約2年で約20橋10万㎡に採用へ
川田工業 合成床版『SCデッキ・スタッドレス』耐荷力は2倍、配筋作業を1割削減
国土交通省近畿地方整備局が整備を進めている有田海南道路5号橋上部工工事で、川田工業が開発した高耐久性合成床版『SCデッキスタッドレス』を床版全面に採用している。SCデッキは開発以来、20年間で約150万m2が採用されているが、それを安全性、施工性、疲労耐久性の点でさらに向上させたものが『SCデッキスタッドレス』である。すでに発売開始以来2年で約20橋、約10万m2(約9,500t)が使用されるもしくは採用が決定している。(井手迫瑞樹)
底鋼板厚さを2mm薄くし、底鋼板重量を10%軽量化
上下のフランジ状の突起と腹板部に設けている節突起が効果
従来品と異なるのは、スタッドを省略し節付き突起リブを採用したこと。それによって鉄筋を設置する際にスペーサーが必要ないリブを隅肉溶接とするため、スタッド溶接に比べて入熱量を少なくでき、底鋼板が従来品の板厚より2mm薄くなるため、底鋼板重量を10%低減できることなどが特徴だ。
節付き突起リブの基本厚さは9mm、高さは床版厚によって異なるが、床版厚250mmの場合、180mmとしている。上下のフランジ状の突起(17mm)は、リブの曲げ剛性を高め、押し抜きせん断強度を向上させるために設けられている。上下突起の隅角は滑らかな形状にしており、コンクリート打設時の空気や水分などを滞留させることなく、充填性に優れた構造としている。
SCデッキ・スタッドレスの構造と、節付き突起リブの構造詳細(図は川田工業提供)
リブハンチ部の充填性にも優れている
節付き突起リブ/同橋のリブ高は13cm/フランジ状突起部の厚さは17mm(井手迫瑞樹撮影)
さらに、リブの腹板部に33mm間隔で設けている高さ3mmの節突起は、横リブ方向の水平せん断力に抵抗するために用いているもの。施工の際は、このリブの上に所定の鉄筋(D13~D25)を置いてコンクリートを打設するだけで合成床版を製作することができる。形成された合成床版は、「複数のリブ間パネルが抵抗する破壊メカニズムになる、また、リブの両面とコンクリートの肌隙が少なく、橋軸直角方向の貫通ひび割れが発生しにくい」(開発協力者の松井繁之大阪大学名誉教授)という利点があり、輪荷重走行試験を行った結果、耐荷力は従来のSCデッキの2倍まで向上している。
また、施工性も良い。隅肉溶接のため、スタッド溶接に比べて底鋼板厚を2mm薄くできるため、軽量化しており輸送・架設に優れている。リブ間隔は600mmと広く、スタッドを省略したため、配筋時や、コンクリート打設時における作業員の移動や作業を阻害しない。また、鉄筋は高さ調整のためのスペーサーを設置することなく、リブ上に置くだけで良いため、配筋作業の手間も軽減できる。
桁架設から底鋼板の設置状況まで(川田工業提供)
リブ間隔は600mm程度あり移動しやすい(井手迫瑞樹撮影)
鉄筋は置くだけでよく、配筋作業の手間を低減できる(左、中は井手迫瑞樹撮影、右は川田工業提供)
有田海南道路5号橋で全面採用
従来品より配筋作業を1割削減
有田海南道路5号橋(92m、幅員8.9~11.735m)では、同製品を全面的に採用した。床版厚は220mmに設定したため、リブ高は130mmとした。パネルごとに1か所水抜き穴孔があるが、これは供用後に床版内部への雨水の水の滲出を調べるために設けている「モニタリング孔」(松井名誉教授)。配筋作業は延べ37人が1週間従事するだけで全面積の施工を完了し、従来品より配筋作業を1割程度縮減した。コンクリート打設は普通ポルトランドセメント+膨張剤を使用した。従来は「ハンチ部の平リブにアングル材を溶接していたため、コンクリートの充填に課題があったが、本製品は節付き突起リブが通っているだけなので、うまく充填することができている」(川田工業)ということだ。
モニタリング孔(井手迫瑞樹撮影)
床版コンクリートの打設