床版の撤去・架設は250tトラッククレーンを用いる
400H型鋼2本をクレーンのアウトリガーの緩衝材として設置
床版の撤去・架設は250tトラッククレーンを用いた。クレーンの設置に当たっては4主桁の両外桁にアウトリガーを配置するが、トラスの上弦材は鈑桁と異なり桁高は低く、板厚も薄い、その直上にアウトリガーを直接載せると桁への負担が大きいため、400H型鋼2本をトラスの格点部を結ぶ形で緩衝材として2列(1本(アウトリガー1箇所当たり)5.5m長)配置し、その上にアウトリガーを載せてクレーンを運用した。
床版の撤去・架設は、小矢部側から金沢側、すなわちPCI桁側からトンネル側に250tクレーンを使って片押しで施工していった。
床版割付図
床版取替計画図
P1支点上は上フランジの厚さが12mmしかない
桁間を先行して切断および吊撤去
基本的に既設床版を橋軸方向に2.2m、橋軸直角には半割にする形で5m(重量は約9.5t)ずつにコンクリートカッターで切断し、センターホールジャッキを使って剥離し、250tクレーンを使って吊り上げ、クレーン後方に配置したトラックに積載して搬出した。その後に桁上フランジ上面に残ったジベルを溶断し、グラインダーなどで研磨して塗装した後、スタッドジベルを設置し、2.35×11mの壁高欄付きPCaPC床版パネル(1枚20.5t)を架設していった。1日当たりの施工量は既設床版パネルを6枚(半割のため、全幅換算すると3枚分)撤去し、新しい床版を3枚架設することを繰り返した。
通常部の床版切断(左写真のみ井手迫瑞樹撮影)
通常部はセンターホールジャッキで床版を桁から剥離させてクレーンで吊り上げて撤去する
主構直上のコンクリートはブレーカーにより斫る
床版下面突起部のパネルのみ、壁高欄を現場打ち
基本的にと注釈をつけたのは、一部で既設床版を撤去するための工夫が必要であるからだ。即ちP1支点上の12枚(新設パネル換算6枚分)がそれに該当する。同橋の主構上弦材フランジは、基本的に25mm厚であるが、当時の設計によりP1橋脚支点近傍のみ12mmと板厚が半減しているのだ。通常のセンターホールジャッキによる床版の剥離では桁を傷める可能性が高く、同部分のみは桁間を先行して切断および吊撤去し、主構直上のコンクリートはブレーカーにより斫った。この施工には6日間を要した。
P1支点上の12枚は上フランジの厚さが通常の半分以下のため、桁間を先行して切断および吊撤去した
残った上フランジ上のコンクリートを斫り落とす。やり方は合成桁の切断撤去手順に似ている
床版の撤去は概ね昼間に施工し、上フランジ上面のケレンや塗装および養生を夕方から行い、翌午前中に新しいPCaPC床版の架設を行うというサイクルを繰りかえした。
ケレン作業/足場を工夫し段差を1.5m以内に収めたことで安全帯を付けずに作業することを可能にした
床版架設状況
測量基準線に合わせる/シースの設置(中、右)
接続用シース/スープロストランド(井手迫瑞樹撮影)
床版継手は縦締めPC鋼材による緊張
PCaPC床版のパネルの継手には、PC鋼材を用いた縦締め緊張を採用した。間詰工の手間を減らすことによる工期短縮と、間詰幅を減らすことによる耐久性向上などを期待して採用した。緊張工は1径間ごとに施工している。PC鋼材はスープロストランド(φ21.8㎜)を最大47本配置し、防食機能を高めると共に、床版厚を220mmに薄く抑えた。ただし両端の場所打ち部床版部のみはPC定着部を設ける必要があることから270mmと厚くしている。床版架設後、間詰モルタルを打設し、縦締めPCを緊張し、床版と桁を、無収縮モルタルを打設して一体化した。PCaPC床版受入時にシースの仕口が図面位置通りである事を確認、実際のPCaPC床版架設設置についても測量基準線に合わせることで縦締め時のシースの仕口合わせは素直に接続出来た。
縦締めPC鋼材配置図
縦締めPC鋼材の挿入
PC鋼材の緊張作業(左:端部、右:中間定着部)
施工前の間詰部/端部に配置されたシール材/間詰部無収縮モルタルの打設
打設・養生後の間詰部/PCグラウト充填状況
スタッドの溶植/スタッド部に無収縮モルタルを打設する
打設に際してのノロ止めは一般的なシールスポンジを用いている。その後場所打ち床版部の配筋及び打設、伸縮継手部の施工を行うが、伸縮継手両側や桁端部の場所打ち部は横締めPC鋼材を用いて緊張した。次いで、床版下面突起部のパネルのみ、壁高欄を現場打ちした。
横締めPC鋼材の緊張
床版防水はニチレキのHQハイブレンAU工法を採用
野田クレーン、トラスト工業など経験豊富な下請け使う
床版防水・舗装
床版防水は、GⅡを採用、ここではニチレキのHQハイブレンAU工法を採用した。次いで舗装基層(FB13)を40mm、表層には高機能舗装Ⅱ型を採用して施工した。床版防水は3日、舗装は2日で施工を終えた。
床版防水施工状況
舗装工
ほぼ完成した状況
現場へは2月に入り、足場(ここではSKパネルを用いた)を設置した後、ヤードでの壁高欄打設、交通規制を経て、8月7日までに橋面上で施工する必要がある全ての工程を終えた。通常の鈑桁より難しい鋼トラス桁上の施工ということもあり、「北海道の大野橋床版取替工事など大規模更新の経験を有する技術者を配置した」(元請のドーピー建設工業)。また、「大規模更新の経験が多い一次下請として野田クレーンに撤去・架設を一元化した。またその下請けにはこれまた経験豊富なトラスト工業に来てもらっている」(同社)、現場での対応力や施工効率の向上に努めている。他、一次下請は舗装・防水工が北川ヒューテック。ケレンおよび塗装が下東建設。(2020年8月20日掲載)