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東北支社初の鋼箱桁橋でのプレキャスト床版取替 小型・軽量化したコッター式継手を初採用

NEXCO東日本 東北道・天狗橋床版取替工事

公開日:2021.08.30

1日あたり12ブロックを撤去し、5枚を架設
 箱桁のため、上フランジの研掃と塗装に時間を要する

既設床版撤去・新設床版設置
 作業足場は、日綜産業の先行床施工式フロア型システム吊足場「クイックデッキ」を採用し、約2,425㎡に設置した。吊りチェーン間隔が広く、床面に段差がないことから作業効率が上がるとともに、作業床を先行施工できるため、高所での作業がより安全に施工できるためだ。


作業足場には「クイックデッキ」を採用した

 5月25日から終日対面通行規制を実施して、路面切削後に壁高欄と既設床版の切断を行った。壁高欄は路肩側のみの切断、撤去(中分側は床版と一緒に撤去)とし、橋軸方向をワイヤーソーで切断後、70tラフタークレーンで吊った状態で地覆付近をロードカッターで切断して床版と切り離した。切断サイズは橋軸方向6.6m×橋軸直角方向0.8m(重量7.8t)で、29ブロックとなった。
 既設床版は、橋軸方向2.2m、橋軸直角方向6.21m(中分側、重量10.4t)と4.14m(路肩側、重量5.7t)になるようにロードカッターで切断した。

既設壁高欄(路肩側)の切断と撤去

既設床版の切断

 既設床版の撤去と新設床版の架設は6月8日から同25日まで昼夜連続で行った。A2側からA1側に向けて220t吊オールテレーンクレーンを使用して施工し、深夜(午前1時~)に既設床版の剥離と撤去、午前中から夕方にかけて上フランジの研掃と塗装、夜間(午後8時~9時半)に新設床版の架設という工程を繰り返している。
 既設床版の剥離は油圧40tのセンターホールジャッキを4~6台用いて行ったが、スタッドジベルが図面通りウェブ上に打設されていたので問題なく施工している。既設床版1日あたりの撤去数は12ブロックで、合計170ブロックとなった。



既設床版の剥離と撤去

既設床版撤去後の上フランジの状況

上フランジの研掃と塗装

 新設プレキャストPC床版の標準サイズは橋軸方向2.45m×橋軸直角方向11.15m(重量17t)で、厚さは220mm。総数は73枚で、標準版のほか支点部調整版12枚を含んでいる。1日あたりの架設枚数は5枚で、1枚あたり約15~20分弱で施工していった。架設のみならば1日6~7枚は可能だったが、箱桁のため上フランジの面積が広く、研掃と塗装に時間がかかることが予想されたため、架設枚数を減らしている。



新設床版割付図

新設床版の架設

 橋軸直角方向400mmピッチで1側面24個設置されているコッター式継手のC型金具にH型金具を挿入して、ボルト締付けを行えば、架設作業は完了となる。翌日に床版と桁上フランジ面との隙間に無収縮モルタルを充填し、さらに翌日にセメント系材料に7号砕石と短繊維(ポリプロピレン)を加えた専用の目地材を充填後(目地幅は20mm)、湿潤養生を行った。


床版を所定位置に引き寄せ、ボルトの締付けを行う

継手部

目地材の充填と養生

新設床版架設中と完了写真(左写真:熊谷組提供)

クイック壁高欄を採用
 シンプルな接合構造により工程短縮

壁高欄など
 プレキャスト壁高欄は、ケイコンのクイック壁高欄を両側に採用した。床版との接合は、床版から突き出したアンカーボルトに差し込み、無収縮モルタルを充填して完了する。壁高欄同士の接合も目地部のせん断キーに無収縮モルタルを充填するだけで一体化できるので、工程短縮を図ることができる。また、グリップを圧着した鉄筋にエポキシ樹脂塗装を施したアンカーボルトを使用しているので、耐久性にも優れているなどの特徴を有している。
 前述したように橋軸方向のサイズは床版サイズと合わせて標準2.45mで、床版架設が完了した箇所から25t吊ラフタークレーンで1日あたり16本を架設した。



クイック壁高欄の架設と無収縮モルタルの充填

 床版防水は高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、HQハイブレンAU工法を用いて施工した。舗装は、基層が橋梁レベリング層用混合物(FB13)、表層は高機能舗装Ⅱ型用混合物で、1日あたり約1,770㎡を施工して、9日間で完了した。
 終日対面通行規制は、7月29日に解除している。


床版防水の施行と完成

舗装の施行と完成

床版の場内搬出入では両けん引トレーラーを活用

安全対策
 対面通行規制区間がトンネルの関係で15kmと長くなったため、交通災害に配慮し、出入口の位置、入場・退場方法の周知を行っている。また、現場事務所にデジタルサイネージを設置して当日の作業内容や材料搬入の時間、熱中症対策、天気予報などを表示し、職員と作業員に対する安全対策の徹底を図るとともに、現場にWEBカメラを設置して作業状況の監視を実施した。
 床版取替現場から約2.5km離れた高速道路上に新設床版の仮置き場を設けたが、トレーラーによる場内運搬ではUターン場がないため、片道は長距離の後退運転となってしまうことから、両けん引トレーラー(熊谷組開発)を用いて常に前進運転を可能として安全を確保した。


両けん引トレーラー

 さらに、現場では上下線の壁高欄の離隔が600mmしかなかったため、防護ネットを設置して施工時の飛散防止などを図った。

「十和田管内高速道路リニューアル工事」では最後の床版取替工事となる、西石通橋(下り線/107.2m/安代IC~鹿角八幡平IC間)が、9月3日から10月25日(予定)まで終日対面通行規制を実施して、コッター床版工法で施工される。

 元請は、熊谷組。一次下請けは、川崎技興(床版取替工/研掃・塗装工)、栄建設(クレーン/カッター工)。防水工・舗装工事元請は、福田道路。一次下請けは、青森ニチレキ(床版防水工)、ライズベープ(舗装工)。
「十和田管内高速道路リニューアル工事」の元請は、熊谷組・ショーボンド建設JVで、熊谷組が床版取替工事、ショーボンド建設がトンネル補強・補修を担当している。
(大柴功治)

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