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PC橋部施工ではヤード確保に苦心

熊本県 鋼・PC混合の長大橋・第二天草瀬戸大橋の上部工が進捗

公開日:2021.12.14

G1の打設量は1,326m3
 鋼桁との擦り付けの打ち下ろし部も打設

 G1(A1~P5)の打設は、3回に分けて合計1,326m3を行っている。1回目の打設はP5からP3を6m超えた地点までの585m3で9月中旬に完了。2回目は1回目の打ち継ぎ目部からP1を6m超えた地点までの523m3を12月初旬に、3回目はA1までの218m3で1月初旬に施工予定だ。


打設計画図(左から施工ブロック1・2・3)※拡大してご覧ください

 1回目は、P3側の低いほうから片押しで3層で打設していった。P5側は鋼桁との擦り付けがあるため、標準主桁幅(1,400mm)+1,200mmの打ち下ろし部(橋軸方向長さ3,600mm)があり、さらにG2の鋼桁架設が先行するため、緊張用ジャッキが入る切り欠きを入れている。打設に際しては初期ひび割れ抑制に効果がある皮膜養生剤「キュアキーパー」を使用し、打設後は遮熱と保水に優れる養生シート(セレキュアモイスト)を敷いて、7日間の保水養生を行っている。


P5側の打ち下ろし部(写真=*)/施工ブロック1打設でのポンプ車の配置

打設状況と打設完了

養生状況



完成した橋体(写真=*)

G5ではヤードの確保が難しく施工計画を変更
 打設量1,520m3を5分割で施工

 G5(P16~P22)は先述したヤードの確保で一番影響を受けた工区だ。「終点側のP22から順番に支保工を構築して打設する計画だったが、ヤードの確保が難しかったので、道路(市道)交差部を含むP19~P21は支保工を構築せずに、P18~P19を先行して構築することにした」(ピーエス三菱・苓州・オオマスJV)。P22からP16に向かって打設していく計画に変更はないが、P22~P21を6.2m超えた地点の打設では施工ヤードが確保できなかったことからP20~P21をヤードとして使用せざるを得なく、打設もP21までとした。P19~P22は打設後にしか支保工を構築できないことになったため、工程遅延を防ぐためにP18~P19の支保工を先行して構築したわけだ。
 打設は当初計画では、①P22~P21を6.2m超えた地点②~P18を6.2m超えた地点③~P16での3分割施工だったが、使用できるヤードと打設量の点から変更を行い、実施工では、①P22~P21②~P20③~P19を6.2m超えた地点④~P18を6.2m超えた地点⑤~P16の5分割施工とした。



打設計画図(当初計画・2回目まで) ※拡大してご覧ください

 打設量は、1回目(8月中旬)300m3、2回目(10月上旬)250m3、3回目(10月下旬)250m3、4回目(11月上旬)250m3、5回目(12月下旬予定)470m3で、合計1,520m3となる。2回目では、P19~P20間の市道を通行止めのうえ施工ヤードとして使用して打設を行った(両側にも市道があり迂回路として使用可能だったため)。
 圧送距離は5回目(P16~P17とP18)の打設がブーム長30m、最大時水平60mと最長となるが、それよりも暑中での打設となった1回目のほうが「リスクが大きかった」(ピーエス三菱・苓州・オオマスJV)という。1回目の圧送距離は鉛直と水平あわせて約60mだったが、暑中コンクリート対策として主に高性能AE減水剤(遅延型)の使用や打設箇所上空全面に遮光ネットを設置、配管に養生マットを設置した。
 皮膜養生剤はマスターキュア106を用い、養生は湿潤養生マット(アクアマット)を使用して10日間の散水養生を行っている。


打設状況と打設完了。施工ヤードが狭小であることが分かる

養生では自動散水システムを採用

完成した橋体(写真=*)

