拡幅部は施工前に下部工を補強
架設はクレーンベントとジャッキアップを併用
施工(下部工の補強)
桁の連続化を行うためには、耐震的に負荷が増加する下部工への影響を抑える必要がある。その対応策として、基本的には免震支承を使って下部工や基礎の補強を避ける形で設計している。但し、例えば桁上に非常駐車帯があり幅員が広く張り出し幅が大きくなる箇所がある。既設橋において非常駐車帯の延長は60mであるが、今回は安全性をさらに向上させるため、同80mに伸ばしている。そうした個所は下部工の補強が必要となる。補強方法はRC橋脚部においては鋼板巻立て、鋼製橋脚はリブ補強、橋脚基部補強を施する。
既設上部工の撤去および上部工の地組み及び架設
クレーンベントとジャッキアップの主に2通りの方法で施工する。クレーンベントは、河川や交差道路など高架下の制約がある箇所が対象で、終日通行止め期間で既設桁を撤去し、新設桁を架設する。鉄道交差箇所は一部ガーダー架設を採用する。宮の前高架橋では1000tクローラークレーンを用いて府道2号ランプ橋を跨ぐ部分の桁30.9m(130.3t)を一括架設した。
各橋梁の架設条件
クレーンベントによる施工(豊中高架橋P37-41区間)
鋼桁および床版の撤去状況(井手迫瑞樹撮影)
宮の前高架橋で使用した1,000tクローラークレーン/同高架橋の桁地組状況①
同高架橋の桁地組状況②
同高架橋の桁架設状況③
ジャッキアップは、高架下の制約がなく、地組みヤードが確保可能な個所が対象だ。供用中に高架下で新設桁を地組立てし、新設桁を既設桁撤去時の足場として使える高さまでジャッキアップする。次いで終日通行止め期間に既設桁を撤去し、地組立した上部工をジャッキアップし、橋脚支点部に落とし込んだ桁や床版(これらは桁上からクレーンにより架設)と接合するものである。
ジャッキアップ架設工法の概要
さて、ジャッキアップ部の地組立ては、本線上下線下約20m幅のヤード内に機材を配置して行う。桁下クリアランスは最高でも約12m、最低では約5mに過ぎない。そうした個所にどのように地組み用の機材を配置するのか。
施工は、まずジャッキアップの機材配置に用いるベント及び仮設支柱の建込を行うため基礎を補強し、ベント及び支柱の建込を行った。
その次に地組みを行うための設備を配置した。桁下のヤードには幅いっぱいに動く横取り設備をジャッキアップ架設が予定されている全径間に設置し、上下線の橋梁間には橋脚の梁あるいはベント、仮設支柱を支点に用いて2主桁(H形鋼)を渡し、さらに桁間には一定間隔で横桁を設置し、その横桁の下に橋軸方向にレールを設置し、部材を吊り降ろしできるギアトロリーをレール下に設置した。ギアトロリーの最大吊荷重は20tだが、鋼部材はそれほど重くなく、最大はPCaPC床版ブロックで14tであった。ギアトロリーを橋軸方向に、横取り装置を橋軸直角方向に動かすことによって桁、床版、高欄を地組みしていった。ジャッキアップする箇所は基本的には全てPC床版、壁高欄まで地組みするが、支点部と隣接する部分は桁だけの架設とし、PCaPC床版は桁設置後に架設した。また、モノレールと干渉してしまう箇所についてもPCaPC床版などを抜いた状態で地組みした。
高架下地組ヤード
ギアトロリー
地組み完了後はジャッキアップする位置まで横取り装置を移動させ、ジャッキアップする桁を支える横梁に新設桁を載荷し、センターホールジャッキで(横梁ごと)桁を吊り上げていく。ある程度桁を吊り上げたら、今度は下から押し上げるクレビスジャッキに組み替えて、所定の位置までジャッキアップする。次いで既存の桁を撤去した後にクレビスジャッキで、新設桁を所定の高さまで押し上げた。桁下クリアランスが低い箇所については、センターホールジャッキが入るスペースがないので、そうした個所は押し上げ用の油圧ジャッキにより、クレビスが入るスペースまで押し上げた上でジャッキアップした。ジャッキアップは1ストローク辺り10~15分。1ストロークは900~960mmで1m弱であり、最大のでも1日でほぼ上げることができた。
ジャッキアップ直前の状況、中写真では事前にPCaPC床版も地組みしていることがわかる
ジャッキアップしていく桁
ジャッキアップした桁が頭を出した状況
