東日本高速道路(NEXCO東日本)東北支社は、昨秋に東北自動車道の若柳金成IC~一関IC間に架かる磐井川橋(下り線)の床版取替工事を実施した。本工事では、終日対面通行規制期間の制約により「急速施工が求められた」(NEXCO東日本)ことが課題となった。そのため、2班体制による24時間施工や雨天による工程遅延を防ぐ取り組みを行い、同橋全面1,700m2の床版取替を、準備工や防水・舗装工を除き約3週間で完了させた。
若柳金成IC~一関IC間の凍結防止剤の散布量は約0.5t/日
塩化物イオン濃度は最大で6.85kg/m3
同橋は、1978年に供用された一級河川磐井川を跨ぐ橋長164.46m、有効幅員11.4mの鋼3径間連続鈑桁橋。平面線形はR=1,900mで、縦断勾配0.7%、横断方向2.0%となっている。既設床版厚は220mmで、過去に上面増厚は行っていない。
磐井川橋/同橋 橋梁一般図(※拡大してご覧ください)(左写真:大柴功治撮影/橋梁一般図:NEXCO東日本東北支社提供)
若柳金成IC~一関IC間の交通量は約13,000台/日、大型車混入率34%(下り線/2019年)で、凍結防止剤の散布量は約0.5t/日・区間(上り線/2019年)である。東北支社管内130区間平均が約3.5t/日なので、当該区間の散布量は支社管内では多いとはいえないが、それでも塩化物イオン濃度は最大6.85kg/m3(A1~P1間/深さ方向30~50mm)、鉄筋近傍最大2.54kg/m3、鉄筋近傍平均0.59 kg/m3(いずれもA1~P1間)に達していた。これら凍結防止剤散布による塩害と繰返し荷重による経年劣化と考えられる床版損傷が発生し、床版下面では剥離、エフロレッセンスをともなうひび割れ、床版上面では土砂化や鉄筋腐食などが確認された。
既設床版の損傷状況(下面/上面/切断面)(左・中央写真:NEXCO東日本東北支社提供/右写真:大柴功治撮影(以下=*))
床版損傷に対する抜本的な対策として、同橋の床版全面(A1~P3)を床版厚220mmのプレキャストPC床版に取り替えることにした(終点側は磐井川高架橋と接続しているため、P3となる)。
床版撤去・架設は2台のクレーンを用いて両開きで施工
1日あたりの架設枚数は12枚
本現場の課題は施工期間が限られていたことだ。例年、10月の体育の日を含む3連休は紅葉などの観光の車両で当該区間を含む上り線で渋滞が発生することから、3連休後からの規制を計画しなければならなかった。さらに、11月からは東北支社管内の雪氷対策期間となり、できるだけ早く規制を解除する必要がある。このため、終日車線規制および対面通行規制期間を10月12日から12月9日までの59日間とし、その期間も短縮すべく、床版取替工および壁高欄工を約3週間で完了する計画を立てて、施工に臨んでいる。
床版の撤去と架設では、200t級吊オールテレーンクレーン2台を用いて中間地点からA1側とP3側に向けて2班体制で施工することにより、工程短縮を図った。1班20~25人で、夜間に既設床版の剥離・撤去、早朝から昼頃までに上フランジ上面の研掃・塗装を行い、昼過ぎから夕方にかけて新設床版を架設するという24時間施工を繰り返し、撤去・架設のクレーン作業は延べ8日間で完了させている。
施工方法(NEXCO東日本東北支社提供。以下、注釈なき場合は同)
クレーン2台を用いて両開きで施工した
既設床版はコンクリートカッターで橋軸方向1.85m×橋軸直角方向5m(橋軸直角方向2分割/重量約7t)に切断し、ワイヤーソーで切断した壁高欄、地覆とともに撤去していった。1日あたりの標準的な撤去枚数は24枚(片側12枚)で、合計172枚となっている。
既設床版と壁高欄の切断
既設床版の撤去
川田建設那須工場で製作した新設床版は橋軸方向1.86m×橋軸直角方向11.4m(重量12.5t)で、合計73枚を1日あたり標準10枚(片側5枚)を架設した。P3付近の上空には架空線があり、高圧電線近接作業が発生するため、撤去・架設時には監視員の配置並びに配置位置の周知とクレーン作業時における教育を行うといった安全対策を実施したうえで施工している。
新設床版割付図(※拡大してご覧ください)
新設床版の架設(撮影=*)