橋梁点検体験を含めたインフラツーリズムも企画
愛媛県 開通した岩城橋と生名橋・弓削大橋の3斜張橋で地域振興を
愛媛県が建設を進めていた瀬戸内海の岩城島と生名島に架かる岩城橋が3月20日に開通した。同橋の開通により、同県上島町の岩城島、生名島、佐島、弓削島の4島を3つの斜張橋で結ぶ「ゆめしま海道」が全線開通し、同県では地域の一体化や産業活性化などとともに、観光道路としての役割も期待している。岩城橋を中心とした3つの斜張橋の特徴に加え、整備したインフラを魅力あるコンテンツとして活用していくための同県の取り組みを紹介する。
岩城島・積善山の山腹から見た岩城橋。上写真では右側に生名橋と弓削大橋の主塔が見える(撮影=大柴功治。以下、注釈なき場合は同)
ゆめしま海道の延長は6.1km
サイクリングコースとしても注目
ゆめしま海道は延長が6.1kmで、一般県道岩城弓削線(起点:上島町岩城、終点:上島町弓削)の愛称として一般公募で命名された。交通量が少ない上に信号がひとつもなく、3つの斜張橋上からは瀬戸内の美しい景色を眺めることができることから、サイクリングコースとしても注目されている。
岩城島など4島は離島となっているので、アクセスは今治や三原、因島、生口島から船を使用することになる。因島の土生港から生名島の立石港、生口島の洲江港から岩城島の小漕港へはフェリーの便数が多く、所要時間も5分と短い。
ゆめしま海道概要図(愛媛県提供)
岩城橋 中央径間長は国内の鋼・コンクリート混合斜張橋で7番目の長さ
主塔高は137.5m コンクリート製主塔では国内2番目の高さ
起点側の岩城島からゆめしま海道を走り始めるとすぐに岩城橋を渡ることになる。縦断勾配は生名橋と同じ5%だが、「開通式に走ったサイクリストによると、橋長が長いのでかなり急な坂のように見えた」(愛媛県今治土木事務所)という。実際、記者も歩いて渡ったが、中間地点までの昇り勾配は生名橋よりもきつく感じた。
岩城橋(岩城島側から)
岩城橋(生名島側から)
岩城橋の橋面から(左2枚:岩城島側から/右:生名島側から)。縦断勾配は5%、自転車ではかなりきつい勾配となる
ゆめしま海道3橋の中で最長となる同橋は取付高架橋を含めると橋長916mで、本体橋は橋長735mの5径間連続鋼・コンクリート混合斜張橋だ。側径間および中央径間の一部までを192mのPC桁(2室1箱桁)、中央部の351mを鋼桁(1箱桁)とした混合構造である。中央径間長は475mとなっており、これは国内の鋼・コンクリート混合斜張橋で7番目の長さとなる。国内最長が瀬戸内しまなみ海道(本州四国連絡橋尾道・今治ルー ト)の多々羅大橋(890m)、4番目が同・生口橋(490m)なので、同一エリアで同形式国内トップ10のうち3橋を見ることができるのも魅力だ。
鋼・コンクリート混合斜張橋で国内最長の中央径間長となる多々羅大橋
取付高架橋は、岩城島側が橋長140.5mの3径間連続PCコンポ桁、生名島側が橋長40.5mのPC単純コンポ桁橋となっている。
主塔高は岩城島側が137.5m(生名島側135.5m)で、コンクリート製主塔としては国内2番目の高さを誇る。実際に目にするとその高さは際立っているが、今治土木事務所の担当者からは「生名島側取付高架橋の施行者によると10~11月頃に塔柱の間に太陽(夕日)が入る時期がある」という話も聞いた。担当者も未確認とのことなので、機会があればぜひ確かめて欲しい。
岩城橋概要(愛媛県HPから)/岩城島側主塔
生名島側取付高架橋から/親柱
鋼桁部の18ブロックはエレクションノーズで架設
斜材はストランド1本ずつ架設・緊張
同橋の設計は、弓削大橋と生名橋の設計も行った長大。施工は、岩城島側が鹿島・MMB・富士ピー・エスJV、生名島側が三井住友建設・三井住友建設鉄構エンジニアリング・昭和コンクリート工業JVが担当した。2017年7月に工事着手し、完成までの工事期間は4年8カ月だった。総事業費は約183億円(工区延長約2km)。
PC桁は、2Pおよび5Pから鋼桁接合部までは片持ち架設工法により架設した。移動作業車で両側へ1ブロック4mずつ張出し、片側14ブロック(合計28ブロック)の架設となった。PC桁は両側、中央径間長の1/8の位置まで張り出した。生名橋は1/4の位置までの張り出しとなっているが、岩城橋は中央径間長が長く、側径間とのバランスを考慮して、張出長を決定したという。1P~2Pと5P~6Pは固定支保工での架設を行っている。
片持ち架設工法によるPC桁の架設(左:岩城島側/右:生名島側)(愛媛県提供)
PC桁と鋼桁の間は2,100mmの接合部を設置し、鋼殻セル内にコンクリートを充填し、PC鋼材で緊張力を導入して接合を行った。
鋼桁は片側10ブロック(合計20ブロック)で、両側とも最初の1ブロック(および接合桁も)は2,200t吊起重機船「駿河」(深田サルベージ建設)を用いて架設を行い、残りの18ブロック(1ブロック約14~20m、約60t~100t)はエレクションノーズによる架設を行った。起重機船での大ブロック架設も検討したが、経済性比較により同施工方法を採用したという。足場は愛媛県の会社である米山工業の移動式吊足場「ラック足場」を採用している。
鋼桁の最初のブロック架設は起重機船により行われた(左:岩城島側/右:生名島側(右は三井住友建設・三井住友建設鉄構エンジニアリング・昭和コンクリート工業JV提供))/弊サイト掲載済み
エレクションノーズによる架設(上2枚:岩城島側/下2枚:生名島側)(愛媛県提供)
鋼桁架設は2020年10月に開始し、2021年6月に岩島側の最終ブロックを架設、8月30日に閉合を行った。閉合は、両側の桁をセットバックして遊間を確保したうえで閉合桁(13.75m)を吊上げ、セットバックしている桁をセットフォア後、接合を行った。
斜材はストランドにφ15.6mmの亜鉛メッキPC鋼より線を採用して、それを最大31本(19本、24本)束ねたものとしている。ケーブル本数は120本に達する。架設は、施工機材を小型化するためにストランドを1本ずつ保護管の中で吊上げ、固定、緊張する方式で施工した。
床版はPC橋部が現場打ちで厚さ360mm、鋼橋部が鋼床版厚16mmとなっている。舗装は、鋼橋部がグースアスファルト40mm、再生密粒度アスファルト35mm、PC橋部が再生粗粒度アスファルト35mm、再生密粒度アスファルト40mmとしている。
閉合桁の架設(愛媛県提供)
斜材は120本に達する/PC桁と鋼桁の接合部
■下部工と主塔の施工および構造上の特徴について掲載している下記の記事もご覧ください。
「愛媛県 島民の期待高い「岩城橋」主塔部の建設が進捗」