道路構造物ジャーナルNET

床版架設前に壁高欄を構築するフルキャスト壁高欄で工程短縮

NEXCO西日本 中国道・大谷橋で半断面床版取替工法を採用

公開日:2020.08.12

フルキャスト壁高欄採用で床版と同時架設
 2期施工は場所打ち壁高欄

 ピーエス三菱が開発したフルキャスト壁高欄は、床版同時架設タイプのプレキャスト壁高欄で、現場施工の大幅な省力化を実現することが特徴である。高欄接合部はせん断キーを用いて荷重を伝達する構造で、架設後に目地部にモルタルを充填して接合が完了するので、現場でのコンクリート打設も不要だ。フルキャスト壁高欄の採用はNEXCO西日本管内では初めてである。


フルキャスト壁高欄 構造概要(左)/床版と同時架設で大幅な省力化を実現する(*)

 2期施工は場所打ちの壁高欄としている。1期施工と比べて規制期間を長く設定できることや、横締め緊張(ポストテンション方式)PC鋼材定着部の箱抜きが不要とできること、通信管路や遮音壁のアンカーへの対応などを考量して、場所打ちとした。

継手は最小床版厚を220mmできるMuSSL工法を採用
 底型枠も不要で工程短縮も

継手構造と場所打ち部など
 継手部は、ピーエス三菱の保有技術であるMuSSL工法(Mutual-Settled Secure Lap method)を採用した。同工法は、従来のループ継手と同様にあご付形状版を使用しながらも接合部の底型枠が不要で、床版厚を最小220mmにできるとともに、型枠工の省略により工程短縮が図れる特徴を有している。継手構造は、鉄筋の付着力と円形ナットの支圧力で応力を伝達するものとなっている。
 既設床版は増厚後240mmとなっていたが、建設時は200mmであり、新設のプレキャストPC床版も建設時の厚さに近い220mmとしたため、同工法での施工となった。


MuSSL工法 継手構造(左)/大谷橋の継手部

 間詰めコンクリートの打設幅は440mm。伸縮装置後打ち部を含めた場所打ち部のコンクリートは早強セメントで、中国道の凍結防止剤散布量を考慮して遮塩効果の高い高炉スラグ微粉末6000(強度発現が早く高強度コンクリート用として主に使用されている)を50%置換したものを採用し、強度は50N/mm2、スランプ15cmとなっている。継手部の鉄筋はエポキシ樹脂塗装鉄筋を使用している。


間詰めコンクリートの打設

 床版防水は高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、「ノバレタンES(A)床版防水システム工法」で443m2を4日間で施工した。舗装は、基層が橋梁レベリング層用アスファルト混合物(FB13)、表層は高機能舗装Ⅰ型で、2日間で完了させている。


防水工の施工

舗装の施工

1期施工(右側)完了

 足場はSKパネルを採用しているが、床版取替後に鋼製支承からBP支承への取替工(上下線で32基)を行うため、橋台と橋脚周りのみは吊りチェーン間隔が広いクイックデッキを使用している。


足場はSKパネルに加え、橋台と橋脚周りでクイックデッキを採用した

 元請はピーエス三菱。一次下請けは、光南(架設工)、コンクリートコーリング(カッター工)、アマノ(仮設防護工)、東京鋪装工業(舗装工)、富士テック(ライン工)。
(2020年8月12日掲載 大柴功治)

【関連記事】
NEXCO西日本 前川新社長インタビュー

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム