700mmという狭いスペースでも施工できる緊張システムを開発
緊張作業
今回の中央部の桁取替に伴う主桁の横締めは、下り線と上り線の桁間700mmという狭いスペースで緊張作業を行わなければならなかった。そのため狭小空間でも緊張可能なシステムを導入した。緊張ジャッキを上から施工する方式を採用したことで、ジャッキ本体と圧入ジャッキ、シム型ノーズを同じ幅の中に収めてコンパクトにした。CCL標準ジャッキが1,050mmの隙間を必要とするのに比べて、新開発したジャッキは幅が560mmしかなく、今回のような狭小空間でも十分に施工可能だ。条件は今後の上り線および下り線の桁取替でも同じであり、固定端は外側に配置し、内側から緊張を行っていく。
緊張ジャッキシステム
同ジャッキシステムの現場使用状況
上り線のP6~P10については、桁中間部にも横桁を配置し、支点部と同様に横締めPC鋼材を施工する。
橋軸方向については、RC構造となる間詰コンクリート部の耐力を向上させるため、連結部上面に対して、中空PC鋼材(NAPP)を配置し、橋軸方向に軸圧縮応力度1N/mm2を導入している。
主桁の緊張が終了したのちには、上下線の張出し床版の中間部20mmに型枠を配置して、張り出し床版コンクリートを打設して一時的に一体化させることで、上下線の撤去・架設時においても4車線を確保できるようにしている。
地元との合意形成が死活的重要
全延長をループドライブワイヤーソーで切断目指す
今後の施工についての留意点
①事業が長期間となることから、地元との合意形成が重要になる。定期的に地元自治会に対して進捗報告や地元事業説明会、現場見学会も開催するなどコミュニケーションを深め理解を得るよう努めていく。
また、交通規制による受損事故を極力減らさなければならないが、万が一事故が起きた際の初動における迅速な対応においては、事前の準備が必要だ。高速隊や消防との緊密な連携を図ると共に、本現場では路下から本線にアクセスできる緊急昇降設備を2か所設けている。また、消防の指令とNEXCOの管制が相互に連絡できる体制を整えた上で施工していく。
②狭隘なヤードであるため労務者の入退場や資材の搬入出を円滑に行うには、現場の整理整頓が重要となる。また、既設主桁の撤去時は、開口状態が生じることから、通路の設定や転落防止の措置を日々行わなくてはならない。
③既設主版を切り出すタイミングの工程管理が重要だ。先行で切れる部位と、工程に応じた切断を行うという。資機材配置計画や仮設橋脚などの支保工の仮受け状態を考えて、どの段階から先行して切ることができるのか、ブラッシュアップしながら施工していく。
また、先述したが、既設主桁切断部と(残置している)既設主桁間は、次工程の架設を考えて、機械の隙間分100mm精度を延長方向に確保した切断が重要になる(はつりなどの二度手間を減らせる)。精度を上げるために駆動式ワイヤーソーの開発に至ったが、今後は太筋があっても精度が変化しないよう配慮するなどし、全延長をループドライブワイヤーソーで切断していく方針だ。
④イベントに応じた工程管理、特に年末年始の長期間の休暇期間中には、既設主版が撤去されておらず閉塞状態となる工程管理が必要となる。
同工事では、松島高架橋の他、出島橋(上下線とも41m)、栗栖高架橋(上り線481m、下り線468m)、花山橋(上下線とも26m)、鳴神高架橋(上下線とも527m)も橋梁架替えを行っていく。
基本設計はオリエンタルコンサルタンツ。詳細設計及び製作架設はオリエンタル白石・IHIインフラ建設JV。主な一次下請けは仁志工業(耐震補強工事)、三基コンストラクション(上部工事)、コンクリートコーリング(構造物撤去工)、ガイアート(舗装工)、上中建設、誠工業(仮設工事)、エフテック、Take(規制材設置工)、第一テック(電気工事)、NEXCO西日本イノベーションズ(コンクリート調査)、アサノ大成基礎エンジニアリング(土質調査)、オリエンタルコンサルタンツ(周辺環境調査)、エイテック(測量調査)。
メーカーはゴム支承がビー・ビー・エム、PC鋼材は神鋼鋼線工業、PC鋼棒は高周波熱錬、PC定着具は神鋼鋼線工業。排水工は横井工業、コンクリートは酒直レミコン、伸縮装置は東京ファブリック工業、西日本高速道路メンテナンス九州、遮音壁工はJFE建材、仮設材料はヒロセ技研およびタカミヤ、交通流監視は名古屋電機工業、セフテック、西日本高速道路エンジニアリング中国、仙台銘板、附属物はネクスコ・エンジニアリング新潟。