主桁などについて、ひびわれ補修工、表面含侵処理工等を施工
姫路河川国道 ASRや塩害、グラウト充填不足が顕在化している国道2号曽根高架橋の補修
3.補修
こうした度重なる調査を行った上で、現在はP16橋脚とP1~P31の上部工補修を行っている。主なメニューは上部工のひび割れ補修、コンクリート保護工、P16の補修工である。上部工は主桁と高欄の補修であるが、補修に当たっては、桁と高欄で詳細調査を行った上で対策工を決定した。まず壁高欄は、反応性骨材(微小石英(凝灰岩)、火山ガラス(安山岩))は検出されたもののアルカリシリカゲルは検出されなかった。かぶり調査では、大半の個所で当初の設計かぶり(27.5mm)を下回っており、平均値で19.4mmという薄さであった。そのため中性化の進展により鉄筋が腐食したことが損傷の主要因と考えられた。鉄筋防錆や断面修復を施したうえで、かぶり分の耐久性確保と剥落防止工を兼ねて『ハイブリッドシート』による補修を施した。
次に主桁(右図は断面図)である。主桁ではアルカリシリカゲル及び反応性骨材(微小石英(凝灰岩)、火山ガラス(安山岩及び玄武岩等))が検出された。変状の出方はまちまちであるものの、「現時点で変状が著しい桁は膨張が終息している可能性が大きく、同じ径間でも変状が少ない桁は将来的に骨材膨張を引き起こす可能性が大きい」(同事務所)。試験体を抜いて一軸圧縮強度試験および静弾性係数試験を行った結果、一部で設計基準強度ないし標準値を下回った。一方塩化物イオン量は凍結防止剤散布の影響や内在塩分により高い箇所もあるが、腐食膨張を招いたような可能性がある箇所は散見されなかった。また、間詰コンクリートも広範に損傷が見られた。加えて主桁(P1~P22)のグラウト充填状況を削孔調査した結果、対象1,566箇所中、小さい空隙がある箇所が118箇所、大きな空隙がある箇所が175箇所、未充填箇所が96箇所あり、対策が必要な大きな空隙ないし未充填箇所は全体の約13.9%に達していることが確認された。但し大きな錆が生じている個所はなかった。
主桁におけるグラウト充填状況 左:良好部、右:不足部(CCDカメラにより撮影)
詳細調査の結果、ひび割れ補修工が、当初想定の3倍強に増加するなど、押並べて補修数量は増加した(下表)。表面含浸工は、ひびわれが多く比較的損傷が進行していると認められた箇所については『プロテクトシルCIT』、ひびわれが少ない箇所については『プロテクトシルBHN』と使い分けることで、コストの適正化を図っている。
主工程の施工位置図
主桁ウエブおよび間詰コンクリート部へのひび割れ補修工
また、横締め突出防止工は全箇所でアラミド繊維シートによる防止工を施した。グラウトの再充填工については、未充填箇所をマーキングした上で次年度以降に対応していく方針だ。
横締め突出防止工施工状況/完成状況(右写真のみ井手迫瑞樹撮影)
グラウト未充填箇所のマーキング(井手迫瑞樹撮影)
P16橋脚については現場で破断した鉄筋をフレアー溶接により繋ぎ、亜硝酸リチウムを配合した厚付モルタルによる断面修復した。損傷原因としてはここもかぶりの少なさが主因と言えそうだ。頂部は129mmと相応にあるが、側面部は最小で54mm程度しかなく、ここからひび割れが生じて水が入り込み、鉄筋破断が生じたと考えられる。
懸念材料は橋脚梁部のコンクリート保護仕様だ。P16橋脚は、平成29年度にシラン系含浸材による表面含浸工としているが、その前はコンクリート保護塗装を施しており、これが損傷の発見を遅らせる一因となった。他の橋脚もコンクリート保護塗装を行っており、P16のような損傷は出ていないとしているが、曽根高架橋の上部工は全て単純桁であり、ジョイントの止水機能が劣化すれば当然そこから水が供給される。また保護塗装仕様のため、内部の水分は排出されにくく、ASRが出やすい条件が揃っている。P16はモニタリングを実施して行くとしているが、「その他の橋脚梁もモニタリングないしシラン系含浸材への保護仕様の転換が必要ではないか?」との記者の問いかけに「検討して行きたい。」(同事務所)と語っていた。
補修が完了したP16 橋脚/梁には含浸材を塗布している(井手迫瑞樹撮影)
他の橋脚は表面保護塗装を施しているが……(井手迫瑞樹撮影)
設計は橋脚補修がオリエンタルコンサルタンツ、上部工補修が長大。元請はショーボンド建設、山下建設。(井手迫瑞樹、2020年3月7日掲載)