施工精度が求められるなか、1枚あたり約30分で架設完了
アラミドFRPロッドの縦締め緊張でも慎重に作業を進める
架設にあたっては、前述したように床版上面に孔を設けていないため、「1主桁あたり3箇所、合計12箇所のジベル筋を床版下面のジベル孔に上からかぶせる形で設置しなければならない上に、吊り金具を側面に取り付けていたことから慎重に作業を進めた」(元請の三井住友建設・日本ピーエスJV)という。さらに、間詰幅が30mmとなっているため、「ギリギリのところに床版を下して寄せていき、レバーブロックで調整しながらシースの接続を行った」(同)。
床版下面のジベル孔にジベル筋をかぶせる形で設置
側面吊りで架設した/床版の引き寄せ作業
シースジョイントは、シース自体が約15mmずれても挿し込めるように蛇腹構造のサクションホース(中間部)と高密度ポリエチレン(両側)を組み合わせたもの(特注品。栗本鐵工所製作)を使用したが、シースがずれることはほとんどなかったとのことだ。施工精度が求められるなか、1枚あたり約30分で架設を完了させた。間詰部は、強度80N/mm2以上の超低収縮・超高強度型無収縮モルタル(太平洋プレユーロックスXS)で打設している。
シースジョイント(引き寄せ前と後)/間詰部の打設
アラミドFRPロッドはアラミド繊維を一方向に引き揃えた高張力FRP材料であり、緊張力が導入されるまでの間は局部的な支圧やせん断に弱いという特性がある。そのため、PC鋼線と比べて無緊張時の取り扱いに注意しなければならず、「ケーブルの引出しや挿入で慎重に作業を行った」(同)という。またアラミドFRPロッドの弾性係数はPC鋼材の1/4程度であるため、緊張力の精度管理は非常に高くなるが、緊張作業による伸び量はPC鋼材の4倍と大きくなるため、緊張時の機材配置は綿密な計画が重要となる。
新設床版ケーブル配置図(断面図)
アラミドFRPロッドの引出しと挿入
アラミドFRPロッドの緊張と定着体製作完了
端部版も基本的にはDura-Slab®と同じ構造のプレキャスト床版
間詰部の継手はTrunc-head®工法で施工
端部には、基本的にはDura-Slab®と同じ構造のプレキャスト床版(橋軸方向1.97m)を架設している。間詰用鉄筋と壁高欄用鉄筋が配置されている以外は、コンクリート配合、横締めもDura-Slab®と同じになっており、上面に孔を設けていない。一方、鉄筋がないと伸縮装置の定着が取れないことに加え、「伸縮装置の取替え時に床版コンクリートを斫る必要があるため、従来の維持管理との整合を考慮した」(NEXCO西日本)ことから、端部版のみ完全なDura-Slab®を採用しなかったとのことだ。
端部版
Dura-Slab®と端部版との間詰幅は下面450mm~上面490mmで、継手には先端に円錐台形状の突起を設けた鉄筋を用いる「Trunc-head®工法」を採用し、高炉スラグ微粉末50%置換の強度50N/mm2のコンクリート(スランプ値15cm)で打設を行った。
間詰部とその打設
鉄筋の替わりにGFRPロッドを使用した非鉄製壁高欄「Dura-Barrier®」を採用
床版防水は端部版のみ施工
壁高欄には、NEXCO西日本と三井住友建設が共同開発した超高耐久壁高欄「Dura-Barrier®」を採用した。Dura-Slab®と同様の設計基準強度80N/mm2の高強度繊維補強コンクリートを使用し、鉄筋の代わりにガラス繊維強化プラスチック(GFRP)ロッドを使用することで腐食劣化の可能性を排除し、超高耐久化を実現したものだ。
Dura-Barrier®概要図と本体
1基あたりの橋軸方向サイズは床版サイズと合わせて2.4mで計画、1日に路肩側、中央分離帯側あわせて18基を50t吊ラフタークレーンで設置していった。設置後は、床版との間詰部と壁高欄間の間詰部の30㎜の隙間に高強度無収縮モルタル(太平洋プレユーロックスUHS)を充填して施工を完了させている。
Dura-Barrier®の架設/モルタル充填/設置完了(右写真:大柴功治撮影)
床版防水は鉄筋が配置されている端部版のみで、高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、レジテクトGS-M工法を用いて施工した。舗装は、基層が橋梁レベリング層用混合物(FB13)、表層は高機能舗装Ⅰ型用混合物で、873㎡を基層1日、表層1日で完了した。
端部防水工/端部以外はプライマーを塗布した/舗装工完了
施工完了
Dura-Slab®について、NEXCO西日本は「(今回の工事は)試験施工的な位置づけもあり、施工面を含めてさまざまなデータを取得している。そのデータを検討したうえで、非鉄製床版の特徴を活かして、塩害地域などでの採用を念頭に置きながら今後の展開を考えていきたい」としている。
本工事では耐震補強工事もあわせて計画しており、落橋防止装置の設計を行っている。工期は2022年8月30日まで。また、本工事の同期間で蓼野第一橋(下り線/橋長187.0m、鋼4径間連続非合成鈑桁)、蓼野第四橋(下り線/橋長199.5m(うち取替は47.25m)、3+4径間ラーメン高架橋+4径間連続中空床版+鋼単純合成桁(うち取替は鋼単純合成桁))、蓼野第五橋(下り線/橋長287.0m、鋼3径間連続桁)の3橋でもプレキャストPC床版への取替工事を実施した。
元請は、三井住友建設・日本ピーエスJV(蓼野第一・四・五橋も同)。蓼野第二橋の一次下請は、カイセイ(床版取替工)、吉村(クレーン工)、内野建設興業(カッター工)、佐藤渡辺(舗装・迂回路工)。