クローラクレーン・ベント架設工法とトラベラークレーン架設工法を併用
国土交通省北陸地方整備局 妙高大橋架替事業 上部工架設が完了
350t吊と200t吊クローラークレーンを用いて架設
A1側の350t吊クレーンは谷下の市道脇に設置
架設① クローラクレーン・ベント架設
現場条件を検討し工期短縮を図るために、クローラクレーン・ベント架設工法とトラベラークレーン架設工法を併用してA1橋台側とA2橋台側の両方から中央部に向けて架設を行っている。
架設計画図(JFEエンジニアリング提供)※拡大してご覧ください。
クローラクレーン・ベント架設では、A1橋台~P1橋脚間に4基(B1~B4)、P1橋脚~A2橋台間に3基(B5・B6・B8)、合計7基のベントを構築した(計画では8基としていたが、クレーンでの地組架設が可能なため、B7ベントは設置せず)。A2側のB5、B6ベントは既設擁壁や市道があり、各点上にベントを構築することができないため、その間を跨ぐ工事桁(L=30m)を設置することで各点受けができるようにした。
B5~B6に設置した工事桁
杭基礎はダウンザホールハンマー工法を用いて打設していったが、B4ベントでは杭長が最長の19mに達した。ベント基礎工が完了した時点で、基礎に実際にかかる荷重をジャッキで押して仮想の支持力を全基で確認して安全を担保したうえで、ベント設備を立ち上げていった。
B2ベント(左)とB4ベント(右)の杭基礎施工
基礎とベント設備の構築では、B1~B4ベントは架設にも用いた350t吊クローラークレーンを、B5とB6は120t吊クローラークレーン、B7は200t吊クローラークレーン(架設にも使用)を使用している。なお、350t吊クローラークレーンは市道上を盛土して設置したことから市道を通行止めする必要があり、緊急車両などに配慮して迂回路を設けることとした。また、120t吊クローラークレーンは、設置幅が道路幅ぎりぎりで、かつ7%程度の斜路となっていたことから、設置箇所でクレーンを組み立てることができず、その下側の市道脇の空き地を借地して組み立てを行い、設置箇所に移動をさせた。設置箇所も盛土幅が最小にできるようにH鋼で土留めのうえ、盛土を行ってレベルにした。
2020年4月上旬から開始したベント構築は5月末に完了し、6月上旬からA1橋台側、同下旬からはA2橋台側の架設を開始した。A1橋台側は設計段階では橋台背面にクローラークレーンを設置する予定だったが、同時期に土工部の舗装工を行っていたため、谷下の市道脇に350t吊クローラークレーンを設置することにした。
350t吊クローラークレーンは谷下の市道脇で組立て、設置した
ラフティングを装着してブーム長72mとした350t吊クローラークレーンでは、A1橋台からB4ベントまでの7スパン(1スパン10.6m、合計約74m)を架設した。まず、2スパン分地組した下弦材と横構をB4ベントまで架設し、鉛直材、斜材、上弦材の順で1スパン分ずつ架設して、その後、横桁と縦桁などを架設していった。
A1橋台側からの架設
A2橋台側は橋台背面に200t吊クローラークレーンを配置して、B6ベントまでの3スパン(合計約32m)を架設している。7月下旬にはクローラクレーン・ベント架設が完了した。
A2橋台側からの架設
A1橋台側(左)とA2橋台側(右)からの架設状況
トラベラークレーンは650t・m級2台を設置
最大張出量は2スパン分約20m
架設② トラベラークレーン架設
トラベラークレーンでの架設では横桁の上に軌条設備を設置後、A1側のB4ベント上とA2側のB6ベント上に650t・m級を2台組み立てた。
トラベラークレーンの組立
重量は約60tで、ブーム長はA1側が約25m、A2側が約29m、吊上げ能力は最大35t(作業半径18.5m時)を有する。最大吊上げ時の反力を解析で求めるとともに、架設開始前には35tの125%となる約44tのクレーン用ウエイトを吊上げて、ベントの沈下や桁に異常がないかなどの安全性の確認を行った。8月上旬からA2側、A1側の順で架設を開始。
A2側はB6ベント上から工事桁を支保として2スパン分を架設後、トラベラークレーンをB5手前まで移動させて、2スパン分の張出架設を行った。A1側はB4ベント上からP1橋脚までの2スパンを架設し、P1橋脚上にトラベラークレーンを移動後、2スパンの架設をしている。
トラベラークレーンによる架設状況(真中右写真のみ:大柴功治撮影)
クローラクレーン・ベント架設では1スパンを平均6日で架設していったが、トラベラークレーンでは張出架設となるため、それよりも1~2日の時間を要し、P1橋脚部のスパンでは主構高が13mと高くなっているので、さらに2日程度の時間がかかっている。さらに、上弦材の架設では斜材2本と鉛直材の合計3本を順番にきれいに取り付けることに苦労し、「1本架設するのに約2時間、誤差が出てうまくいかない時は半日かかった」(元請のJFEエンジニアリング)という。
P1橋脚側のトラベラークレーンで閉合ブロックを落とし込み
閉合
閉合は9月24日に行われた。P1橋脚とB5ベントからそれぞれ2スパン分(約20m)張り出した地点でP1橋脚側のトラベラークレーンを約5m移動した箇所で閉合ブロックを落とし込んでいる。落とし込みに際しては、A2側の桁を約20mmセットバックし、トラベラークレーンが乗った状態でのたわみ量が7mmという設計時の解析結果に基づき、P1橋脚側とB5ベント側をそれぞれ10mm程度ジャッキアップした。B5ベント上のジャッキは橋軸直角方向にも調整ができるものを使用した。落とし込み後、セットフォアとジャッキダウンをして完了させた。
閉合に向けて最終架設作業
架設が完了した妙高大橋(新橋)
年内にベントと足場解体まで行い、冬期休工期間(12月下旬~3月)後に合成床版の架設を行う予定だ。
設計は、東京コンサルタンツ。元請は、JFEエンジニアリング。一次下請けは、金子建設(架設工)、米原商事(クレーン工)、薩摩重機工業(杭基礎)、丸喜興業(現場塗装)、上野土木(ヤード整備工)、蒼司工事(排水工事)、森田工業(支承モルタル工)など。
(2020年11月10日掲載 大柴功治)