道路構造物ジャーナルNET

アクティオと共同制作 より現場に即したシチュエーションを想定

西日本高速道路エンジニアリング九州 点検業務における危険感受性を高めるためのVR技術を制作

公開日:2021.09.15

 西日本高速道路エンジニアリング九州(以下、エンジ九州)は、アクティオと共同で、インフラメンテナンス点検業務における危険感受性を高めるためのVR技術を制作し、導入した。制作にあたっては、エンジ九州が豊富な現場経験に基づいたシチュエーション設定や企画、現場作業を撮影したうえで、アクティオが動画のグラフィック及びVR制作を行っているため、よりリアルな場面設定を実現している。現時点でのVRコンテンツは①(墜落編)橋梁点検車「床版下面」、②(落下物編)のり面「切土」、③(転倒編)高所作業車、④(挟まれ編)高所作業車「トンネル」の4点であるが、今後は電気室内点検中の感電事故、車両移動中の事故、昇降設備の不適切使用のための落下事故などにも対象を広げていくとともに、その他のヒヤリハット結果を収集して多い事例を選定し、VR技術に加えていく。また、AR(拡張現実)への発展も企図していく方針だ。(井手迫瑞樹)

5K映像や90fpsフレームレート、視野角210°等の映像を体験 高い没入感
 リスクを負うことなく強烈な危険体験

 VR技術は、対象者がヘッドマウントディスプレイ、ネックスピーカー、コントローラー、歩行型VRデバイスを装着することで使用できる(右写真)。5K映像や90fpsフレームレート、視野角210°などの映像を体験できることなどにより、高い没入感を実現している。さらに同技術は、安全確認を実施せず事故が発生した場合と、安全確認を実施した場合の比較体験ができ、安全確認のポイントや法的根拠なども表示説明しているため、より安全に対する理解を深めることができる。

 エンジ九州は、2019年度から安全衛生優良企業の認定取得に努め、1年半後には福岡県内初の安全衛生優良企業に認定された。認定後もさらに安全面のブラッシュアップに努めていた。その取り組みの中で感じたことが「危険感受性の低下」であったこと、さらに厚労省の「第13次労働災害防止計画」(2018年度より5か年)の中の「VR技術を応用した感受性を高めるための教育推進」があったことからVR技術を用いた安全教育を会社に導入したいと考えた。しかし、建設関連において、同社のシチュエーションに適したVRが見当たらなかったため、自社での制作を決意したもの。エンジ九州で企画・現場撮影を担当し、アクティオは、撮影された画像をVR変換を担当する共同制作方式とすることで制作コストを抑制した。


VR画像例① 左:(挟まれ編)高所作業車「トンネル」、右:(墜落編)橋梁点検車「床版下面」


VR画像例② 左:(転倒編)高所作業車「高架下」、右:(落下物編)のり面「切土」

 エンジ九州は、VR技術の開発にあたり、事故事例を若手社員とベテラン社員に分けて考えた。若手は経験不足からくる機器類の適正使用知識やリスク想定の不足、安全行動の理解不足、ベテランは慣れからくる過信、作業マンネリ化による安全意識の希薄・鈍化から事故が生じていると考え、コンテンツもそうした点を考慮して作成している。
 今回作成したVR技術のコンテンツは、当面2021年度から実施する2日間の総合安全教育の一環として組み入れる。対象者はある程度現場経験のある若手技術者社員であるが、今後は現場作業に従事する協力会社社員にも展開していく方針だ。さらには、NEXCO西日本グループの関連会社や監督側の官公庁および関連会社へも両社で積極的に営業し、幅広く普及させていく方針だ。

 同社 右田一彦北九州支店調査役(開発責任者:元安全品質部長)談
「安全衛生教育の従来手法は、座学や教育ビデオが主流であったが、これらは一時的な記憶にとどまることが多い。それに対して過去に経験した強烈なヒヤリハットや事故により怪我をした経験は各人の心に深く刻まれており、決して忘れることない記憶で残る。VRによる安全教育はリスクを負うことなく強烈な危険体験ができるため非常に有効な手段になると考え、当社の独自情報も取り入れてより実際に即したものに作り上げた。」

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