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疲労フリー鋼床版、FFPなど新技術を採用

NEXCO西日本 御堂筋橋で既設鈑桁を新設鋼床版鈑桁に取替え

公開日:2020.08.24

構造詳細② 壁高欄 
 壁高欄には、コンクリート製防護柵としてプレキャストガードフェンス(PGF)の路肩用壁高欄タイプを採用し、鋼床版のデッキプレートに貫通させたアンカーボルトで定着させている。壁高欄の1ブロックは長さ4m(3t)。橋桁端部は端部ブロック(3.7m、2.8t)を製作した。橋台上は現場打ちであり、土工部側壁高欄との擦り付けを行った。


PGF壁高欄

 PGFのブロック同士は目地部にモルタルを充填し、硬化後にPC鋼材で緊張・固定している。鋼床版上へのPGF設置は初事例であるため、事前に実物大部分模型試験体による衝突載荷試験を実施して定着部の耐荷力を確認すると共に、事前に実物大試験体による施工性の確認も実施した。鋼とコンクリートとの異種剛結のため、壁高欄地覆部と鋼床版にシームができてしまい、そこからの水の侵入を防ぐため、止水プレートを配置する構造とした。

構造詳細③ 路面の凍結抑制舗装の採用
 鋼床版上の基層舗装(厚さ40mm)はグースではなくFB5(橋梁用レベリング層用混合物)を採用している。また、基層との間には防水工(スーパーフレッシュコート)を配置し、路面からの水の浸入に備えた。基層に5mmトップの骨材を用いたのは、「鋼床版上はボルト頭部が出ている箇所もあり、そうした(舗装厚が)薄くなる箇所でも骨材が回るようにするため」(同社)。また、表層(厚さ40mm)にはフル・ファンクション・ペーブ(多機能型排水性舗装)を採用している。混合物一層で表面付近(15mm)は排水機能、下部はSMA(砕石マスチック舗装)の防水機能を持つ縦溝粗面型ハイブリッド舗装であり、メカニズムを改良したフィニッシャでの施工により、路面のキメ深さを確保できることから、凍結防止剤が簡単に流出しなくなり、凍結抑制効果が持続できる。鋼床版上はコンクリート床版上と比較して凍結しやすいことから、今回試行的に採用したもので、今後、効果検証を行い、取替用鋼床版への採用を目指す方針だ。


スーパーフレッシュコート/FB5(基層)

フル・ファンクション・ペーブ(FFP)

 防水工施工前はショットブラストで研掃している。内訳は投射密度100㎏/㎡。面積は528.9㎡。研掃に4時間かけた後、防水工を8時間かけて施工し、1日養生後、舗装を施工した。

施工① 撤去
 桁ごと更新するため既設床版の撤去は桁間のみを切断するだけよい。桁直上のコンクリートは桁ごと撤去していく。100tオールテレーンクレーン2台と550tオールテレーンクレーン2台を使って撤去していく。まず6月12日夜に中央径間部の壁高欄を切断撤去し、13日昼に中央部の床版を撤去、さらに13日夜に550tクレーン2台で側径間部の桁と高欄を撤去した。切断は両側の壁高欄と地覆および主桁中央部を湿式ワイヤーソーで施工した(壁高欄は吊切)。床版は、予め下に受金具を設置した上で、概ね重量を5tになるよう直角に割り付けて切断撤去した。斜角を有するため端部のみ8.4~9.8tの重量となる。次いで14日には側径間の主桁を両側に配置した550tオールテレーンクレーンでそれぞれ撤去し、次いで15日に中央径間の主桁を両側のクレーンで相吊りして撤去した。撤去した桁は、側径間については撤去した桁を現地で切断し10tトラックで運搬した。中央径間は反対車線に配置した多軸式特殊台車に載せてヤード内運搬したのちに桁を現地で切断し10tトラックで運搬した。


