テクノ阪神、大日本印刷(DNP)と共同開発
阪神高速技術 夜間に路面へ車線変更を促す矢印を点滅照射し、ドライバーの注意を促す
阪神高速技術とテクノ阪神、大日本印刷(DNP)は、DNPが開発したDNP高視認性パターンライト(以下パターンライト)を使って、高速道路の維持管理工事時の規制について、ドライバーに直感的に分かりやすく知らせる新たな技術を開発した。同装置は懐中電灯の様な形状をした照明装置で、夜間に路面へ車線変更を促す矢印を点滅照射し、ドライバーの注意を促せるもの。この3月末に松原線の大和川本線集約料金所付近で試験施工を行い、その有無でどのような有意差があるか引き続き検証する方針だ。また、同装置は阪神高速技術がアドビック、エヌティーダブリューと別途共同開発した内照式予告看板と一体運用を検討している。(井手迫瑞樹)
高視認性パターンライト
低消費電力でモバイルバッテリーを用いた動作も可能
阪神高速道路は、年間を通じて多くの工事規制を行っている。そのうち阪神高速技術が実施する作業において、もらい事故の中でも受傷事故が年に数件発生している。そうした事故を防ぐため、予告看板や矢印板、カラーコーンを設置した保安規制の中で工事を行っているところではあるが、とりわけ夜間において、規制テーパー部における、追加の安全対策技術が求められていた。
同社では、DNPが開発したパターンライトに着目し、図形を投映する技術を用いた追加の安全対策手法を開発した。規制先頭の数百メートル手前から、車線変更を促す矢印を連続的に路面に投映することで、運転手の注意喚起と車線変更を促し、事故を未然に防止する。パターンライトは、小型(50×50×254mm)かつ軽量(約700g)でありながら高輝度を実現しているため、空間的な制約がある高速道路上においても効果的な表示が可能になる(車線変更誘導タイプ、車線維持誘導タイプ)。また、低消費電力であるため、モバイルバッテリーでの動作も可能である。別途開発した「内照式予告看板」のバッテリーを併用すれば、看板の取付金具へひっかけるだけで夜間を通しての運用が可能だ。投映光については、観察するドライバーだけでなく設置作業者の眼にも安全なように対策がなされており、特殊な光学原理の採用によりパターンが遠方からも鮮明に見えるよう工夫されている。
運用概要図
「11月に環状線で行った試験施工状況」
現状と本対策との対比。ドライバーからの見え方がかなり異なる
同技術は2019年に開発を開始し、2020年から関係各所にデモを行いながら、本線上を限定とした試行に向けた調整を続けてきた。今年1月にはパターンライトを使った直感的な規制工事予告技術の効果検証を目的とした試行を念頭においた「投映型誘導設備に関する要領」「設置マニュアル」「工事概要書」の各案をまとめている。
※「パターンライト」はDNP大日本印刷の登録商標です。
内照式予告看板 照度は従来比2倍の5,000lx
表示パネル自体に透過性超高輝度反射シートを採用
もう1つの安全技術である内照式予告看板(右図)は、アクリル板の側面からLEDモジュールに配列されたLED光源により入光するもので、アクリル板に印刷されたドットにより光を拡散し、板前面に光を出すことにより、鮮明な表示を可能にした。バッテリーは鉛蓄電池タイプとモバイルタイプ(リチウムポリマー)の2種類があり、いずれもバッテリー重量を従来より大きく軽量化している(前者は9kg、後者は560g)。製品サイズは鉛蓄電気タイプが450(幅)×920(高さ)×30(厚さ)mmタイプと、450×1140×30mmタイプの2種類を用意している。いずれも8kg、9.7kgと軽い、さらにリチウムポリマータイプは、450×900mmの1種類であるが、重量はバッテリーを含めて9kgとさらに軽量化し、運用しやすくしている。
性能の尺度である板面照度は、5,000lxと従来比2倍の照度を有しながら、消費電力は17Wと従来比約半分に抑制しており、それによりバッテリーをコンパクト化することができた。鉛蓄電池タイプは16時間、モバイルタイプは23時間の連続使用が可能であり、万が一電力の供給が途切れても、表示パネル自体に透過性超高輝度反射シートを採用しており、自動車などのライトの反射で夜間でも予告看板をしっかりと視認できるようフェールセーフを施している。内照式予告看板については早期の導入を図っていく方針だ。