はつりにWJを採用、断面修復材も低弾性材料に変更
名古屋高速道路公社 高速3号大高線北行をリフレッシュ
ある「事案」の発生 床版の上側鉄筋70本をバックホウが巻き上げる
公社が主導で緊急補修に踏み込む
さて、本現場の第4工区では大222~大226の区間延長115mで、ある「事案」が起きた。同現場は床版に設計厚さ190mmのRC床版を採用している。しかし、2度の舗装打替えの履歴があり、一部では床版厚が150mm程度まで減少し、被りコンクリートが薄い箇所も存在した。そうした箇所では当然、舗装撤去(残アスファルト撤去)の際に、バックホウの施工を慎重に行わねばならない。
10月24日11時ごろ、バックホウの爪が鉄筋に引っかかって、多くの鉄筋を巻き上げて損傷させ、切断する事例が発生した。混乱の中、現場では薄層の断面修復が限界と考えられたため、公社は、やむを得ず本復旧までの期間、損傷した床版のモニタリングを前提に断面修復を行わず、復旧する方針とした。
鉄筋損傷状況
しかし、翌朝(25日9時ごろ)、改めて工程を確認したところ、2日程度の作業時間が確保できると考えられたため、鉄筋切断箇所の復旧方法を検討、鉄筋切断箇所のRC床版の厚みは150mm程度(かぶり無し)と非常に薄く危険な状態であるため、可能な限りの補修を実施すべきと判断し、公社主導での緊急補修に舵を切り、WJによるはつりはサーフェステクノロジーに、クラック補修から断面修復に至る一連の補修は、名古屋高速道路の維持管理業務を担当している蔦井とスバル興業、そして現場近傍で下面からの床版補強を行っていた中日建設に作業を依頼し、快諾を得た。材料や一部機械の手配は、名高速が直接行った。
サーフェステクノロジー WJ施工体制を僅か半日で整える
エヌダブル 鉄筋製作から溶接、断面修復に至るまで一括施工
翌26日朝、鉄筋切断本数やWJのはつり範囲を確認したところ、切断本数は70本、はつりが必要な範囲は90㎡に達することが分かった。WJはわずか半日の間に施工体制を整え、10時から実際の作業を開始した。WJでは配力鉄筋の上面までをはつっている。11時からはWJ箇所以外の床版はつりをベビーチッパーや電動ブレーカーで行い、断面修復を実施した。さらに翌27日には、早朝5時までにWJによるはつり作業を完了し、走行帯の切り替えに必要な一部範囲について同9時から鉄筋の継ぎ足しと断面修復を進め、敷き鉄板の敷設後、同23時には走行帯の切り替えを行った。明けて28日の夜には再度走行帯を切り替え、大部分が残った補修箇所の鉄筋の継ぎ足し作業に取りかかった。しかしこれが結構な手間を要した。基本は500mmのラップ長を取ったうえで、200mmのフレア溶接を行い継ぎ足したが、場所によっては鉄筋(D19)が端部まで折れており、そうした箇所は(鉄筋同士を端部で繋ぐ)エンクローズド溶接で施工せざるを得なかったためだ。エンクローズド溶接、とりわけ今回採用したCB工法(セラミックス製の裏当て材を用いた狭開先のエンクローズ溶接継手)は圧接と異なり(溶接部に)瘤ができず(つまり被り厚に影響を与えない)、鉄筋の縮みも抑制できるという利点がある。一方で、鉄筋間の隙間が最小でも7mm必要で、さらに施工時に溶接品質を確保するためのセラミック製の裏あてが必要だ。
こうした状況下で、鉄筋溶接を担当したエヌダブルは、公社と共同で現場を確認した上で、「現場で調整している暇はない。寸法データをもらえれば一夜間で必要な鉄筋を製作し、自分たちで繋ぐ」(森部繁尚エヌダブル社長)と返答。公社はその返答に同意し、鉄筋の製作、現場施工を全て任せた。同社には熟練工がいたことから、全ての作業を予定した時間内に終えることができた。
鉄筋溶接施工状況
WJではつりこんだ箇所/エンクローズド溶接/フレア溶接/鉄筋溶接と断面修復工
鉄筋溶接と並行して、コンクリート界面にマイクロクラック補修用プライマーおよび接着剤(ボンドE2000)を塗布し、断面修復(低弾性補修材、主にゴムラテモルタル、一部リフレモルセットを使用)を行った。これらの断面修復作業も一次下請として、エヌダブルが施工した。
プライマーおよび断面修復工
29日の夕方17時には一連の緊急補修を終え、その後の基層、表層の舗設作業に進むことができた。
元請は第1工区(大38~大84、延長1,890m)が大有建設、第2工区(大84~大130、延長1,500m)が前田道路。第3工区(大130~大215、延長4,000m)がNIPPOなど。一次下請は、WJがサーフェステクノロジー、フタミ、ショットブラストがフタミ、など。