熊本地震対応の締めくくり
熊本復興事務所 戸下大橋の桁が落下した径間を本復旧
国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所は、復興道路の締めくくりともいうべき南阿蘇村道戸下大橋P4~P6間の桁架設を行っている。径間長はP4~P5が10mの単純プレテンホロー桁で、P5~P6が20mの単純プレテンT桁。いずれも2016年の熊本地震で桁が落下した径間で、P5橋脚は根元から折れており、応急復旧時は仮橋を用いて両径間を供用していた。同径間に本桁を架設することによって完全復旧するものだ。(井手迫瑞樹)
熊本地震時の戸下大橋の桁崩落部(井手迫瑞樹撮影)
GW明けに下部工の補強から開始
根元から折れたP5は柱や梁部を新設
同橋の本格復旧は、5月のゴールデンウイーク明けから開始した。まず、損傷した橋脚は建設当時に有していた十分な水平耐力が期待できないことから、山側にφ2,000mmの杭を打ち、それを橋脚と梁を介してつなげ、水平耐力を付与した。これは戸下大橋のほかの橋脚も復旧の際に施している。今回のP5橋脚でも同様に施工したが、杭の打ち込みはほかの橋脚のような急速施工(マルチドライバー工法)でなく、通常のオールケーシングにより施工した。根元から折れたP5橋脚については、事前に行っていた継ぎ目部分のはつり箇所に、鉄筋を配置したうえで柱や梁部を新設した。この一連の作業は8月初旬までかかった。
戸下大橋P4-P6架替え一般図
過年度のP4施工状況
同P6施工状況
P5橋脚の施工①場所打ち杭の掘削
P5橋脚の施工②特殊支保工の設置
P5橋脚の施工③鉄筋組立て、コンクリート打設、完成状況
復旧したP5/桁架設前のP5-P6径間
上部工は9月下旬にPCT桁を架設
10月下旬には中空床版部の架替えを施工
上部工は8月上旬から桁製作を開始し、記者が取材した9月26日にまず160tトラッククレーンを用いてP5~P6間の8本のPCT桁(強度50N/㎟)を架設した。PCT桁は昭和コンクリート工業の熊本工場(菊池市)で、落橋前と同じく桁形状は旧JISで製作している。旧JIS桁で製作したのは、既存の橋脚を補強して利用する事から、当初構造のPCプレテンション桁の中で重量をできるだけ軽くするため。架設後の桁間をつなぐ床版部や横桁の場所打ち品質を向上させるため、打継部は目粗ししておくなど工夫した。これを特殊車両で工場から現場まで搬入した。桁の長さは約20mで重さは約14t。クレーン架設に際しては安全面から(谷側に振らず)山側のわずかな隙間を旋回させて桁を設置していった。
PCT桁架設状況①
PCT桁架設状況②
PCT桁架設完了
PCT桁部の間詰コンクリートの施工状況および完了状況
道路縦断勾配6%超での桁架設については、架設途中に片方の吊りワイヤー張力が緩み、主桁転倒に対する安全性が損なわれる懸念があることから、両方の支持位置(P5-P6)に主桁を設置するタイミングにずれが生じないように縦断勾配に応じた吊りワイヤー長さを調整した継足し用の吊りワイヤーを使用し安全に据え付けた。
クレーン架設でのアウトリガー設置位置については、仮桟橋上であることから、さらに安全性を高める目的で、仮桟橋支持杭上に敷鉄板を2枚敷とし上載荷重を分散させている。
敷鉄板
架設後は吊り足場を設置した後、桁間の床版部や横桁、地覆部を現場打ちし、さらに横締めしていった。また、10月20日にはP4~P5間の中空床版部を架設した。舗装打替えまでも含めて年度内にも供用させる予定だ。
P4~P5間の中空床版桁部架設状況
設計はオービット、元請は杉本建設・藤本建設工業JV。桁製作および架設一次下請は昭和コンクリート工業。