ためこうした作業が可能となった。
 検査路は桁色と併せてグレーにすることで、トラス橋の景観性を損なわないようにした。現在はP4-P5の上弦材部分の施工を終えた状況だ。

 元請は三井住友建設・SMCシビルテクノスJV。一次下請は床版取替工が岩永建設、餅井建設。塗装工が上原塗装、舗装工が三井住建道路など。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム