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橋梁残部の撤去方法および新橋の設計はこれから

岐阜県・国交省 川島大橋の撤去・架替えへの軌跡

公開日:2022.05.31

新桁を製作して単純につないでも一旦変わったモーメントは元には戻らない
 現在の道示と照らし合わせると下部工も含めて耐震性に劣る

 そのような中、川島大橋の通行止めにより各務原市がスクールバスなどによる送迎を行うなど、地域の通勤・通学に影響がでている実情や岐阜県知事からの要請も踏まえ、2021年9月に国が災害復旧事業を代行することになった。

 架替えか修繕か

 今回の損傷はP4橋脚が起点となっており、同橋脚と同橋脚にリンクするP3-A2の2径間は撤去および新設が必須であった。その一方で、A1-P3間は大きな損傷を受けておらず、これを残置してP3-A2のみ架替えるか、全体を架替えるかが議論の焦点となった。  しかし、A1-P3間は形としては残っているが、応力バランスを検証すると曲げモーメントが変わってしまっており、バランスが崩れている。さらに旧橋は単純トラス×5ではなく5径間連続トラス桁であった。そのため「新しく桁を製作して単純につないでも一旦変わったモーメントは元には戻らない」(岐阜国道事務所)。また、同橋の竣工は1962年であり、設計示方書は昭和31年鋼道路橋示方書と古く、現在の道示と照らし合わせると下部工も含めて耐震性に劣る。そのため、上下部を含めて撤去し、架替えることにした。

公道を走れない特殊重機も投入
 約2か月で瀬替え及び作業ヤード整備を行う

撤去準備
 撤去に当たっては、まず右岸側から左岸側への瀬替えを行った。
 クレーンの作業ヤード整備は、瀬替えで発生した河床土「とても良質な土砂(河川の中で掘削した土(A1側の土を掘削した))」(同事務所)」を使って盛土しているため、特に地盤対策は施していない。河川内の上質な土砂で転圧しているため、十分、必要な地耐力を満足しており、大きな重機やクレーンが載っても地耐力的に問題はなく、セメント改良などは施工していない。
 瀬替え及び作業ヤード整備は、1.4㎥クラスのバックホウ4台と20t級ブルドーザー3台、公道を走れない重ダンプ25t5台と35t1台を使用して施工した。準備工事には11月1日に着手し、瀬替えが終わったのが12月末。河床掘削は24万㎥で、施工ヤードの盛土に12万㎥を使い、残りの12万㎥は下流で施工している歩行者用仮橋の作業ヤード整備の盛土に使うという大規模なものであったが「普通のスピードがわからないくらい早く施工できた」(施工に携わった市川工務店)。造成した作業ヤードは実に約25,000㎡(大型土嚢を含む内側の面積)の広さに達している。なお、重機は全て特車で運び、クレーンなどを用いて組み立てた。

瀬替え状況(国土交通省岐阜国道事務所提供、以下注釈なきは同)

吊り荷重を減らすため、床版を先行撤去
 ジャッキを用いて水平力を除荷した状態で施工

床版の撤去
 桁の撤去を行う前に、少しでもクレーンの吊り荷重を抑えるため、先行して桁上の床版を切断・撤去した。床版の撤去に際し、課題としてあったのが橋全体に作用している応力の除去だ。下部工が傾いた状態で上部工がねじれており、上部工に水平力が入って弓のようにしなっている状態であるので撤去しようとすると、その応力が解放されて跳ねてしまう恐れがあった。そのため、その水平力を解放してから床版を撤去する必要があった。
 具体的には、P4橋脚上の横桁の下にブラケットを取付けて、桁抑え用の水平ジャッキ(200t×1個)を据え、P4橋脚の前後に設けたベントに設置した鉛直ジャッキ(各ベント100t×2個)も使い、上下部工に作用している水平力を除荷し、床版撤去の前にP4橋脚と桁の縁を切った状態とした。


水平ジャッキ(左)と鉛直ジャッキ(中、遠景)、(右、近景)

ベントを設置して上下部工に作用している水平力を除荷(井手迫瑞樹撮影)

 床版の撤去方法は、カッターで小割(幅員方向で半断面(3.5m)、橋軸方向で約2mピッチ)した上で、床版はセンターホールジャッキで剥がし、フォークリフトで運び撤去し、桁を吊り撤去する前に、床版は全部取った状態にした。