床版撤去ステップ図①、②

床版撤去ステップ図③、④

床版撤去ステップ図⑤

壁高欄の撤去状況

中間部の床版撤去状況

相吊り撤去/撤去した既設桁を多軸式特殊台車に積み込む

施工② 架設
 架設も撤去時同様、550tオールテレーンクレーンを橋桁の両端部外側にアウトリガーをいっぱいに張り出した形で配置して施工した。まず、16日夜間に下り線のA2側に地組した中央径間の鋼床版鈑桁を多軸式特殊台車で下り線のP1~P2上に2本ずつ運び、撤去時同様相吊りして架設した。

架設ステップ①(相吊り架設)

架設ステップ図②、③

相吊り架設(近景)

相吊り架設(遠景)
 次いで17、18日の両夜間には、両端部に地組した鋼床版鈑桁を2本ずつ、2夜間に分けて同クレーンでA1-P1、P2-A2同時に架設していった。但し側径間の主桁間には、架設時の桁間の干渉を避けるために、鋼床版1パネル分(1.8×8.7m(6.8t))の隙間を作っており、2日目に主桁を架けた後、その部分を落とし込んだ。落とし込み工法を用いたのは新御堂筋夜間通行規制解除遅延リスクを考えたもの。添接板を鋼床版に取りつけることにより、万が一の落下防止措置となり通行止め規制後の架設が可能になるためだ。


両端部に地組した鋼床版鈑桁を2本ずつ、2夜間に分けて架設

落とし込み桁の架設

 19日以降はPGF壁高欄と桁間のジョイント(今回はSEFジョイント)を設置した後、鋼床版上を研掃し、舗装そのほかを施工し、28日午前5時に供用を開始した。


SEFジョイントを採用した

今後
 御堂筋橋を含めた関西支社内の中国道・近畿道の橋梁は1970年3月の大阪万博に間に合わせるため、設計から施工までの期間を約3年で完了させる必要があり、省力化・大量生産による対応が求められた。省力化の最たるものが桁高の抑制や床版支間を長くとることができる鋼合成鈑桁の採用である。同支社管内の鋼鈑桁で床版支間が4mを超える橋梁は今回、施工範囲となる中国道吹田JCT~中国池田IC間が実に253径間中192径間と4分の3強を占めている。同区間についていえば、床版支間4m以上は実に96%に達する(すなわち8径間しか支間4m未満の床版はない)。他路線は名神・近畿道で同2.5~3.3m、西名阪道で2.9~3.5mであり、中国道の状況が際立っている。
 また当初設計の床版厚は最小で160mm(床版支間1.6mの場合)であり、床版支間4mの場合210mmで補完している。さらに上面増厚を施している場所もあるが、同区間の標準増厚は30~40mmであり、非増厚であれば現行道示で必要とする厚さの7割程度しかなく、増厚をしてもなお、1~2割程度足りない計算となる。
 一方、桁高を抑制するため、鋼重を最小化した設計の単純合成桁(SM58やF11T高強度材を採用し、支点上は山形鋼を使用した垂直補剛材を用いている)や切断合成桁(鋼材や高力ボルトは単純合成桁同様)を使い、鋼重や桁高を抑制している。単純合成桁は、昭和56年構造物標準図集Ⅱ(非合成桁タイプ)に比べると桁高は実に半分強まで低くしている。床版支間は5割強長く、鋼重も3割弱低減している。また、切断合成桁は当時の切断合成桁の標準設計と比較してもなお、桁高を3分の2に抑制し、鋼重も15%強軽くしている。
 しかし、経済設計は、交通量や活荷重の劇的な増加とともに損傷が生じてくると共に、際限なく補強量を必要とするというデメリットを生じせしめた。鋼単純合成桁や切断合成桁を有する豊中高架橋や宮の前高架橋がそれで、宮の前高架橋は以前にも切断合成桁に生じたたわみに対応するため、下から新しい橋脚で突いて補強する、アウトケーブルで補強する、上下面に増厚する――などの補強を行ってきたが、今後の大規模更新において桁ごと取り替える選択を行う予定だ。

 御堂筋橋は、まさにそうした橋梁の試金石たる現場といえる。

 元請はJFEエンジニアリング・エム・エム ブリッジ・川田工業・宮地エンジニアリング・ピーエス三菱JV。一次下請は平野クレーン工業、コンクリートコーリング、立共建設、世紀東急工業、山九。(2020年8月24日掲載)

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