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メラン材が閉合

福島県下郷大橋 空中にあるピロン柱を起点として斜吊り

公開日:2021.07.16

メラン材同士を横つなぎ材でつなぐ2BOXの鋼桁
 剛結構造のピロン柱を採用 剛結部にはφ32mmのPC鋼棒を40本使用

 さて、次にメラン工法の架設である。同工法は先にメタルのアーチをかけてそこに荷重を受けながらコンクリートを巻きたてていき、RC固定アーチを作っていく工法だ。今回のメラン材は、メラン材同士を横つなぎ材でつなぐ2BOXの鋼桁とした。

 今回のメラン材架設の特徴の1つは、ピロン柱の設置位置である。ピロン柱を両側の張出架設ブロック7合目付近に設置する。その高さは17.5m弱に達する。メラン材はこのいわば空中にあるピロン柱を起点として斜吊りしていく。

ピロン柱を両側の張出架設ブロック7合目付近に設置する。その高さは17.5m弱に達する

鋼メラン架設時の斜吊り鋼材配置図

 ピロン柱は通常、柱にかかる曲げ応力を逃がすためにピン構造であることが多い。しかしここでは張出ブロック上に設置することによる軽量化を考えて、剛結構造にした(左写真)。張出ブロック部とピロン柱との剛結部には、φ32mmのPC鋼棒を実に40本も使っている。剛結構造にしたことで柱はスレンダーにすることができたが、その反面、吊荷重に加えてエンドポストと斜吊りケーブルは施工時の温度により微妙に動き、さらに張出ブロックの下に支えるベントもなくピロン柱を立てているために、柱全体も様々な方向に動く可能性がある。通常の吊荷重だけでなく他の外力も加わるため、施工の手順を間違えると柱自体が座屈しかねない。そのため傾斜計、変位計、ひずみゲージをつけて計測を非常に密にし、通常より安全側の数値で施工することに努めている。

 ピロン柱のバックステイアンカーは両側ともアーチアバットに留める。アンカーに使うPC鋼材はφ32mmで、耐荷重100t相当の鋼材を12本使用しており、引張荷重に対する最大発生率は52%とした。メラン材の架設は全長117.792mで、1ブロック約8mずつの長さを片側7ブロックずつ架設していくもので、3ブロック目までは片持ちで施工し、4ブロック目からまず6本のPC鋼材で斜吊りし、最終ブロック架設時にはさらに6本の斜吊りケーブルを設置して施工した。

ピロン柱のバックステイアンカーは両側ともアーチアバットに留める

スランプは到着時18㎝、施工時で15~18㎝になるように調整
 移動作業車は張出架設で用いた作業車を巻立て架設用に改造して使用

 次にコンクリートの打設である。今回用いているメラン工法は厳密にいうと新メラン工法である。旧メラン工法は内側もコンクリートで巻立てるが、新メラン工法は、荷重を支持するメラン材の大外だけコンクリートを巻けばよい。メラン材に架かるアーチ閉合前の死荷重を受け持つため、φ32mmのPC鋼材を最大で10本配置して施工した。
 打設厚はウエブ部分が400mm、床版部分は350mm、打設量は1ブロック40㎥とした。支柱が横桁のような形で入り込んでおり、内部隔壁のようなコンクリートは打設する必要がない。横つなぎ材とウエブの間にハンチが付いており、その打設には注意が必要だ。横桁、鉛直材の真下にもハンチが付いているので、なかなか形状的には苦労しそうである。上下に型枠を配置するが、メラン材の真下は全く見えない状態で打設しなくてはいけない。



実物大の供試体を作成して実験施工(JV提供)

 そのため実物大の供試体を作成して実験施工した。透明な型枠でどのような流れをするのか検証し、フレキシブルバイブレーター、型枠バイブや棒バイブの適切な入れ方なども検証した。メランの真下1m幅にはバイブは入れられず、バイブは投入場所が限られるため、ジャンカやコンクリートの偏在が起きないよう気を付けた。勾配が大きいため、コンクリートが柔らかすぎても流れて偏在が起きるし、固すぎればジャンカが発生する。そのため、スランプは到着時18㎝、施工時で15~18㎝になるように調整した。配管の距離は片側最長140~150m(アーチリブ)に達し、かつ鉛直方向にも最大で40~50m打ち上げなくてはならない。コンクリートは40,18,25の早強タイプを用い、w/cは40.7とし、膨張剤(ハイパーエクスパン)を添加している。移動作業車は張出架設で用いた作業車を巻立て架設用に改造して使用した(1ブロック6m対応)。移動作業車の組替えは、勾配変化も考慮すると、1回に3日(移動自体は1日、微調整に2日)かかる目算を立てている。打設は左右片側ずつ、追い抜かないように施工した。

移動作業車は張出架設で用いた作業車を巻立て架設用に改造して使用した

補剛桁 アーチクラウン付近の充腹部を先行して製作

 鉛直材の施工は、アーチの閉合が完了した後に足場をかけて施工していく。すぐ近くまで生コンのポンプをもっていけないため、配管を組んでの圧送作業となる。アーチ上並びに鉛直材を伝う形で垂直配管しなければならず、コンクリートの圧送には苦労しそうだ。

 補剛桁は中央部のアーチクラウン付近の充腹部を先行して製作し、その後両端から場所打ちにより伸ばしていって施工し、中央で剛結させる。
補剛桁はPC(PC鋼材、縦締め12S12.7mm、グラウト仕様、横締め1S21.8mm、プレグラウト仕様)構造である。補剛桁の鉄筋かぶり厚は35mm。アーチリブは37~48.5mm。流末は横引きで、アーチの下に600mm排水管を出して、下に落とす方式を採用している。

 現在はメラン材が閉合し、巻立てコンクリートの打設準備中だ(下写真、JV提供)

 設計は協和コンサルタンツ。一次下請けは桑名建設、下郷鉄筋など。足場はダーウィンおよび3Sを使用している。

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