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免震支承への取替により上部構造と橋脚の補強対策を最小限に

NEXCO西日本 山陽道旭川橋で耐震補強工事を実施

公開日:2022.02.21

下り線支承取替え P1~P4の各1基を施工後に残る各1基を施工
 P2は5,000kNのジャッキを1支承に4基設置

 支承取替えは、上り線ではまずP1、P3、P4の各1基、次に残る各1基、その後、P2の2基を1基ずつ行う合計4工程で実施している。下り線はP1~P4の各1基を取替後に、残る各1基の2工程で施工した。上り線でP2支承が別工程となったのはジャッキが後搬入となったためで、これにより工期も下り線の約1.4倍(上り線118日、下り線80日)を要した。


支承取替の順番

 施工ではまず、ジャッキアップのための補強と仮受ブラケット設置を行った。次に、下り線はP1とP4に5,000kNのジャッキ各2基(1支承につき1基)、P2に7,000kNのジャッキ8基(同4基)、P3に12,000kNのジャッキ4基(同2基)を設置して、3mmのジャッキアップを行った。先行した上り線においてはジャッキ搬入に期間を要したことにより工程数は増えたものの、小型の5,000kNのジャッキをP2の1支承に4基設置して能力を確保した。ジャッキアップ後は、ダイヤルゲージを用いてジャッキアップ量を毎日計測するとともに、ブラケットの開きを隙間ゲージで計測して安全確保に務めた。


ジャッキアップのための桁補強(撮影=*)

仮受ブラケットとジャッキの設置(左から2枚目のみ、撮影=*)

 その後、沓座と既設支承の撤去となるが、切断した既設支承を取り出すのが困難だったためと新設支承を取り込むための下げシロをつくるために、既設支承周辺(橋軸直角方向内側)の橋脚コンクリートをはつっている。はつりは、手ばつり後にウォータージェットを用いて行った。既設支承を撤去したら、アンカー削孔とアンカーボルト挿入を行い、ソールプレートを設置して、新設支承を据え付け、ボルトでソールプレートと固定した。支承の高さ確認と調整を行った後、支承とベースプレートの溶接、引き上げたアンカーボルトとソールプレートの溶接をして、削孔穴にアンカー定着材を注入、沓座に無収縮モルタルを打設した。モルタルの圧縮強度(3日25N/mm2以上)を確認後、ジャッキダウンを実施して、支承取替えを完了させた。


支承部のコンクリートはつり状況(撮影=*)/新設支承の荷揚げと横引き

支承の設置

上弦材の主な補強箇所はP2~P3の支間中央付近
 ボルト孔空け作業では機材を吊下げて作業負担を軽減

 トラス部材の補強は上弦材と下弦材の箱断面のウェブ外側に6~12mm厚の当て板を施した。主な補強箇所は、上弦材ではP2~P3の支間中央付近とP2・P3の周辺部、下弦材ではP3両側周辺部となっている(下図参照)。


トラス補強施工箇所図。赤枠はジャッキアップのための補強

 施工においては、ハック高力ワンサイドボルトを用いた。ボルトが36,216本となったことから、締付け強度の確認ではボルトマーキングスプレー「線引き屋」を使用して作業の効率化を図った。これは、ボルトに商品のアダプター部分を上から被せてスプレー缶を押し込むだけで線が引けるもので、マーカーペンによる手書き作業よりも素早く作業を進めることができるものだ。桁高もあり部材数も多い鋼トラス構造において作業員の負担軽減に繋がった。また、ボルト孔を空ける機材が重たかったことから、吊りチェーンで機材を吊下げて機材の荷重を預けるといった工夫をしながら、当て板を取り付けていった。


トラス部材補強工と施工後①

トラス部材補強工と施工後② トラス部材補強ではワンサイドボルトを用いた

塗替え塗装 インバイロワン工法とブリストルブラスターを採用

 塗替え塗装は、塗膜劣化が進んでいた上弦材と斜材の一部で行い、塗替え面積は上下線合計で1,386㎡となった。建設当初の塗装履歴により部材には鉛の含有が確認されたため、湿式かそれにともなう塗膜処理方法が必要となり、塗膜除去にインバイロワン工法、素地調整にブリストルブラスターを用いている。
 事前調査で部材の膜厚が約200μmだったことから、一回の塗布で最大500μm程度の多層塗膜の除去が可能で、「過去の試験施工で剥離効果が高かった」(東亜工業所)ことが、インバイロワン工法の採用理由だ。ブリストルブラスターはハンディタイプでブラスト工法のような大型設備を必要とせず、素地調整1種のブラスト面を形成できるため、現場環境を考慮して採用を決定している。この二つを組み合わせることにより、通常のブラスト工法と比べて粉塵飛散や騒音、廃棄物量を大幅に低減でき、防護工も板張りではなく、一部を除きメッシュシートとすることができたので、多湿となりやすい塗替え塗装における作業環境面での貢献とともに強風によるリスク回避が図れたという。
 塗替え塗装は、ミストコート後、下塗り(60μm+60μm)、中塗り(30μm)、上塗り(25μm)で行った。


塗膜除去と素地調整の施工状況/メッシュシートによる養生

上部工耐震補強が完了した上り線(撮影=*)

 設計は大日本コンサルタント。元請は東亜工業所。一次下請けはエイチ(足場工、補強工、塗装工)。橋脚補強は別工事。

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