道路構造物ジャーナルNET

152.4mの鋼2ヒンジスパンドレル・ブレースト・バランストアーチ橋

南阿蘇鉄道 最大の構造物である第一白川橋りょうの架替えが進む

公開日:2022.05.25

基礎 マイクロパイルにより補強
 上部工 撤去時と同様に吊支持しながら架設

基礎の補強
 撤去工と並行して進めたのが、フーチングの増設と基礎のマイクロパイルによる補強である(右図)
 1Aは20本、1Pは上流、下流側にそれぞれ12本(杭長5.7m~12.6m)、2Pは20本、3Pは8本となっている。杭径は布田川断層に近接する1Aのみ219.1mm、そのほかは177.8mmのものを使用した。杭長は最長で19m、最短でも5.4mを使用している。1Pのみ上流と下流側に分かれているのは、左右の桁の支承部に高低差(最大10.6m)があり、フーチングを連結する形で補強することが出来なかったためだ。2Pはそうした高低差がなかったことからフーチングを連結して補強することが出来、マイクロパイルも中央に打てたため杭本数が少なくなった。現場が切り立った斜面にあり足場面積を最小限にし、2×4mのスキッドタイプ(55.0kW級)を用いた。


1P橋脚の補強完了状況。上下流側の高さが違うためにフーチングを連結していない(井手迫瑞樹撮影)

2P橋脚の補強完了状況(井手迫瑞樹撮影)

上部工の架設
 上部工は、まず中間支点間(1P~2P)の下弦材を支点から中央に向けて架設していく。次いで同間の垂直材、上弦材および斜材を中央から支点方向へ施工していく。さらに側径間の下弦材を中間支点から端部方向へ架設し、垂直材、斜材、上弦材も同様の方向に架設する。最後に縦桁・橋側歩道架設を行う。
 桁は撤去時と同様、両側のケーブルと受梁を2ブロックに1か所配置して支持する。施工用の足場は基本的に架設ブロックの地組時に地上で設置した上で架設し、添接箇所のみケーブルクレーンで足場材を運搬して設置した。(右図参照。図は拡大できます)

 



下弦材の架設状況写真

上部工の架設(上弦材や鉛直材などの架設状況)。吊支持状態がよくわかる(井手迫瑞樹撮影)

3月中旬の架設状況。左手は犀角山トンネルを平場にして作ったヤード

オペレーターが注意深く監視しながら施工
 張力管理は0.1t単位で管理 強風が作業の障がいに

安全対策
 部材の運搬は全てメインケーブルに吊ったキャリヤーブロック及びローディングブロックで運んだ。最大吊り荷重はセンタークレーン(1機)が最大15t、サイドクレーン(2機)が1機あたり最大30tの能力を有している。


メインケーブルに吊ったキャリヤーブロック及びローディングブロック(写真手前の黄色および緑色のブロック)(井手迫瑞樹撮影)

 こうした運搬用および撤去・架設時の吊支持を行うケーブルエレクション工法では、ケーブルの張力管理及びタワーの傾斜管理が重要となる。ケーブルクレーンの操作は、写真のようにモニターと実際の橋梁を見ながらオペレーターが注意深く動かしている。ケーブルの張力管理は集中管理システムにより、張力・高さ・鉛直材応力・鉄塔の倒れ、ワイヤーグリップの緩みを管理項目とした。例えば張力管理は0.1t単位で管理し、事前の解析結果による張力から20%の誤差が生じた場合、すぐに作業を止めて調節する。また、鉄塔の倒れについては、鉄塔機部及び頂部にプリズムを設けて計測することで、ミリ単位での管理を行っている。事前解析結果より1,000mmの誤差が生じた場合、ワイヤーのアンカー部に設置した調整ジャッキにより調整を行うこととしている。


様々な安全対策(井手迫瑞樹撮影)

 また、架設箇所が阿蘇山の外輪山唯一の切れ目である立野渓谷に位置するため、風の通り道となり、強風が吹く日が多く、作業の障がいとなった。とりわけ1A~1Pの直吊設備は、上流側の法面との離隔が狭く、干渉を受けるため下側(受梁幅)を狭くした構造とした。幅が広い下弦材の運搬では、桁の揺れによる直吊設備との干渉の恐れがあるため、強い風の日は作業を制限するなど安全に配慮している。
今年10月の上部工完成を目指し、現在は側径間および縦桁の架設を進めている。

第一白川橋りょうは風の通り道に位置する。(左)上流には阿蘇長陽大橋や阿蘇大橋が見える。下流も大きな谷間となっており。写真のさらに下流には立野ダムが建設中だ。(井手迫瑞樹撮影)

エム・エム ブリッジ森谷 和貴現場代理人
「戸下側(3P側)の作業において、資機材の搬出入は線路及びトンネルを通過する必要があったため、大型軌陸車やクレーン台車を用いました。一度に運べる量の制限や、雨天や降雪時にレール上を空回りすることがあり苦労しました。さらに3P側は背面がトンネルと原生林があり、3P鉄塔の位置が支点までしか下げられませんでした。このため、3P支点直上までクレーンが近寄れず、撤去・架設は部材を3P側に引き寄せながらの作業となるなど苦労しました。(吊上げに合わせ引き寄せを緩める)」。

 元請はエム・エム ブリッジ。一次下請は下部工補強が福田組、上部工架設(鳶)が植田建設工業、クレーン工が松浦重機、吉村。詳細設計は、上部工をエム・エム ブリッジ、下部工を八千代エンジニヤリングが行った。

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