PC橋部施工ではヤード確保に苦心
熊本県 鋼・PC混合の長大橋・第二天草瀬戸大橋の上部工が進捗
G1の施工ヤードはG2の工事用道路としても使用
G5・G6は住宅地と隣接し、ヤードの確保で制約を受ける
G1、G5、G6のPC中空床版橋の上部工架設は固定支保工上での現場打ち施工を行っている。支保工はくさび結合支保工を基本として、道路交差部は支柱式支保工を採用した。
G1の固定支保工/G6の国道324号交差部はトラス型枠支保工を採用した(写真=*)
施工にあたってまず課題となったのは、各工区とも施工ヤードが手狭であったことだ。G1は工場施設と会社事務所が近接していることから、港湾道路と市道の付け替え道路を通行止めにしてヤードを確保したが、G2の工事用道路としても使用しているため、「G2との調整を密接に行わないと、双方の工事に影響が出てしまう」(G1元請のコーアツ・共栄・礎JV)という状況下での施工となった。さらに工事用車両の行き来があり、ヤードに資材を置かないようにした。
G1全景。起点側から
G1の施工ヤード。工場や会社建物が近接している
G5、G6は住宅地と隣接しているため、ヤード条件はさらに厳しい。同橋北側の開通後に管理用道路(幅員4m)となるスペースを主にヤードとして活用したが、打設時のポンプ車の配置や圧送距離などを考えるとそれだけでは不十分で国道や市道を跨ぐG6では民間地を借り上げてヤードを確保し、同じく市道を跨ぐG5では打設時に市道の一時通行止めを行った。
「ヤードの確保が難しかったことから、施工計画を変更した」(G5元請のピーエス三菱・苓州・オオマスJV)(施工手順については後述)ことや、「クレーンの設置場所も限られているので資材は橋面上を横取りして搬出入しなければならなかった。また(ヤードが狭小で資材を置くスペースがほとんどないため)協力会社のトラックを常時走らせ、資材の搬出入を小まめに行うようにした」(G6元請の日本ピーエス・中村・前川JV)といった対応を余儀なくされた。さらに、近隣への騒音に配慮するため、各工区とも防音シートを設置している。
G5/G6全景(G5は終点側から。G6は起点側から)
G5。管理用道路を主に施工ヤードとして使用。施工時には市道の一時通行止めも行っている(左写真=*)
G6。住宅が近接している中でクレーンの設置場所も限られている(写真=*)
塩害対策区域のG1とG5では鉄筋すべてにエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用
中空床版橋部は36N/mm2の早強コンクリートを使用 かぶり厚は70mmを確保
固定支保工構築後は、型枠、配筋、打設に移っていくが、各工区とも工程短縮を図るためとヤード内でのクレーン設置が限られることから、支承の据え付けを先行して行った。支承は、ビー・ビー・エム製の機能分散型支承「HSB」を採用し、塩害対策として溶融亜鉛めっき後に粉体塗装を施している。
支承は機能分散型支承「HSB」を採用。工程短縮とヤードの問題から支承の据え付けを先行(右写真=*)
鉄筋についてはG1とG5が塩害対策区分Sとなることから、現場打ち部すべてでエポキシ樹脂塗装鉄筋を使用した(G1はMKエポザク(明希)、G5はTPCエポキシ鉄筋(筒井工業))。G6は塩害対策地域から外れているため普通鉄筋としたが、地覆部と半壁高欄部は耐久性を考慮してエポ鉄筋(MKエポザク(明希))を採用している。
左からG1・G5・G6(左・右写真=*)
コンクリートは中空床版橋部が強度36N/mm2の早強コンクリートを使用した。水セメント比43%、スランプ12cmで、高性能AE減水剤を添加している。コンクリートかぶり厚は70mmを確保した。地覆や半壁高欄は30N/mm2の普通コンクリートでの打設となっている。
各工区でコンクリートの充填および締め固め不足対策を工夫
G5では透明型枠を採用 G6では『ジュウテンダーⅡ』を使用
中空床版橋の打設ではPCケーブル定着部である端部などの過密鉄筋に加えて、円筒型枠直下のコンクリートを直接締固めることができないため、コンクリートの充填不足、締め固め不足が課題となる。さらに、本現場では円筒型枠とスターラップ筋の間隔も35mmしかなかったことから、各工区ではその対策を取りながら打設をしていった。
G1では、「通常のφ50mmのバイブレーターでは施工できないので、φ28mmで2.6mの長柄付きの小径強力バイブレーターを使用し、密実なコンクリートを打設できるようにした」(コーアツ・共栄・礎JV)。
G5でも小型バイブレーターとマルチバイブレーターを多用したうえで、「円筒型枠下に透明型枠(スルーフォーム)を採用して、下からコンクリート充填がきちんとされているか確認」(ピーエス三菱・苓州・オオマスJV)していった。
G1(右写真)とG5(左写真)でのバイブレーターによる締固め作業
G5ではコンクリート充填確認のために透明型枠を採用した。
交差道路上には、はく落防止対策として、「テクノーラSAMMシート」を敷設(後述)(写真=*)
G6もマルチバイブレーターを使用し、先端をゴムで養生することにより型枠などの損傷を防いだ。さらに、コンクリート充填・締固め振動検知システム『ジュウテンダーⅡ』を使用して品質確保を図った。これは、水、空気、コンクリートを識別する小型振動デバイスにより、充填確認と締め固め程度の両方を確認できるもの。「振動デバイスを円筒型枠下面に橋軸方向1mピッチで設置したほか、PCケーブル定着面の下面にも設置して、充填不良になりやすい箇所や緊張で局部応力がかかる箇所の施工状況を確認していった」(日本ピーエス・中村・前川JV)。
G6での締固め作業。コンクリート充填・締固めでは「ジュウテンダーⅡ」を使用して品質確保を図った