大規模更新までの延命策 725m2を補修
NEXCO東日本 横浜新道法泉高架橋でJ-THIFCOMを採用して床版補修
洗浄散水してJ-THIFCOMを敷きならしていく
材料で不陸ごと埋めていく 膜厚は20mm
WJ施工後は、多少浮いている箇所を除去し、ガラやノロをバキュームなどで清掃し、さらに洗浄散水を行い、その後にJ-THIFCOMを敷きならしていく。本材料は敷均し前の乾燥養生やプライマーなどの塗布は一切必要としない。また、打設面は水の飽和状態の保持が必要な材料であり、むしろ表面状態は多少の濡れを必要とするため、施工前には散水する必要がある。J-THIFCOMは現場においてセメントや鋼繊維その他を専用の練り混ぜ機に投入して製造する。供給量は1回の練り混ぜで0.25m3で最小膜厚20mmの今現場においては12.5m2に相当する。これを1夜間4~5セット製造する。セット数が多少増減するのは、床版の損傷状況に左右されるため。従来の床版補修のように別途断面修復を行い、不陸を無くした上で打設するのではなく、同材料で不陸ごと埋めていく。
9月26日の施工④ ガラやノロをバキュームなどで清掃し、さらに洗浄散水を行う(井手迫瑞樹撮影)
9月26日の施工⑤ J-THIFCOMの製造(井手迫瑞樹撮影)
粘り気のあるスライム性状
床版防水は不要 養生時間も大幅に省略
材料は練り混ぜ時に殆ど水を入れないにもかかわらず、ドロッとしたスライム性状を示す。しかし非常に粘りがあることから、敷均しは多少力を要する。打設品質を向上するため、バイブレーションや敷均しは全て外側か作業構台から施工する。作業構台は、施工箇所の橋軸直角を跨ぐように配置され、一方は仮設置されたレール上、もう一方は舗装上にそのまま車輪が配置され、両方を人が押す形で運用されていた。構台上には人が乗って左官仕上げや膜厚管理を行い、さらに施工が完了した個所は、養生用の珪砂を巻いた上に養生水を散布して、備え付けてあるビニール製フィルムを展開して養生する。打継面はワイヤーメッシュを設置しているが、これは混入している鋼繊維の連続性を確保するため、その補強として設置しているもの。
9月26日の施工⑥ J-THIFCOMの供給(井手迫瑞樹撮影)
9月26日の施工⑦ 敷均し作業(井手迫瑞樹撮影)
9月26日の施工⑧ 左官仕上げ/養生剤の散布/ビニール製フィルムをかぶせて養生(井手迫瑞樹撮影)
1.5時間ほど養生した後、24Nの初期強度が出ていることを確認した上で、まず養生珪砂をポリッシャーなどで研掃して除去する。次いでプライマー及び舗装との接着用樹脂を塗布しアスファルトフィニッシャー用の珪砂を撒き、舗装して完成させた。なお橋軸直角、橋軸部の外縁部(約300mm幅)にはプライマーおよび接着樹脂を塗布せず、ワイヤーメッシュを配置してその上に珪砂を多めに撒いて舗装を載せる。この部分は「仮舗装と考えており、次の夜以降の施工で舗装が容易に撤去できるようにしている」(㈱サンブリッジ)もの。床版防水に伴う既設床版上面の養生や防水層及びその後の養生が省略できることが、1夜間規制での舗装切削からWJ、床版補修、舗装再設置を完了の実現を可能とした。
9月26日の施工⑨ 養生被膜の除去(左)/Jコートの塗布(中、右)(井手迫瑞樹撮影)
9月26日の施工⑩ Jプライマーの塗布
9月26日の施工⑪ 仮舗装前の珪砂の散布/J-THIFCOMの強度確認
施工性及び安全性の更なる向上や練り混ぜ量の増加が課題
施工前後に測定し、補修効果を確認する予定
改善点は、WJ施工時やJ-THIFCOM打設時の養生及び施工設備(作業構台)の安全性と、練り混ぜ量の少なさ。機械に関しては既に改善に着手しており、WJについては、縁や隅角部を無理なくはつることのできるよう改善を進めている。また、作業構台については走行側の車輪を安定させられるよう簡易ストッパーを設けることなどを検討している。また、練り混ぜロットは施工効率を大きく左右するため、現在の2倍程度の量を一気に製造できるミキシング機械の導入を検討している。
なお、施工前後にひずみゲージ等の測定機器を設置して、載荷試験車による静的、動的な試験を行い、補修効果を確認する予定だ。
元請は㈱ネクスコ・メンテナンス関東。一次下請は㈱サンブリッジ、二次下請はコンクリートコーリング㈱、日レキ特殊工事㈱など。床版の電磁波レーダーを用いた点検は㈱ネクスコ東日本エンジニアリング、一次下請はジオ・サーチ㈱。(2019年10月21日掲載、井手迫瑞樹)