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橋梁点検体験を含めたインフラツーリズムも企画

愛媛県 開通した岩城橋と生名橋・弓削大橋の3斜張橋で地域振興を

公開日:2022.04.28

生名橋 PC桁と鋼桁に斜材を定着する構造形式は国内初
 Al-Mg合金溶射やエポ鉄筋を採用してライフサイクルコストを低減

 岩城橋を渡り生名島に入ると下り坂が続き(逆コースだと当然、上り坂となる)、海岸沿いを経て、佐島に渡る生名橋に至る。同橋の手前にはゆめしま海道の石碑があり、撮影スポットとなっている。


生名島側にある「ゆめしま海道」の石碑

 生名橋は橋長515mの3径間連続鋼・コンクリート混合斜張橋。中央径間315mの中央部149mが鋼桁、残る部分と側径間366mがPC桁だ。PC桁と鋼桁に斜材を定着する構造形式では国内初となった。主塔高は99.1mである。
 工事着手は2007年7月で、2011年2月に完成・供用している(総事業費は約77億円【工区延長約1.9km】)。施工は、三井住友建設・昭和・横河JV、五島建設(A1橋台)、小川工務店(A2橋台)。
 同橋を自動車で渡ると幅員が狭く、途中に待避所があることを珍しく思ったが、これは建設コストを軽減し、早期の完成を目指すために、愛媛県が取組みを進めていた1.5車線的道路整備手法を導入したことによるものだ。交通量に見合った1車線+歩道としたが、1車線では大型車同士の離合が難しい(普通車の離合は可能)ため、橋の中央部に待避所を設けて離合を可能とする幅員構成とした。具体的には、一般部では車道幅員が5m、歩道幅員が2.5m、退避所では車道6m、歩道1.5mとなっている。



生名橋

生名橋概要図(愛媛県HPから)

施工中の生名橋(同橋パンフレットから)

 ライフサイクルコスト(LCC)の低減を図る取組みも行っていて、海上部に位置する鋼桁部外面の防食にはアルミニウム・マグネシウム(Al-Mg)合金溶射を採用し、コンクリート部材の鉄筋にはエポキシ樹脂塗装鉄筋を用いて塩害に対する耐久性を高めている。ちなみに、定期点検での健全度判定区分はⅡとなっている。
 同橋は橋梁形式の工夫や耐久性への配慮などが評価され、2011年度土木学会田中賞【作品部門】を受賞した。さらに、岩城橋は「生名橋の成功事例をもとに橋梁形式を決定した」(同)ことに加えて、LCC低減の取組みとして生名橋と同様のものを採用するなど、岩城橋の建設に大きな影響を与えた。

弓削大橋 3橋のうち最初に建設された鋼斜張橋
 取付橋で耐震補強工を実施中

 佐島と弓削島を結ぶ弓削大橋は3橋のなかで最初に建設された橋梁だ。橋長325mの3径間連続鋼斜張橋(中央径間長175m、主塔高58.5m)で、取付橋(8径間連続PCポストテンションT桁橋)242mとあわせると橋長は567mとなる。1990年11月に工事着手して、1996年3月に完成した(総事業費は約48億円【工区延長約1km】)。施工は、住友重機械工業(上部工)、大本組(下部工)が担当した。現在、同橋では取付橋で耐震補強工事(橋脚RC巻き立てと落橋防止装置設置)を実施している。健全度判定区分はⅡで、生名橋と同様に大きな劣化は確認されていない。




弓削大橋

弓削大橋概要図(愛媛県HPから)

整備したインフラを活用する取組みを開始
 開通記念橋カードの限定カードは500枚を2日で配布完了

 整備したインフラを上手に活用していくことは、適切な維持管理とともに道路管理者にとって重要なことだ。愛媛県では、岩城橋の開通で上島架橋整備事業が完了したことから、3橋の斜張橋をランドマークとした地域振興とインフラ整備魅力向上のための取り組みを始めている。
「延長6.1kmのゆめしま海道は瀬戸内海で最も短い海道となる。その間に3つの大きな斜張橋があり、他の海道では自動車で移動しなければならないが、ゆめしま海道は歩いて3つの橋を堪能できる魅力がある」(愛媛県今治土木事務所)。同事務所では、その魅力をまずは橋梁が好きな人たちにアピールして観光客として現地に来てもらい、SNSなどを通じて一般の人たちにも訴求していくことを検討している。
 その第1弾として愛媛県が行ったのが、橋カードの配布だ。岩城橋の開通とゆめしま海道全線開通を記念して、岩城橋と生名橋、弓削大橋の3種類の橋カードを各1,000枚、3種類集めるともらえる「限定岩城橋カード」500枚を作成し、岩城橋の開通とあわせて、各島の観光センターや港事務所などで配布した。岩城橋開通には多くのサイクリストが訪れたこともあり、限定カード500枚は開通式の翌日には配布終了となり、3橋のカード各1,000枚も約2週間で順次配布終了となるほどの人気だった。これを受けて、同県では第2弾、第3弾の橋カード作成を計画している。


岩城橋開通式(愛媛県提供)

岩城橋の開通とゆめしま海道全線開通を記念して作成された橋カード。右が限定カード(愛媛県提供)

3橋を対象としたフォトコンテストを実施
 主塔に上がるインフラツーリズムも検討

 同県は、上島町、同町商工会および観光協会などとともに「ゆめしま海道3橋PR実行委員会(仮称)」を2年間の期間限定で設置して、さまざまな施策を検討、実施していく予定だ。具体的には、3橋を対象としたフォトコンテストを開催して注目度を高めるとともに、入賞作品などを3橋カレンダーや橋カードの題材としても活用していくことや、ゆめしま海道インフラツーリズム商品開発のために旅行関係者を対象とした見学会を実施して、その後、試行ツアーの実施を計画している。インフラツーリズムでは斜張橋の点検体験も含めて、桁内に入ることや主塔に上がることなど、通常では体験できないことも取り入れて、継続できるツアーを目指していくという。


岩城橋 岩城島側主塔の点検口/点検路詳細(右:愛媛県提供)

 本年10月30日には国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ2022」が開催され、ゆめしま海道もコースに入っていることから、さまざまなイベントを行う予定だ。
 記者としてもこれらのことを通して、地域の人たちだけではなく、多くの人に足を運んでもらえ、愛される橋梁となることを望んでいる。

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