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台船上にユニットジャッキを配置 潮位変化に対応

愛知県 衣浦大橋上り線左折専用橋 6径間を1ヵ月で連続架設

公開日:2022.04.11

全径間架設後にボルト添接 各径間架設時はヒンジ連結工法を採用
 既設橋との離隔は実質300mm

 架設は、2月4日にP4~P5径間、7日にP3~P4径間、11日にP2~P3径間、13日にP1~P2径間、16日にP5~A2径間の順で施工していき、23日にA1~P1径間を施工して全径間の架設を完了させた。架設した鋼桁ブロックは、P4~P5径間が長さ73.0m、重量337.5t(冶具を含めた重量376t)、P3~P4径間が長さ82.1m、重量391.3t(同重量466t)、P2~P3径間が長さ65.8m、重量296.3t(同重量350t)、P1~P2径間が長さ69.1m、重量303.3t(同重量363t)、P5~A2径間が長さ59.67m、鋼重254.9t(同重量約303t)、A1~P1径間が長さ46.8m、重量206.1t(同重量279.2t)となる(桁幅はいずれも10m)。


全体架設計画図


各径間の架設進捗状況

 架設にあたっては先行して架設桁端部にジョイント足場を設置して、架設作業がより安全に行えるようにしている。足場設置箇所は「台船の進入を作業員とシミュレーションしながら、架設時に支障にならない最低限の位置を検討しながら、決定した」という。


先行して架設桁端部にジョイント足場を設置

 係留後の架設工程は以下の通りである。台船上の桁をユニットジャッキによりジャッキアップ後、下流側の海中に設置した2基のアンカー(P5~A2径間は陸上ウエイト1基および海中1基を使用)と上流側既設橋梁の橋脚下部に巻いたワイヤーケーブル2本の計4本を台船上のウィンチで巻き取り操作し、架設位置に台船を進入させる。架設位置に台船が到達後、桁の微調整を行いながら、数回に分けて所定量のジャッキダウンを行い、桁を仮受点に降下させて、台船を退出させる。
 潮位変化により架設中に不測の事態が発生するのを防ぐために、ユニットジャッキによる降下作業の開始から台船の離脱までの作業は潮位変化の影響が少ない時間帯を選択して施工している。
 桁接合は全径間の架設完了後にボルト添接を行うこととし、各径間架設時は架設桁とセッティングビームをピン構造で接合して、セッティングビームを架設済み桁に荷重を預けるヒンジ連結工法を採用した。


架設桁とセッティングビームをピン構造で接合。セッティングビームを架設済み桁に荷重を預けた

 架設時の課題としては、新設橋と既設橋が近接しているということもあった。その離隔は800mmであったが、既設橋の照明受台が500mm外側に張出している箇所があることから、実質的には300mmとなっていた。そのため、台船の架設位置進入時には、既設橋照明受台および新設橋梁の橋脚上の3箇所から離隔を計測しながら、慎重なウィンチ操作を行わなければならなかった。


照明受台が外側に張出しているため、実質的な離隔は300mmしかなかった

計画よりも30cm高い潮位をジャッキアップ量で対応
 A1~P1径間の架設時離隔は片側200mm

 記者が取材した16日のP5~A2径間架設では、午前9時半から架設位置から30m離れた係留地点でジャッキアップを開始。計画では潮位がD.L.(工事用基準面)+150cmの時に1,500mmのジャッキアップを行うことになっていたが、当日は潮位が計画よりも30cm高くなっていたため、ジャッキアップ量を1,200mmに変更した。「ユニットジャッキの採用により、現場の状況に合わせた高さ調整が容易に行える」ことで、計画とは違った潮位に対応できた。
 架設済の桁との接触を避けるため施工はA2側から桁を寄せていったが、P5側クリアランスを確保するために桁端部と橋台に接触防止用マットを設置して、それぞれのマットがあたるほどのギリギリの操作を行った。それでもP5側のクリアランスは400mm(A2側マットの厚さが約100mmあるので、実質300mm)しかなく、こちらも位置を何度も確認しながら操作を行い、進入開始から約1時間かけて台船を架設位置に進入させた。


慎重な操作を行いながら、台船を架設位置に進入させた(撮影=*)

 架設当日は潮位変化量が少なかったため、台船退出可能時刻と架設済みとなるP1~P5径間の作業実績を考慮し、1回目のジャッキダウンを11時に実施した。この時の降下は橋台上およびセッティングビーム受架台上150㎜の高さまで行った。その後、2回目のジャッキダウンでA2橋台の仮受点に桁をタッチさせ、11時20分過ぎの3回目のジャッキダウンでP5側のセッティングビームを架設済み桁の受架台にタッチさせ、台船の吃水を計測し、台船の受ける荷重を50%解放した。その後、潮位変化とジャッキ操作により桁を切り離し、12時過ぎには台船が離脱し、午後には主桁位置の微調整を行って当日の作業を完了している。


台船進入が完了した状態と台船退出後(撮影=*)

 A1~P1径間の架設はA1側の離隔が200mm、P1側が同200mmの計400mmはP5~A2径間と同様であるが、A1側の一部桁(桁長16.3m)が陸上部のためクレーンベント架設にて架設済みとなっており、架設済みの桁間での架設となるところが異なる。そのためより慎重な施工が必要であり、A1側架設済み桁をあらかじめ400mmセットバックさせてより広い離隔確保を行い、架設桁を所定位置に収めた後、セットフォアにて台船による架設作業を終了した。


A1~P1径間では架設済みの桁間での架設となり、より慎重な施工が要求された

 ボルト添接と添接板などの塗装後は、地覆施工となるが、鉄筋は防食のためにエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用している。その後、別途工事にて照明と高欄設置を行い、舗装工に移る。鋼床版厚は16mmで、舗装はグースアスファルト舗装40mm、通常アスファルト舗装40mmとしている。

既設橋について
 現橋の衣浦大橋は、下り線(北側)が1956年に完成した5径間ゲルバートラス橋、単純トラス橋およびプレテンホロー桁、上り線(南側)が1978年完成の単純鋼床版箱桁橋、3径間連続鋼床版箱桁橋および2径間連続鋼床版箱桁橋となっている。上り線では2005年にUリブの突合せ継手における疲労き裂に対し、再溶接で補修を行った。それ以外にも、デッキプレートとUリブの溶接部に疲労き裂が発生している可能性があったため、詳細調査を実施した結果、デッキプレート貫通には至っていないが、き裂が進展していることが判明した。


衣浦大橋下り線橋梁(撮影=*)と上り線で発生している疲労き裂

 2021年時点でデッキプレート方向に進展している疲労き裂は44箇所となっており、対策としてSFRCの施工を予定している。塗装塗替えは、下り線が2013年度、上り線が2006~2008年度に実施している。

 設計は、パシフィックコンサルタンツ。元請は、瀧上工業、日本車輌製造。一次下請は、ミック、深田サルベージ建設。

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