掘削、運搬、排土を自動化された6台の掘削重機で行う
オリエンタル白石 ニューマチックケーソン工法 ケーソンショベル自動運転システムの実証実験を実施
オリエンタル白石は、ニューマチックケーソン工法でのケーソンショベル自動運転システムの現場実証実験を今年2月に、京都府発注の「桂川右岸流域下水道 洛西浄化センター建設工事(呑龍ポンプ場土木)」で行った。施工者は、オリエンタル白石・金下建設・ケイコン特定JV。同社では、労働者不足に対処するための省力化や生産性の向上のために、2013年4月から千葉工業大学と、さらに2018年4月から株式会社システム計画研究所と共同で同システムの開発に着手し、今回の実験では6台のケーソンショベルを用いて、掘削、運搬、排土の自動運転実験を実施した。
ニューマチックケーソン工法は、地上でコンリート製構造物(躯体)を構築して、躯体下部の作業室に地下水圧と同等の圧縮空気を送り込むことで地下水の侵入を防いでドライな環境で掘削・排土を行いながら、躯体を地中に沈めていく工法だ。
ニューマチックケーソン工法の概要(オリエンタル白石提供。以下、同)
橋梁基礎工事やシールド立坑工事で採用されてきたが、近年、集中豪雨による河川の氾濫や洪水が相次いでいることから、都市部を中心に貯水施設の建設が増え、その現場での採用も増加している。貯水施設はその躯体規模が貯水能力となることから大断面が多くなっていることも特徴だ。
実験の現場となった呑龍ポンプ場は、桂川右岸に建設される雨水トンネルの最下流端に位置し、雨水トンネルに貯留した雨水を桂川へ放流するためのポンプ場で、面積は1,678m2(奥行39.5m×幅42.5m×深さ42.7m)である。
躯体下部の作業室には6本のレールに転架されたケーソンショベル(掘削重機)が12台配置された(レール1本に2台)が、このうちの4レール6台を自動運転の実験対象とした。
自動運転計画図
これまでは地上の作業室から熟練したオペレーター(潜函工)がケーソンショベルに取り付けられたカメラ映像を見ながら、1台ずつ遠隔操作で、連携を取って作業を行ってきた。そのため、12台では12人のオペレーターが必要だった。同社では「このシステムにより、2台のショベルを1人のオペレーターで運用できることを目標に開発を進めている」 (技術本部技術部機電チーム・近藤俊宏チームリーダー) という。
自動運転する掘削重機には、各関節に走行距離計や旋回エンコーダ、バケット流量計、ブーム距離計などの各種センサが搭載されている。これらのセンサ情報を逐次取得することで、位置や作業状態を把握する。さらに、地盤の三次元形状をリアルタイムに取得できる「LiDARセンサ」の搭載により、指定範囲の土山を認識できるようになっている。
自動化された掘削重機
自動化された掘削重機に設置されたセンサ
これら個々の掘削重機の情報を地上に設置した統合PCに送り、作業室全体の地盤形状の「3Dマッピングデータ」を自動で作成。そのデータからネットワーク化された複数の掘削重機が、それぞれの対象を自動で認識するとともに、衝突しないように1台1台の動きを制御する自動運転を実現した。
3Dマッピングデータ/複数の掘削重機の行動計画
自動運転システム稼働中の様子
今回の実験では、6台の掘削重機がオペレーターのほぐした地山(ほぐし土)を掘削して、土砂を地上に排出するアースバケット近くの排土指定地まで運搬のうえ、排土していった。作業の質にばらつきは見られたものの、実験の目的であった「圧気のかかった実際の現場環境で、複数台の掘削重機を用いて、地盤の三次元地図をリアルタイムに作成したうえで、掘削計画を自動で立て、互いに衝突を回避しながら土砂を指定の位置まで運搬し排土する」ことは達成している。
稼働の様子
自動運転の掘削重機が稼働しているときは、オペレーターが動かす掘削重機は停止させたが、混在して動けるシステムの開発にも着手しているという。自動運転システムの短期目標では、上記に加えて、「アースバケットへの土砂積込みの実現、硬い地盤を掘削するための技術開発」(同・亀井聡主任)を挙げている。それらの実現後には、処理能力を人間レベルまで引き上げ、長期的には技術的難易度が高い側壁周辺の掘削を実現したいとしている。また、橋梁基礎工事でも本システムの有効利用を検討していくという。
オリエンタル白石を含むOSJBホールディングスグループでは、今年度からの5年間で生産能力向上や生産体制強化および研究開発に、総額200億円の投資を予定している。オリエンタル白石が日本で最初に導入したニューマチックケーソン工法の自動化は、その最重要テーマのひとつとして取り組むことになる。さらに、IoT・AI技術によるケーソン挙動管理と予測のためのシステム開発も行う。そのほか、プレキャストPC橋桁工場の製造能力強化、グループ内の技術継承のための教育訓練・実験施設の建設などを進めていく。
(2020年8月25日 大柴功治)