幅員が徐々に広がるいわゆるバチ型の形状を有している
「一枚たりとも同じ形状がない」
11日から施工に着手している上り線の特徴は、仙台宮城ICとの兼ね合いからA1からA2に向けて幅員が徐々に広がるいわゆるバチ型の形状を有していることである。
そのため、「一枚たりとも同じ形状の床版が無い」(元請の後藤工業、下図参照)。橋軸方向は1840mmで統一されているが、橋軸直角方向の幅は最小10,164mm~最大で14,215mmに達する。
剥落防止対応のため繊維入りコンクリートを使用
床版厚を薄く抑えるためエンドバンド継手を採用
既設床版厚は210mmだが、既設舗装厚は50mmと薄い。舗装は現在の規定通り80mmの厚さを確保するため、取替床版厚を薄くする必要がある。そのため継手構造を従来のループ鉄筋ではなく、エンドバンド継手を採用し、PCaPC床版厚を200mmに抑えた。床版の圧縮強度は50N/㎟で間詰コンクリートも同様の強度とした。高炉スラグやフライアッシュを混入しておらず、間詰部のみ膨張材などを入れている。また、桁端部は斜角の調整のために現場打ちとした。間詰部及び現場打ち部については、コンクリート中にポリプロピレン繊維『タフライト』を混入し、経年時の剥落防止に備えた。また、打設に当たっては被膜養生剤『キュアキーパー』を使用し、硬化後にけい酸塩系表面含浸材を使用し、品質を高めている。但し被膜養生剤は後工程の床版防水工との接着時の相性があるため、今回の現場では東亜道路工業のタフシャットを使用することを念頭にしているが、今回の工事範疇から防水工以降は外れているため、工事間の申し送りが必須となる。
施工は、NEXCO各社で行われている手法を踏襲した。まず、舗装と鋼製高欄などを撤去し、ロードカッターで橋軸直角方向、次いで橋軸方向に切断し、ジャッキで引き剥がし、ハンチ部の鉄筋はガス切断して、クレーンで吊り上げ撤去した。既設床版と桁との間は「丸鋼を溶接したような構造であり、ほとんどの個所はジャッキでの引き剥がし時に桁に負担をかけ縁切れできそうだ」(同)ということだ。高欄の切断工程がないのは、鋼製高欄を使っており軽量であり、床版と一緒に撤去するため。
橋軸方向のカッター切断/既設床版の剥離
既設床版の撤去および搬出
既設床版の撤去が完了した部分/主桁上フランジ上面のケレン
ジンクリッチペイントの塗布/高さ調整モルタル型枠の設置
その後、上フランジ上面をケレンし塗装した後、PcaPC床版パネルを架設、スタッドを打ってモルタルを充填し、一体化させる。一体化する際の型枠兼ノロ止めには『トメルンダー』を採用した。間詰コンクリートは橋梁全体の半分のパネルの架設が終わった時点と、全ての架設が完了した時点、都合2回に分けて施工する。
床版架設前の作業が完了した状況/PCaPC床版を夜間に搬入して仮置きする
パネルは全体で45枚。1枚当たりの重量は最大13.1tで、半割撤去する既設床版の重量は1枚当たり約8~9t。これを、100tクローラークレーンを用いてA2側からA1側へ4枚(撤去は8枚)ずつ架設していく。施工の際は、飛散防止ネットを張るなど、供用している仮橋への影響が出ないよう細心の注意を払う。
PCaPC床版の架設
ジベルの設置/無収縮モルタルの打設
設置完了したPCaPC床版(間詰部除く)
床版防水工はNEXCO各社で採用している高性能床版防水ではなく従来の防水工を施工する予定。舗装は基層(40mm)に水密性が高い改質13型(FW)を施工した後、表層に40mmの密粒度As13T(改質Ⅱ型)を施工する予定だ。高欄は桁への負担を抑えるために既設と同様に鋼製高欄を用いる。
設計はオリエンタルコンサルタンツ。仮橋工元請は橋本店。床版取替工元請は後藤工業、一次下請はオリエンタル白石、コウリョウ、二次下請はトラスト工業など。
(2020年2月27日掲載)