中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事JVと栗本鐵工所
PCa壁高欄施工時の通信管内へのモルタル材の浸入を防ぐ「プレキャスト壁高欄通信管接合部材」を開発
JFE・MMB・川田・宮地・ピーエス三菱 中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事JVと栗本鐵工所は、西日本高速道路阪神改築事務所の協力のもと、PCa壁高欄施工時の通信管内へのモルタル材の浸入を防ぐための管路ジョイント「プレキャスト壁高欄通信管接合部材」を開発、実装した。(井手迫瑞樹)
NEXCO各社などが進める大規模更新工事においては、PCa壁高欄施工時の通信管内へのモルタル材の浸入を防ぐための管路ジョイントを検討することが急務であった。
雌シースと中子(栗本鐵工所提供、以下注釈なきは同)
「プレキャスト壁高欄通信管接合部材」は、PCa壁高欄内に予め拡径した雌シースを埋設した形で壁高欄を製作し、さらにシース同士をつなぐ「中子」と呼ばれる雄シースを片方の雌シース内にバネを仕込んだ形で入れておきストッパーで止めておき、壁高欄架設後、そのストッパーを開放することで雌シース間を中子がつなぐもの。中子の両端は水膨張性の高分子吸水ポリマー(おむつなどに使われる素材)を含んだ不織布で覆われており、目地モルタル施工時にその水分の一部を吸収して不織布が膨張することで、シースの隙間を埋め、通信管路内へのモルタル材の浸入を防ぐことができる。既に西日本高速道路の中国道御堂筋橋のPCa壁高欄の一部で適用され、効果が確認されている。中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事では、全部で59連の鋼桁架け替えを行うが、その過半の橋梁で規制期間におけるPCa壁高欄の路面上での施工が必要であり、「基本的にはこの管路ジョイントをPCa壁高欄の通信管路用シースの標準部品として適用されることを望んでいる。」(稲村康・所長)。
高速道路の大規模更新におけるプレキャスト部材同士の継ぎ目におけるシースの通りは高い精度が要求される。とりわけ、壁高欄内部には通信ケーブルなどを確実に挿入しなければならず、この施工、とりわけジョイント部に不具合が生じやすい。総じてPCa壁高欄は、床版から突き出るアンカーボルトに挿入する形で落とし込んで設置するため、ブロック同士の隙間は「10mm程度しかないうえに5条の管路を連続させるために、そこに継手部材を配置し、モルタルを管路に侵入させないように打設しなくてはならない」(稲村氏)ため、狭く、継ぎ目と管路の施工品質の確保が最も重要だ。
従来こうした箇所には、スポンジ材を配置し、モルタルの浸入を阻止していた。しかし「壁高欄の通りや高さの調整によってはスポンジ材が撚れてしまい、隙間が生じてしまう可能性がある。隙間が空いているかどうかは、目視で確認する術がない。万が一、ジョイント部から通信管内にモルタルが流入して硬化すれば、ケーブルを通すことができず、その範囲の壁高欄を撤去して、新しいPCa壁高欄を製作し、再設置しなければならない。特に大規模更新工事の限られた規制期間内にこうした状況が起きれば致命傷となる」(同)。この事象は施工実験を行った時に、従来のスポンジを使用した箇所で管路へ侵入しかけたことより、モルタルの浸入を確実に抑止できる手法が必要であった。
今回開発された「プレキャスト壁高欄通信管接合部材」は、幾つかの実験を行い、何度も改良を重ねてきたものである。壁高欄に埋設された外管と現場接続用の「中子」から構成されている。外管は内子がはまり易くかつ抜けにくいように二重に拡径されている。即ち内部の拡径は微妙に角度を有することで、施工時の中子のずれを吸収できるようにし、最外側はラッパ型形状にすることでより中子を入りやすくしている。埋設する外管の長さは非対称であるが、それは一方に中子を挿入する必要があるため、挿入部分は中子の奥に約10cmのバネが仕込まれている。施工時はそれを小さな板状のストッパーで飛び出さないように抑えている。両側の壁高欄設置後に、そのストッパーを外して開放すると、バネが働いて中子が飛びだし、もう一方側の外管とつながるという機構だ。
中子は中央に黄色のシールを巻いており、これを施工者が目地部の上面から確認することで目地間の継手が想定通りできているか否かを目視で確認することができる。万が一、挿入出来ていなかった場合でも上面から鋼製の機材を用いて突くことで、はみ出た内子を挿入することができる。円状に±5mmの誤差であれば吸収可能。これは水膨張性機能を持った不織布を使っているためで、モルタル内に含んだ水を吸収して不織布が膨張するため、±5mmの誤差であれば、その膨張によって隙間を埋められるということだ。
実際の試験施工状況①(JV提供)
中子を押し出すバネ/実際の試験施工状況②(JV提供)
今回の御堂筋橋では、PCa壁高欄にPGF(プレキャスト・ガードフェンス)を採用しているが、そのうちの1目地(PCa壁高欄2ブロック分)にプレキャスト壁高欄通信管接合部材を用いて施工した。施工時に問題は生じず、さらに施工後CCDカメラで確認した結果、グラウト材の侵入も無く性能上も問題がないことを確認した。
「上部工施工業者として、この機構は今後の通信管路を有するPCa壁高欄の施工においても適用が広がってほしいと思う」(同JV)と話している。