合成鈑桁上のRC床版撤去にサブマリンスライサーを採用
ケレン作業緩和のためにフランジブラスターも適用
落合川橋(下り線)
落合川橋は橋長283mの鋼単純合成鈑桁+鋼3径間連続逆ローゼ桁橋だ。(右図表)P1-A4の逆ローゼ部分の床版取替は既に前期(春)の施工にて完了しており、今次の工事では、残るA1-P1間43.925mの合成桁部分の床版(約445㎡)を取替えた。床版厚は220mm。横断勾配は2~2.8%と比較的緩いが、縦断勾配はA4からA1側に5~4%と大きい。交通量、車両重量の増加及び凍結防止剤の散布により橋梁全体の劣化が進行しており、床版底部ではひび割れも発生している。また床版端部(ジョイント近傍)の被りコンクリートが剥落しており、主鉄筋の腐食が進行していた(右写真)。
落合川橋の特徴は合成鈑桁という構造にある。鈑桁のみでは成立しない構造であるため、施工中に変形などを起こさないよう仮補剛しなければならない可能性もあったが、クレーンをA1-P1に配置しないよう工夫して照査した結果、必要ないことがわかり、仮補剛を省略した。床版を撤去する際には、合成構造により、桁と床版が強固に一体化されており、ジャッキで引き剥がすことができないため、新しく開発した「サブマリンスライサー」工法を採用した。
床版下から乾式のワイヤーソーを用いた超低空頭の乾式水平切断装置により、桁と床版の接合部をずれ止め(ジベル)を含めて水平切断することで施工ステップを大幅削減し、床版撤去に伴う交通規制期間を従来の65%程度に短縮することができる工法だ。カットラインのコントロール性に優れる押切切断を実用化したことにより、桁上フランジ10mmでの切断が可能となった。乾式ワイヤーソーを用いているため、従来用いてきたコンクリートカッターとブレーカに比べて、排水や騒音が少なく、床版が桁上に載ったままの安定した状態で作業できるため、安全に施工できる。
具体的には、多主鈑桁において、ワイヤーソーを支える治具を、床版を水平切断する対象桁の両側桁間に置き、事前に対象主桁ハンチの2か所をコアドリルで削孔し、そこにダイヤモンドワイヤーを挿入してつなげ、足場や桁などに備え付けたレールなどでプーリーを備えた治具を橋軸方向に動かしていき、切断していく。これで床版と桁の接合部を切り離した後にクレーンの能力に応じて小割にし、撤去することができる。切断面が上フランジの上面から非常に低くなり、上フランジ上面のスタッドの研掃や残されたコンクリートの処分も最小限に抑制することが可能だ。
プーリーやその治具をコンパクトにした結果、切断用ワイヤーが装置の上端に配置することができ、上フランジ上面から1㎝上の床版ハンチ部を切断できるため、ハンチ高さが低い床版に対しても利用できる。
湿式ワイヤーソーやWJなどの水を用いる切断工法ではないため、排水処理の必要がなく、床版下の作業となるため、周囲への音が拡散され、騒音を抑制できる(但し下に道路があるような場所は、足場の下面パネル上に遮水シートを設置した)。加えて、床版が桁上に載ったままの安定した状態で切断できるため、切断完了時に床版が動くことがなく作業の安全性も向上させることができる。従来は、切断時に床版が落下しないようにクレーンで吊っておく必要があったが、床版が切断する瞬間に急に吊り上がったり吊り下がったりして事故を起こす危険があったが、そのような心配も無用だ。
水平切断後は既設床版を4主桁の中央で切断し2分割して撤去した。
但し、既設床版の配筋が既設図面と現物では相違があり、鉄筋位置とワイヤー切断位置が同一となってしまうスパンがあったため、切断位置を変更した。事前の鉄筋探査では探査しえない範囲であったため、水平コアによる調査削孔で鉄筋位置を確認し、切断位置の微調整を行った。その結果、鉄筋位置をかわして切断位置を設定でき、想定通りの施工性を確保できた。
施工中のサブマリンスライサー
床版撤去後は、桁上フランジ部上面をケレンし、再塗装した後に床版を架設する必要があるが、このケレン作業が状態によっては結構手間がかかる。落合川橋や新茶屋橋など、床版の状態が悪い個所は、当然、浸透した塩分が床版と一体化した同部分にも悪影響を与えており、錆が生じているのは想像に難くない。
そのケレン作業を緩和するために(大林組が)開発したのが、「フランジブラスター」だ。ケレン作業に要する手間を約半分に短縮できると共に、ケレンくずやブラスト材の飛散を防止できる。「フランジブラスター」は自動でスイングするブラスト噴射装置とケレンくずやブラスト材を自動回収するバキューム装置で構成されている。走行車輪を有しており、桁フランジの上を手押しで走行させることによりケレン作業と清掃を同時に行うことができる。
撤去・架設は220tオールテーレンクレーンを2台、土工部とローゼ桁部両側に設置し、施工した。撤去サイズは、1ブロック当たり橋軸方向が2~2.3m×橋軸直角方向5.05m、7.5tを38ブロック撤去した。架設するPCaPC床版は合計21枚で1枚当たりサイズは1.79(1.85mせん断キー含む)×10.14m、11.5t(標準版)を施工した。同じく鈑桁部の新茶屋橋にも共通するが、床版と桁間にはノロ止めにシールスポンジ(「トメルンダー」)を設置して型枠代わりとした。架設時に寄れが発生した場合は、架設後に形を修正して、隙間がある部分はコーキングで対応した。鈑桁部のPCaPC床版は通常の形状のものを使用し、間詰部はスリムファスナーを採用している。壁高欄も上田川橋、新茶屋橋と同様フルプレキャスト壁高欄を採用し、工期短縮を図った。
落合川橋施工要領図/同橋床版撤去ステップ図
舗装切削/コア削孔
床版の撤去及び架設
間詰部の型枠/壁高欄の架設
床版防水の施工および舗装まで完了した状況
足場はスパイダーパネルを採用した(新茶屋橋も同じ)。また、中段足場としてクロスリンクステージも採用している。
床版防水はレジテクトGS-M工法を用いた。