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耐震性能2(b)、フレックス工期、若手育成型プロポーザルなど導入

NEXCO中日本名古屋支社 対象橋梁の耐震補強2021年度完成に向け耐震補強設計業務を大幅に簡素化

公開日:2020.02.24

 NEXCO中日本名古屋支社は、1月16日に耐震補強設計業務に関する事業者向け説明会を開催した。同社は、政府の地震調査研究推進本部が公表している「全国地震動予測地図」に基づき、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域にある橋梁について、2021年度までの早期の耐震補強完了を目指しているが、同支社内では工事着手前に行わなければならない耐震補強設計業務が、2018年度で27件中11件、19年度で62件中55件もの不落が発生しており、未対策橋梁252橋のうち設計が完了しているのは52橋に留まっている。そのため、①耐震補強設計業務の設計内容の大幅な簡素化、②フレックス工期の導入などを図るもの。同支社では今回の見直しを「21年度内に全橋梁について対策を完了させるためのラストチャンス」と位置づけ、背水の陣で臨んでいる。(井手迫瑞樹)


(NEXCO中日本公表資料より抜粋、以下注釈無きは同)

 同支社は、最終的には道示の示す耐震性能2での補強を目指すが、当面の対策として「恒久的な復旧は速やかにできないが、損傷が生じても緊急車両を通すことができるような耐震補強を施す」基準である、「耐震性能2(b)」を目指す。そうすることによって「変位を耐震性能2よりも2~5割程度許容でき、要求すべき安全率を削ることができるため、当面の補強すべき橋脚の数を減らすことができる」(同社)。


耐震性能2(b)

 次いで、フーチング含む基礎の補強設計は、照査のみを行うものとして補強設計は行わないことにした。既設の基礎に対しては現在照査方法を検討中であり、この照査方法を用いて今後順次検討を行っていく予定である。

 さらに支承取替設計も省略することにした。具体的には免震化や制震化を検討せず、支承条件を変更しない。特に支承高の高い支承については、1979年以前の橋梁で既に橋梁の補強が完了している場合、支承条件を変更すると補強済みの橋梁でも橋脚の再照査が必要となり、再補強を回避するための検討が延々と必要になるためだ。また、支承部は段差防止構造の設置を優先する。段差防止構造は「従前のサンドルでもよいが、西日本高速道路グループが開発を進める簡易段差防止構造を取り入れても良い」(同)としている。
 原則的に静的照査法を適用することも導入する。従来の動的照査法では、減衰を見ることができるなどの効果を有したが、地盤の液状化なども検討しなくてはならず、モデルが複雑で繰り返し計算が必要になる、解析ケースが増加するなど設計の際に大きな負担を生じていたためその解消を図るもの。今回の耐震補強設計対象となる「鈑(版)桁や箱桁など標準的な橋は特徴はなく、大きく性状は変わらないため、時間や手間を節約したい」(同)意図を有している。基本的に固定橋脚を先行着手することとし、可動橋脚は「段落とし部以外はアウトにならないことが多い」(同)ことから順次着手することとした。


静的照査法の適用

 耐震補強工法の選定も大胆に切り込み、連続繊維シート巻立て工法を標準として補強設計を行うことにした。現場での施工手間の軽減や並行道路などに対する負荷を減らすことが目的だ。但し、河川部に関しては要検討としている。


連続繊維シート巻き立て工法を標準に据える

 設計業務から施工計画検討や橋梁付属物図面作成は別途発注することにし、ここでも設計業務の負担を減らすことに努めている。施工計画検討は、別途発注やNEXCO中日本グループ会社、直営での検討を試みる。また、付属物の図面も、別途発注やNEXCO中日本のグループ会社などで対応する方針。

 フレックス工期は、発注の際に全体履行期間を(想定期間より)多めに取る(下図)。その履行期間内で受注者が工期を自由に設定し、業務を行えるようにしたもの。「繁忙期は会社によってばらばらで、技術者の確保がままならない、あるいはだぶつく時期もある。当社として履行期間を長く設定することで、より落札していただける可能性を高めたいと考えた」(同)ということだ。また、入札への参加機会の拡大と若手技術者(20代~40歳ぐらい)の中・長期的な育成を考慮し、若手育成型プロポーザル方式の導入も行う。





若手育成型プロポーザル方式の導入

 説明会では、出席者からの質問として、「静的照査は業務として安価である。設計会社としては動的照査・解析により採算性がようやく見込める状況であり業務単価が安くなって、採算性が見込めないのではないか」との質問もあった。これについては、「プロポーザル方式のため、あくまで受注者と協議の上で適正な費用を決めていきたい」(同)とし、業務を遂行するのに必要な費用を見ていくことを示唆した。また、「動的解析を用いた効率的な手法を提案してもらえるとありがたい」(同)とも述べた。また、耐震性能2(b)については、「あくまで当面の措置」(同)であり、2021年度中に対象となる橋梁の耐震補強が全て完了した後に、改めて動的解析などを行い、耐震性能2の確保に向けて、支承の取替などを含めた抜本的な対策を施していくことを強調した。

 同社では、今後、不調不落が生じた70件(約200橋)の耐震補強対象を51件に集約し、12~14カ月程度の工期で順次発注していく。また、耐震補強工事については8件(橋脚耐震補強が20橋約310基、段差防止工約450基、特殊橋として名港東大橋の耐震補強など)の発注見通しを発表しており、設計が終わり次第、工事も早期に発注していく方針だ。また、2026年度までに今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以下の地域にある101の橋梁についても補強を行わなくてはならない。今回採用した方式が設計の標準になりえないかも模索していく。













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