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19の橋種のうちから経済性や施工性、維持管理性などを加味して選定

北九州市 橋長233mの笹尾川渡河橋(仮称)にパネルブリッジを採用

公開日:2021.03.31

 北九州市は遠賀川付近一帯の慢性的な交通渋滞の解消、自動車産業が盛んな宮若市や鞍手町とのさらなる経済交流の活性化、北九州都市圏の広域物流ネットワーク機能の向上を図ることを目的として、都市計画道路八幡鞍手線の整備を進めているが、そのうち、一級河川笹尾川に架かる笹尾川渡河橋(仮称)の架設を進めている。同橋は橋長233.3mの鋼重1140.5tの鋼7径間連続合成床版橋(8主桁)であるが、①経済性、②構造性、③施工性、④周辺道路との接続性、⑤維持管理性などを勘案して19の橋種のうちからパネルブリッジ®を採用したものだ。(井手迫瑞樹)

橋梁側面図(北九州市提供)

同平面図(同)

上部工標準断面図および設計条件。耐候性鋼材を採用している
 パネルブリッジは従来PC構造の採用が多かった15~50m程度の中小径間橋が対象。工場において2本の主桁と底鋼板・I形鋼を一体化(Π形状)し、架設現場で地組立を行い架設する。架設後の作業は桁上から行うため、基本的に足場は不要となる。合成床版橋のため桁が軽量化できるほか、短工期化及び足場コストの大幅縮減が可能となる。中小河川の渡河橋はもちろん短工期化での施工が求められる跨線橋や災害復旧工事などで施工実績が増加している。
 北九州市がパネルブリッジ®を採用した理由も、「①最も死荷重反力が小さく下部工の負担が小さい、②経済性が最も優れている、③主桁を地組後一括架設できることからベントが不要、④工場で主桁と合成床版型枠を一体化するため、吊足場、床版型枠の設置撤去が不要、⑤橋台部の桁高を低く抑える(680~1,100mm)ことができ、取付道路の影響範囲が小さい、⑥7径間連続構造とすることで、走行性・耐震性に優れている」(北九州市)としている。

製作状況①(NC切断/ 主桁Ⅰ組立首下溶接/ 主桁I形鋼組立)(日本鉄塔工業提供)

製作状況②(主桁立体組立/ 主桁立体組溶接/ 主桁立体組溶接)(日本鉄塔工業提供)

製作状況③(仮組立/仮組立全景/ 主桁コンクリート接触面塗装中)(日本鉄塔工業提供)

 上部工架設は、濱田重工と、日本鉄塔工業が担当した。
 濱田重工が担当したのは、左岸側A1-P2の69.7m(鋼重370t)、日本鉄塔工業が担当したのはP2-P4の65.4m(304t)で、P4-P5も発注済み、P5-A2は未発注という状況だ。

上部工架設計画図(北九州市提供)
 まず製作である。パネルブリッジ®は「同規模の通常橋梁と比較して、材片数が少ないため、加工に要する時間が短縮できた」(日本鉄塔工業)。但し課題もあった。「主桁横つなぎ材(横桁、横リブ、横構)が無く、主桁横方向の剛性が無いため、溶接時の反転の際に別途補強材が必要となる場合がある。また、主桁鉛直度が安定しない場合、溶接後、仮組立時に数回の調整(矯正)が必要となる」(同)という点だ。

 そうした課題に対処して、精度を確保するため、床版パネル添接部のバルブプレートは、先行して主桁を仮組して取り付け、解体して溶接し、その後、再組立(本仮組)した。さらに中床版パネルの取り合いスタッドは、先行して仮組をおこない、床版位置確認後、解体して打接し、その後、再組立(本仮組)するなどした。

 施工フローは右表の通り。
 まず難しかったのは支承の設置である。今回、支承は8主桁の間に横桁を挟むため、1支承線に対し7基となり従来比同1基を減じることができる。その支承には機能分離沓を用いているが、桁の温度伸縮への対応が難しかった。「機能分離沓のうち鉛直沓は鉛直荷重を引き受けているが、機能分離沓は桁と沓の間がモルタルで固定されるまで、半ば桁に吊られている状態であり、特に夏場においては、朝据え付けても夕方には桁が伸びて温度変化で動くため、朝日が昇る前に測定し、モルタルで固定するようにした」(濱田重工)。
 桁は360t吊トラッククレーンで架設している。まず支承上に横桁を配置し、主桁1本につき延長方向で3つに分けられたブロックを現場で地組みし、1本ずつ架設し、横桁と接合し、落とし込みパネルを架設するという工程を繰り返す。
 
架設状況①(支承据付状況/横桁地組状況/主桁地組状況)

架設状況②(主桁地組完了/横桁架設状況/主桁架設状況)

 実際に架設した日本鉄塔工業は「π型断面であるため、急速施工が可能で、架設が容易。合成床版であることから、底部の型枠などが必要なく現地での木製型枠の施工手間に要する時間が短縮される。I型鋼が主筋であるため、現地での異形棒鋼の施工量が少なく、下鉄筋が不要であり、施工時間の短縮になる」と長所を挙げた。
 一方で「施工時には、ジャッキ操作による横桁の倒れ防止対策として、下フランジ支圧板と横桁との隙間(約50mm)にライナープレートを設置し施工した。橋梁規模に応じて、吊天秤の使用および仮設形状保持材の設置等の検討が必要と思われる」(同)といった課題を挙げている。

架設状況③(床版架設状況/鉄筋組立完了状況/コンクリート打設状況)

架設状況全景
 今後は残りの3径間を架設するが、低水路を跨ぐP4-P5間は、架設に要する旋回長が長いことから360tクレーンを最初は下流、次いで上流に据え付け直して架設する。A2側からクレーンを据え付けることはできないため、笹尾川に仮橋を架設し、それを使ってクレーンを移動させP5-A2間の架設も行う予定だ。(2021年3月31日掲載)

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