横梁及び高耐久鋼床版桁の架設
鋼床版桁の架設
交差点部は基本的にはパネル式足場を梁間に設置する特殊足場を用いた
上部工撤去は終日通行止め期間内に施工
既設桁の特徴として切断合成桁があるが、同形式は床版を切断した時に断面応力が増加し応力超過が懸念される。そのためベントあるいはジャッキアップした新設床版上にサンドルを配置して既設桁を支持しつつ撤去していった。また、交差点部については基本的には橋脚梁にブラケットなどをつけて、鋼製の梁を橋脚間に渡し、パネル式足場を梁間に設置する特殊足場を使っている。同足場は、既設桁を撤去した後も作業床としてその足場を架設作業用足場として引き続き使った。通常は吊り足場を用いるものであるが、盛替え作業も考えると時間がかかるためその使用は一部に限っている。
特殊足場例
上部工撤去は終日通行止め期間内に行う。主桁間の床版をまず垂直切断して撤去し、残った桁及び桁上のコンクリートについて、幅600mmでコンクリートが残置されたまま最大10.5mごとに桁を溶断して、吊り上げ撤去した。撤去に使用したのは100tオールテレーンクレーンであり、その吊重量や仮支持点間隔によりブロック分けした。
既設床版の切断状況
幅600mmでコンクリートが残置されたまま最大10.5mごとに桁を溶断
対傾構や桁はブロックごとに切断する必要があるが、塗膜には鉛が含まれている懸念があるため、塗膜剥離剤を用いて切断面の塗膜を除去した上で切断を行うなど労務者の安全性に配慮している。また、撤去した桁は、専用のヤードでブラストして塗膜を剥がしたうえでスクラップ処理を行っている。
その上で、撤去した個所に新しい上部工を架設していく。ジャッキアップ架設を行う部分については、既設上部工を撤去した後に、新設桁が頭を出すように、所定のレベルにジャッキアップした。次いで、下り線上に輸送してきた桁や床版をクレーンで吊り上げ、橋脚支点上に落とし込み、桁や鋼床版を添接する。PCaPC床版やプレキャスト壁高欄もクレーンで架設して据え付け、床版間詰めコンクリートを打設した上で一体化する。
支点部の架設状況
間詰めコンクリートの打設状況
床版防水 PC床版上はHQハイブレンAU
鋼床版上は表層にFFPを採用
床版防水および舗装
鋼床版上はショットブラストで表面研掃した上で舗装を施工する。
鋼床版上の基層舗装(厚さ40mm)はグースではなくFB5(橋梁用レベリング層用混合物)を採用している。また、基層との間には防水工(スーパーフレッシュコート)を配置し、路面からの水の浸入に備えた。表層(厚さ40mm)にはフル・ファンクション・ペーブ(FFP、多機能型排水性舗装)を採用している。FFPは混合物一層で表面付近(15mm)は排水機能、下部はSMA(砕石マスチック舗装)の防水機能を持つ縦溝粗面型ハイブリッド舗装であり、メカニズムを改良したフィニッシャでの施工により、路面のキメ深さを確保できることから、凍結防止剤が簡単に流出しなくなり、凍結抑制効果が持続できる。鋼床版上はコンクリート床版上と比較して凍結しやすいことから、採用した。
フルファンクションペーブ(FFP:開発はガイアート)の施工状況と工法概要
また、PC床版部の防水工は、高性能床版防水(HQハイブレンAU)を採用している。床版防水および舗装は天候に左右される工程であるが、今回は期間中好天に恵まれ、作業が中断することはなかった。但し、長期間の降雨などにより、防水工や舗装ができなくなることも考慮して、その場合は仮舗装だけで済まし、次期以降の終日通行止め期間内に改めて防水層及び本舗装を行う代替プランも考慮していた。
高性能床版防水(HQハイブレンAU)の施工状況
御堂筋橋、豊中高架橋、蛍池高架橋のリニューアル工事完成状況
宮の前高架橋のリニューアル工事完成状況
元請はJFEエンジニアリング・エム・エム ブリッジ・川田工業・宮地エンジニアリング・ピーエス三菱JV。一次下請は架設工が金子建設、三ブリッヂ工業、ミック、植田建設工業、ヒラノユニコン、杉本工業所、今井重機建設、長谷川建設。クレーン工が平野クレーン工業、内宮運輸機工、アイチ建運、ミック、今井重機建設、鶴屋、大矢運送、撤去工が東洋機械、コンクリートコーリング、第一カッター興業、ベステムサービス。