 交差道路上(3箇所)へのはく落防止対策として、型枠へ3軸メッシュシート(テクノーラSAMMシート)を敷設した後に打設して一体化した。


交差道路上に敷設した3軸メッシュシート(テクノーラSAMMシート)(写真=*)

G6の第2施工区間は暑中打設のため36N/mm2の普通コンクリートを使用
 打設量低減と作業時間の短縮を図るため2分割で施工

 G6(P22~A2)は、P22~P27が5径間連続のPC中空床版橋、P27~A2がオン/オフランプとなっているため単径間の中空床版橋2橋だ。幅員もそれにあわせて拡幅されていて、P22~P27が12.5m~27.3m、P27~A2(オフランプ)が16.5m~17.8m、P27~A2(オンランプ)が8.1m~11.9mとなっている。
 施工はP22からA2に向けて進められていて、最初の施工区間であるP22~P23を6.6m超えた地点は5月下旬から6月上旬にかけて打設(500m3)を行い、PC緊張とグラウト注入も完了して、PC橋のなかで最初に橋体が完成した区間となった。次いで、P24を6.3m超えた地点までの施行を7月中旬に行ったが、暑中コンクリートとなったことから本区間のみは36N/mm2の普通コンクリートで打設(600m3)した。「ヤードの関係でポンプ車などの配置や配管の制限、周辺住居を配慮した時間制約があり、さらに暑中であるために打設量の低減と作業時間の短縮を図るために、分割目地を設けて2回に分けて打設した」(日本ピーエス・中村・前川JV)。


打設計画図と、PC橋部で最初に橋体が完成した区間(左写真=*)

 初回施工時にはP22側の国道横のスペースをヤードとして使用したが、支保工があったため、「ポンプ車1台を配置するのがやっとだった」(同)という。2回目からは、国道と反対側(A2側)の民間地を借り上げてヤードとしたが、こちらも狭小なスペースとなった。
 10月上旬にはP25を6.3m超えた地点までの600m3、12月上旬にはP26を6.1m超えた地点までの680m3の打設を完了し、1月下旬にはP27まで600m3の打設を行う予定だ。連続部の合計打設量は2,900m3。単径間部は、来年2月中旬にオフランプ(280m3)、3月上旬にオンランプ(500m3)の打設予定となっている。
 国道1箇所、市道2箇所の交差道路上はG5と同じく3軸メッシュシート(テクノーラSAMMシート)を採用している。皮膜養生剤はプロキュアを使用し、養生は湿潤養生マット(アクアマットSPタイプ)を用いて28日間の長期養生を実施している。


第1施工ブロック第1打設区間の施工状況/第3施工ブロック第2打設区間でのポンプ車配置
打設完了/養生状況/国道324号上の橋体(右写真=*)

シースは塩害対策でポリエチレンシースを採用
 グラウト充填は真空グラウト法を用いる

 PC緊張では、各工区ともに12本より17.8mmのPC鋼より線を採用し、施工箇所によりマルチストランドVシステムなどによる両引きもしくは片引き(G1は両引き・片引きの両方、G5、G6は片引きのみ)での施工を行っている。シースは塩害対策と耐久性の観点から、G1では栗本鐵工所製の、G5では東拓工業製のポリエチレンシースを採用した(G6はメッキシース)。グラウト充填は真空グラウト法を採用して、充填性向上を図っている。


G1とG5のシース

G1でのPC鋼材挿入とグラウト充填

G5でのグラウト充填確認作業とG6でのグラウト充填作業

 設計は、G1がオリエンタルコンサルタンツ・水野建設コンサルタントJV、G2~G4がオリエンタルコンサルタンツ、G5~G6が日鉄鉱コンサルタント・十八測量設計JV。
 元請は、G1上部工がコーアツ・共栄・礎JV、G2~G4上部工が日立造船、G5上部工がピーエス三菱・苓州・オオマスJV、G6上部工が日本ピーエス・中村・前川JV。一次下請けは、大田建設(G1)、クマチク創建(G5)、永江建設工業(G6)など。

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