床版撤去概要図


床版の撤去状況

桁は1径間ごとに撤去 1,250tCCを用いた
 P4橋脚 ブレーカーと圧砕機で斫り壊し
 

P3-A2桁の撤去
 桁撤去は、車道及び歩道部を1径間ずつ撤去する。歩道部は施工するクレーンから見て橋脚を挟んで向こう側に仮置きするため、用いるクレーンはより高い能力が必要となり、1,250tクローラークレーン(CC)を用いることにした。超大型のCCを用いるため、河床土の上には敷鉄板を1,350枚配置し、1,250tCCが移動する箇所には40mm敷鉄板を54枚、さらにその上に1枚当たり3×6mで厚さ80mmの敷鉄板を20枚配置し、荷重をさらに分散させるようにした。


鉄板が敷き詰められた広々としたヤード(井手迫瑞樹撮影)

 桁撤去は、①車道(P3-P4)、②歩道(P3-P4)、③歩道(P4-A2)、④車道(P4-A2)の順に撤去した。
 記者が現場を取材した3月2日は、まずP3-P4の車道部(径間長72m、重さ約120t)について、1,250tCCを用いて、5m程度吊り上げ、右側に270°(3/4回転)クレーンを旋回させて、10mほど下ろし、ヤード内上流側に設けている仮設治具の上に仮置きした。同クレーンは360tオールテレーンクレーンを用いて、約1週間かけて組み立てた。
 同クレーンによる撤去は同日13時半ごろから開始し、15時半ごろに撤去を終えた。3日には同径間の歩道部(約60t)、4日はP4-A2間62m(約50t)の歩道部、5日は同車道部(約110t)を撤去した。歩道部はいずれも下流側にある仮置きヤード、車道部は同上流側の仮置きヤードにそれぞれ吊下ろした。その後、河川内に下ろした桁を切断し、場外に搬出した。




1,250tCCを用いて、5m程度吊り上げ、右側に270°(3/4回転)クレーンを旋回(井手迫瑞樹撮影)

吊り点と吊り治具(井手迫瑞樹撮影)

旋回時の既設桁との干渉に苦慮していた(井手迫瑞樹撮影)

歩道橋部の撤去


P3-A2間の橋桁の撤去が完了した状況

 P4橋脚については、油圧ショベルを2台持ってきてブレーカーと圧砕機で斫り壊す手法で撤去した。残るA1-P3間の橋桁および橋脚の撤去については施工方法を検討中だ。


P4橋脚の撤去状況

新橋 現地盤や河床、澪筋に考慮して設計

新設橋設計上の留意点
 川島大橋付近は、既存の地質調査で中間層の存在が確認されているため、その広がりを確認すると共に影響を評価しながら設計施工を行う必要がある。また、今回の豪雨で明らかになったように河床や澪筋が大きく変化するという特異性がある。加えて、両岸には既存の道路があるため、そのレベルに応じることのできる橋梁形式を選定する必要がある。
 より早期の復旧を目指すためには、旧橋撤去と新橋の設置を並行して施工する必要があるが、既設橋脚基礎を撤去する際に地盤が緩むことが想定され、その影響を考慮して支間長、基礎の根入れ深さなどを設計する必要がある。設計は既に建設技術研究所に発注済みで、2022年度内に完了する予定だ。

歩行者用仮橋 右岸側は上部工まで完了
 左岸側は残り2径間まで完了

歩行者用仮橋の施工
 歩行者用仮橋は橋長395m(歩道幅員4m)で、H.W.Lを考慮して桁下クリアランスを計画堤防高まで上げている。澪筋のある右岸側(196m)は国交省が所有している応急組立橋を使う。支間長は30m、50m×2、40mと長くし、河積阻害率を減らしている。右岸側は堤防付近のみ22mの仮橋(プレートガーター橋)を用いる。


歩行者用仮橋の設置状況

 左岸側(199m)は杭を打っては上部工をかけていく仮橋(プレートガーター橋)を用いる。支間長は22mとした。
 現場は玉石が存在する硬い河床を掘りぬいていく必要があるため、バイブロ+ウォータージェット併用工法で施工している。硬い地盤での施工になっているため、作業時間も朝7時半~夕方6時半までと地元の理解を得ながら長めにとっている。施工している杭は一番長いもので31mに達する(地下挿入部は22.5m)。1橋脚につき4~10本を建てる必要がある。
 現在(5月23日時点)は、右岸側の下部工全6基(5橋脚+1橋台)とその上に架設される全5径間が完了し,左岸側は下部工全9基のうち7基(6橋脚+1橋台)とその上に架設される全9径間のうち6径間が完了している。

 緊急対応時(岐阜県発注)の復旧設計は大日コンサルタント。
 国交省発注の災害復旧対応工事の元請は、現場進入路の設置、澪筋の変更、作業ヤード整備、大型土嚢の設置が市川工務店。橋桁の撤去が三井住友建設鉄構エンジニアリング。歩行者用仮橋の設置工事が市川・日東地域維持型JV、市川工務店。
 一次下請は河西運輸(クレーン)、国土(撤去工)など。

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