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FC船による相吊架設とジャッキ搭載台船による架設を実施

東京都 隅田川テラス連続化事業でステンレス橋2橋を架橋

公開日:2020.05.29

現場条件により架設では2工法を採用
 月島川水門橋がFC船架設、大島川水門橋が台船+テーブルリフト架設

架設
 桁架設は、月島川水門橋がFC船、大島川水門橋が台船+テーブルリフトによって行われた。架設工法が2橋で異なったのは、①大島川水門橋の架設桁重量が月島川水門橋の架設桁の約2倍となっており、月島川水門橋架設で使用するクレーンでは能力が不足すること、②月島川水門橋の桁下間口が約15mで、大島川水門橋架設で使用する全長25mの台船では架設位置まで進入が不可能なこと、が理由だ。


月島川水門橋 架設ステップ図(計画)


大島川水門橋 架設ステップ図(計画)

月島川水門橋
 月島川水門橋の架設桁は桁長39.4m、重量約58t。千葉県内のヤードから450t吊FC船を用いて架設桁を1,500t積台船に積み込み、8日に浜出しを行った。架設現場には東京湾から隅田川を遡上して、14日に到着した。


地組が完了した架設桁/千葉県内のヤードから浜出し

 架設は月島川を航路通行止め、隅田川に警戒線を設置して15日午前に行われた。200t吊FC船を2隻並べて相吊架設で行ったが、これはFC船が隅田川を遡上するにあたって途中にある勝鬨橋の桁下クリアランスが小さく、200t吊FC船が通過できるぎりぎりの大きさだったからだ。計画時の桁下とFC船のクリアランスは30cmとなっていた。
 9時30分ごろから玉掛けを開始し、所定の位置まで吊上げて、9時45分ごろには台船が退出。


200t吊FC船を2隻並べての相吊架設(*)

 相吊状態のまま、A1橋台側(下流側)を最初に寄せてA2橋台側も位置調整しながら、吊上げ位置から32m前進して、10時10分ごろに架橋位置に到達させた。A1、A2ともに架設桁との遊間が50mmしかなかったため、慎重に落とし込みを行い、10時30分過ぎには架設を完了させた。



橋台との遊間が50mmだったため、慎重に桁を寄せて落とし込んでいった(*)

架設完了。中央部の拡幅がよくわかる(*)

 架設にあたっては「安全および架設に影響がないよう、玉掛用具に不備がないか2段階の点検を行った」(元請の矢田工業)ほか、「(相吊架設で)クレーンのオペレーターが2人となるが、打ち合わせ時に段取りをすべて決めて、決めたこと以外は行わないことで、問題を起こさないようにした」(架設担当のどき)という。


勝鬨橋および対岸からの月島川水門橋(*)

大島川水門橋
 大島川水門橋の架設桁は桁長47.3m、重量約109t。月島川水門橋と同様に21日に浜出しを行い、22日に江東区の辰巳埠頭で1,500t積台船から架設台船(250t積ユニフロート)に架設桁の積替えをして、架設当日の23日8時30分ごろに出港、12:00前に現場に到着した。なお、勝鬨橋通過時の桁下と架設桁のクリアランスは150cmだった。


大島川水門橋の架設桁浜出しと辰巳埠頭での架設台船への積替え

 架設設備は、台船上に1台あたり最大昇降能力250tを有する「スーパーテーブルリフト」2台を設置している。

架設桁と架設台船の概要図

最大昇降能力250tを有する「スーパーテーブルリフト」2台を使用(*)

東京湾の潮位が上げ潮で計画時の設定高さAP+1.3mになるのを待ち、15時30分ごろから架設作業を開始した。大島川水門下に設置したシンカー(反対側の隅田川側にもアンカー2本を設置)と台船をつないでいるワイヤーケーブルを台船上のウィンチで巻き取り、台船を約20m大島側水門側に牽引。牽引前には1回目のジャッキアップを行い、牽引が完了した16時10分ごろに2回目のジャッキアップを行った。ジャッキアップ量は合計で2.1mだった。



潮位にあわせて作業を開始。ジャッキアップを行う(下3枚写真=*)

 その後もシンカーを用いて約20mを牽引してA2橋台側(上流側)から寄せていき、架橋位置に17時ごろに到達させた。月島川水門橋と同様にA1、A2ともに架設桁との遊間が50mmしかないなかで、支承の位置を合わせながら慎重に0.6mのジャッキダウンを行っていき、さらにレバージャッキを用いて微調整しながら、17時30分過ぎに架設を完了した。


A2橋台側(上流側)から寄せていく(左2枚写真=*)

A1橋台側(*)


A2側(左)とA1側(右)で微調整を行いながら桁を下ろしていく(下2枚写真=*)


架設台船が退出し、架設完了(上2枚写真=*)

隅田川テラスの整備延長は46.6km
 支川の合流部で分断されていた隅田川テラスを架橋で連続化

隅田川テラスおよび隅田川テラス連続化事業
 東京都では、隅田川において大地震による安全性をより高め、地域環境の向上を図るため、順次スーパー堤防等の整備を実施していて、これに先行して防潮堤全面の地盤改良等による耐震対策を目的としたテラス整備を行っている。2018年度までの隅田川テラスの整備延長は46.6kmとなっている。
 今回の月島川水門橋と大島川水門橋の架橋は、支川の合流部で分断されていた隅田川テラスを人道橋でつなぎ連続化することで、水辺の利便性と回遊性を向上させることを目的としたものだ。現在、テラス橋で供用しているのは清澄排水機場部に架かる橋梁のみで、架設が完了した月島川水門橋と大島川水門橋は今後、スロープ工などの工事を行い、まずは月島川水門橋から供用する予定だ。隅田川テラス連絡橋では、このほか堅川水門部に同じく主部材をステンレス鋼とした橋梁(橋長約35m、有効幅員3m)が予定されていて、今年度発注予定となっている。

 設計はパシフィックコンサルタンツ、桁製作・上部工工事元請は矢田工業
(2020年5月29日掲載 大柴功治)

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