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LCCを3分の1に縮減 RC中空床版桁ボイド上の薄い部分でも増厚せずに適用可能

NEXCO中日本と鹿島建設 床版補修・補強用途に現場打ちUHPFRCを用いる工法を開発

公開日:2021.02.08

 NEXCO中日本と鹿島建設は、鋼床版やRC床版、RC中空床版桁の補修・補強用途に現場打ちタイプのUHPFRC(超高性能繊維補強セメント系複合材料)を用いる工法を開発した。UHPFRCは圧縮強度150N/mm2であり、比較的薄い打設厚でも通常のSFRC増厚や補修と同等以上の効果をもたらすことができ、なおかつ発生ひび割れ幅を0.2mm幅未満に小さく抑制できるため床版のライフサイクルコストを約1/3に縮減できると期待している。また、従来のUHPFRCは現場補修に使う場合、セルフレベリング性があるため橋梁の縦横断勾配に対応できないという課題があったが、今回開発したUHPFRCはチクソトロピー性に優れ、12%の勾配にも対応できる。鹿島建設の試験ヤードで、鋼床版(約20m)と切削したRC中空床版(約60m)を模擬し、相応の勾配(9%)を付けた施工試験を行い、一連の施工手順や所定の勾配対応能力、硬化後の品質を確認した。また、鋼床版、RC床版の供試体を使って輪荷重走行試験を行い、補修・補強効果があることも確認した。(井手迫瑞樹)


施工実験の状況写真および概要(鹿島建設提供、以下同)

 UHPFRCは、先述した圧縮強度、発生ひび割れ幅の抑制能力を有する他、ひび割れ発生強度10N/mm2、ヤング係数45~50kN/mm2、透気係数10-19m2、塩化物化物イオン拡散係数0.003cm2/年という性能を有する。通常のUFCに比べて含まれる鋼繊維の量は3vol.%と多い(通常は1.5~2%)。これはUHPFRCの引張強度を設計に活用するだけでなく、現場で打設する使い方であるため、様々な拘束によるひび割れリスクを減らすことを目的として繊維量を増やしたもの。


 UHPFRCの中には無機粉末を入れることでチクソトロピー性を向上させている。勾配が大きい個所には多く、小さい個所には少なく入れることで勾配変化への対応を可能にしている。硬化促進剤を入れる案も考えたが、「化学反応による性能の低下や可使時間の変化という悪影響を排除するためには、そうした副作用を引き起こさない無機系の材料で調整することがベスト」(鹿島建設)と判断した。12%という勾配は非常に大きく見えるが、これは「NEXCO設計要領で定められている最大勾配9.5%(最急合成勾配)に安全率を加味した上で出した性能」(中日本高速道路)ということだ。

 鋼床版や通常のRC床版にも使えるが、RC中空床版桁の上面補修への適用が期待できる。同床版形式のボイド直上の床版厚は40mm程度と薄い、そのため高い圧縮強度を有し、ひび割れも生じにくく薄層でも補修効果が期待できるUHPFRCは同構造に適した補修材料と言えるからだ。

鋼床版の輪荷重走行試験


 施工方法としては、劣化した部分をWJで斫り、斫った部分にUHPFRCを打設するというやり方が想定される。ただし、RC床版もRC中空床版も脆弱部にWJを施工する場合貫通してしまう可能性があることから、鹿島建設では「劣化状況の確認の上、コリジョンジェットなどで深さを制御しながら慎重に斫っていく必要がある」(同社)としている。また、「既設床版部はつり後は鉄筋が露出し、また塩化物イオンも多く含まれている可能性がある」(同社)ことから、UHPFRCのマクロセル腐食効果を明らかとしていない現在では、マクロセル腐食対策と付着強度をしっかりとるための方策として、シラン系含浸材やエポキシ樹脂系の接着剤を接着面に塗布して、SFRCと同じくコンクリートフィニッシャで打設する手法を想定している。


 UHPFRCは緻密な表層を形成するため、床版防水は目地以外省略することも考慮するが、鹿島建設では、NEXCO総研らが研究・開発した改質グースアスファルト(BLG)を基層として舗設することで、GⅡ相当の性能を有する防水機構として提案することも考慮している。
 今後は大規模更新等の実現場で試験施工を行い、実地での施工性や品質管理などを深化させていく。(2021年2月8日掲載)

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