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内装版の代わりの無機塗装の材料としてセラマックス#3000

国道2号山田トンネル コンクリート剥落防止工にBMシート工法を採用

公開日:2021.04.27

 国土交通省近畿地方整備局姫路河川国道事務所は、国道2号姫路バイパスの姫路市と太子町の境にある山田トンネル(延長270m、総幅員9.79m、高さ4.5m)について、線導水樋の設置、コンクリート剥落防止工および内装版撤去、明度確保のための無機塗装などを行った。同現場ではコンクリート剥落防止工にバサルト(玄武岩)を主材としたBMシート工法、内装版の代わりの無機塗装の材料としてセラマックス#3000をそれぞれ採用している。

山田トンネル(下り線)

1日約8万台の交通量
 水平目地については、全線において浮きが確認

 記者が取材したのは、山田トンネルの下り線現場。同トンネルを含む姫路バイパスは一番多い地点で1日交通量約10万台に達する国内有数の重交通路線で、同トンネル付近も1日約8万台の交通量を誇る。トンネル標準示方書(昭和39年版)で設計され、在来矢板工法で建設され、1975年12月に暫定供用されたトンネルで供用後45年が経過している。
 一方、同事務所が所管する国道2号BP(姫路BP、加古川BP)では、昨年度落下物だけで8千件の報告がなされている。交通事故により車両が内装版に衝突し、その破片が飛び散る第三者被害を未然に防止するため、内装版を内装塗装に変更するもの。同トンネルでは、老朽化して剥がれ落ちる可能性もあり、高速隊からも「危険なので撤去してほしい」という要望が上がっていた。
 ただし、事前調査結果より水平目地からの漏水が原因でエフロレッセンスによって遊離石灰などの成分が析出している個所が複数確認された。水平目地については、全線において浮きが確認された。


損傷状況(上り線)

 施工はまず、遊離石灰の除去および素地調整のケレンを電動工具で行った後に、地下水を主とした漏水を恒常的に排出するための水平目地線導水樋を設置した。その後に在来矢板工法の上半と下半を分ける水平目地に沿った損傷部220㎡をBMシート工法によって剥落防止工を施工し、最後にトンネルで多くの実績を有する無機塗装セラマックス#3000を用いてトンネルの内装塗装(2,100㎡)を実施した。

排水樋設置状況/BMシート施工前の表面

玄武岩を材料に使用したBMシート
 平織りのため柔らかく施工しやすい

 BMシート工法は、含浸成分を有する無機系ハイブリッド表面被覆材「アイゾールEX」と耐候性に優れたバサルト(玄武岩)繊維シートを用いた剥落防止工。BMシートは玄武岩由来ながら、柔らかい風合いで施工しやすい。繊維の交点は樹脂による目止めではなく、一部ガラス繊維を使った平織りとしているためだ。また、通常のはさみで切断できるため、現場での寸法合わせも容易となっている。押し抜き強度は2.1kN、付着強度は1.8N/㎟と所定の剥落防止性能を有している。また、BMシートの繊維引張強度は3,500N/㎟とアラミド繊維を超える強度を有している。バサルト繊維は、護岸土嚢のバッグの素材にも使われているほか、橋脚の耐震補強や床版補強にも適用を目指している。
プライマーや含浸樹脂に使うアイゾールEXは、次工程のセラマックス#3000との相性がよく付着も確認できたことから、同工法を採用した。

BMシート

 さて、BMシートの施工である。同現場は22時から規制を開始し、翌朝6時には規制解除しなければいけない。夜間の短い時間、しかも重交通の中で施工しなくてはいけないため、とりわけ施工性を大きく考慮した。BMシート工法は、表面の断面修復や不陸修正を専用のプライマーや素材を用いて行った後、接着層として1層目のアイゾールEXを0.15㎏/㎡塗布し、その後、BMシートの含浸接着のため、接着前に1回、接着後に1回、アイゾールEXを0.35㎏/㎡ずつローラーで塗布する。アイゾールEXは透湿性の塗膜を形成する材料であるため、エポキシなどに比べ脱泡しやすく、高品質なシート接着層を形成できる。また乾燥が早く養生時間が短くできるため、すぐに次の工程に移ることができることや、風合いが柔らかく施工しやすいことから、BMシートの一連の工程を1夜間で完了することができ、規制回数を従来に比べて半分以下に減らすことが可能だ。プライマー、上塗り材ともに同じ材料を用いるため材料ロスも少なくすることができる。
 現場条件から、230㎡を4夜間に分けて施工した。

プライマー施工状況/含浸接着1層目施工状況

シート貼り付け状況/含浸接着2層目施工状況

セラマックス#3000を採用
 乾燥時間は最短2時間 1夜間で全行程の施工が可能

 BMシートを全面完了したのちに、無機塗装の施工に入る。無機塗料はトンネル内装塗装として多くの実績を有するセラマックス#3000を採用した(右写真は下塗状況)。セラマックス#3000を採用したのは、適切な資格特性を確保でき(初期反射率60%以上)、耐候性(汚染回復性)、耐久性に優れているためだ。施工性もよく、下塗40~50μm、上塗50μmの2層塗りであるが、乾燥時間は最短で2時間程度でよく、1夜間で全工程の施工が可能だ。また、BMシートと重なる部分においても材料同士の相性が良いことから適切な接着強度を取ることができた。
 本現場では1日約500~600㎡ずつ施工し、4夜間で施工を終えている。

セラマックス#3000 上塗り状況
 設計は応用地質、元請は白陽化学工 業。一次下請は構造メンテ。

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