増桁 G4桁の補強不要かつB活荷重に対応した狭小箱桁
G1-G3の桁は供用部と縁が切れた状態で補強
次に上部工である。
床版取替は上下線を合わせて、3分割施工で実施することから、上下線の間に新設する増桁は中分床版架設後の交通解放時において、上下線のG4桁(もっとも中分側の桁)の補強量が不要になるような箱桁断面かつ更新後の9主桁においてB活荷重を与えた状態で決定される箱桁断面としている。
増設桁は当初鈑桁構造も検討したが、「上下線供用下において、中分の隙間に桁を送り出してなおかつ降下させなければいけない」(NEXCO中日本)ため安全面も考慮して、図のような狭小箱桁構造を採用した。当然、箱桁は既存の鈑桁と比べて剛度が高いため、設計段階でその均衡を取ることに腐心した。とりわけ支間長が70mと非常に長いので既設鈑桁と箱桁のたわみの均衡がなかなか取れない。横桁構造で繋ぐとしても、上下線は常時車両が通過しているため交通振動もある。その状況で桁架設および既設鈑桁の補強設計にトライアルした。増設桁と既設桁(中分側のG4)は横桁で連結することで、上下線を一体化した構造とし、なおかつ上下線のG4桁は箱桁に荷重を預ける構造にすることで補強を不要とした。増設桁とG4をつなぐ横桁の仮添接板のボルト孔は、施工段階ごとのたわみや活荷重による振動などを考慮して縦長孔構造とし、本締め時に本添接板に取替える施工方法とした。
増設桁とG4をつなげた後G4とG3の間の対傾構は全て一旦撤去する。増設桁と繋げたG4に架設した中分床版に活荷重が作用することにより、G3との間のたわみ差は試算すると実に76.9mmに達する。増設桁と繋げたG4とG3が連結したままでは、G1~G3にも活荷重が伝達してしまい、満足な補強効果を得ることができない。そのため、一時的に桁間を切り離し、床版撤去時の施工時荷重に関する許容応力時の割り増し係数1.25を生かし、G1-G3の桁は供用部と縁が切れた状態で補強する。主な補強メニューは支間中央部の鋼板当て板、中間支点部は、負曲げによる上縁引張に対して外ケーブルで鋼桁にプレストレスを導入する補強を行い、かつ上フランジの少し下に板リブを添接するダブルフランジ補強を行った。ダブルフランジ補強の範囲は最大で18mの長さに達する予定だ。
そのあと同桁上の床版を撤去・架設し、最後に、切断した個所と同じ位置に再度対傾構を設置して繋げる。
増桁 河川敷からの架設を検討
既設桁同様のキャンバーになるように綿密に計算
増設桁の架設は、当初、高速道路土工部本線上からの送り出し架設を想定したが、河川出水期(毎年6~9月)に、河川管理上において吊り足場が設置できない区間が発生することが判明した。このため、架設は非出水期に限定し、これを機に、高速道路を通行する車両及び施工上の安全面を考慮して、河川敷からの架設を検討している。
増設桁の架設計画
増設桁の架設は、上下線のG4桁上に設置した門型支柱架台から増設桁のブロックを吊下げて行う。河川敷から吊上げた増設桁のブロックをG4桁上の運搬台車で橋軸方向に運搬し、所定の位置で増設桁のブロックをG4桁上の門型支持架台に盛替えて、順次部材を連結していく。1径間ごとに高力ボルトの本締めを行い、多点支持から支点支持に盛替える。同様の作業により、3径間の増設桁を架設していく。
なお、増桁の架設は、完成時に既設橋梁と一体化するため、架設キャンバー(上げ越し管理)に注意を要する。G4と増設桁が同じキャンバーにならなければ床版が載らないためだ。これはG1~G3と増設桁および増設桁と一体化したG4間も同様であり、綿密な現地計測が必要となる。
増設桁架設から床版取替に至るステップ
地覆撤去状況
床版の切断 主桁上はコンクリート幅800mm程度圧縮抵抗材として残す
馬蹄型ジベル 根元はワイヤーソーによる水平切断を検討
床版の切断は、基本的に主桁間の中間床版の撤去を先行して行い、主桁上はコンクリートを幅800mm程度残す。吊り足場の架設支持や既設合成桁の上フランジ座屈耐力を考えると、圧縮抵抗材として残しておくことが合理的なためだ。床版架設前には直上の残コンを撤去しなくてはならないが、既設合成桁のため、馬蹄型ジベルが存在する。とりわけ馬蹄型ジベルの根元には厚い(高さ60mm×幅38mm)の文鎮状の塊がある。ワイヤーソーによる水平切断を検討しているが、全厚の施工は諦め、ジベル根元(高さ60mm程度)を残したコンクリートとジベル筋を切断する。残り部分の撤去方法については、鋼桁の品質確保が可能で、施工速度が最も早いものを選定すべく実験中ということだ。
床版取替ステップ
床版架設 パネル枚数は936枚、総面積は14,763.9㎡
塩害対応 エポ鉄筋とECFストランドを使用
床版架設のパネル枚数は936枚、総面積は14,763.9m2に達する。
塩害耐久性照査により、エポキシ樹脂塗装鉄筋(安治川鉄工製)とECFストランド(住友電工製)を使用している。プレキャスト床版の接合構造としては、あご付きサスティンジョイントを採用した。直鉄筋の空き重ね継手と超高強度の鋼繊維補強コンクリート(サスティンクリート、150N/mm2)を間詰材として使用したジョイント構造を採用することで、従来のループ継手と異なり床版厚を190mmに薄くすることや間詰幅の縮減(幅は200mm)を可能にし、配筋作業の省略、打設コンクリート量の縮減を実現し現場施工の省力化を図り、かつ上部工死荷重の軽減にも寄与している。またあご付きにすることで間詰コンクリートの型枠廃止も実現している。
加えて、富沢第二橋(下り線)床版取替工事で用いた床版撤去・架設機を改良し、供用部に隣接する狭隘な施工エリア内で、床版の撤去、架設などの異なる作業を分散して施工を行うことにより施工効率化を図る。FB13により基層、高性能舗装を用いた表層による舗装工を敷設する。
さらに塗替え塗装を合計で60,308㎡実施(既設塗膜剥離方法は検討中)するとともに、96基の支承取替(現在、順次取替中)、増設桁への新規支承設置(12基)、伸縮装置の取替え(4箇所)を行う。
支承取替状況(井手迫瑞樹撮影)
基本設計は大日本コンサルタント、一次下請けは下部工耐震補強工事・支承取替工事がSMCシビルテクノス、クレーン工および増設桁架設の一次下請けは野田クレーン工業、上部工一次下請が西和工務店、舗装工事が三井住建道路。塗替え塗装工事は未定。
様々な試みが計画されている本工事であるが、工事進捗に合わせて新技術や新工法の状況をレポートしていく。