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大規模更新までの延命策 725m2を補修

NEXCO東日本 横浜新道法泉高架橋でJ-THIFCOMを採用して床版補修

公開日:2019.10.18

 東日本高速道路関東支社京浜管理事務所は、横浜新道法泉高架橋(下り線)のP4-P5間736m2のRC床版補修に、超緻密高強度繊維補強コンクリート『J-THIFCOM』を採用した補修を進めている。高速道路上の床版補修に同工法を採用する初の事例となる。21時~翌朝4時までしか施工時間が取れない中、既設舗装切削、WJ、断面修復、舗装舗設の全工程を実施する。そのため、補修厚が薄層(20mm)で、硬化養生時間が短く、かつ、床版防水も不要な同工法を採用した。20mmという薄い補修厚ながら、床版の補修と床版防水の不要を実現しているのは、設計強度130N/mm2という高い圧縮強度、同9N/mm2という引張強度および35N/mm2という曲げ強度、緻密な層を形成することによる遮水性の高さを有していることから同工法を用いたもの。その現場をレポートする。(井手迫瑞樹)


法泉高架橋の位置(NEXCO東日本提供、以下注釈なきは同)

1日交通量は10万台以上 大混率も2割
 床版は広範囲に損傷 健全度評価はV(更新対象)

 法泉高架橋(下り線)は、1981年3月に建設された橋長171.05mのPC単純合成桁×4連+鋼単純合成鈑桁+PC単純合成桁×2連の橋梁。P4-P5の径間長は45.80mで、JR横須賀線及び東海道本線を跨ぐ箇所にある。1日交通台数は10~12万台、大型車混入率も約2割に達する。一方で凍結防止剤の散布量は少なく、鉄筋近傍の塩化物イオン量は、最も高い箇所でも0.468kg/m3と極めて低い値を示した。しかし、事前の電磁波レーダーを用いた点検車(ジオ・サーチ㈱)による調査では広い範囲で損傷が見受けられた。さらに今次の補修で舗装を切削し、コンクリート上面をはつると広い範囲で腐食による鉄筋膨張やその周辺を中心としたコンクリートの土砂化、下面からも氷柱状の遊離石灰が生じていた。床版防水は供用以来設置していないことから輪荷重による疲労と水が床版に負荷を与えて、損傷を進ませたものと考えることができる。昨年度に実施した舗装面からの電磁波レーダーによる調査の結果、健全度評価はⅤ(更新対象)と診断された。


電磁波レーダーによる調査結果

床版上面の開削調査結果

大規模更新までの延命策として床版補修を選択
 直下には鉄道 打ち抜きや全断面修復が不要なJ-THIFCOMを採用

 さらに鉄道跨線区間の床版であることから手続きや折衝に時間がかかることが予想された。そのため、大規模更新までの延命策として床版補修を選択したもの。また、本来は部分的に全断面修復をしなければならないところであるが、そのためにはWJ(ロボット)を用いた床版の打ち抜き施工をした上で施工せねばならず、床版下に養生足場を設置しなくてはならない。そうすると協議に「年単位」(NEXCO東日本)の日数が必要なことが確認されたことから、打ち抜きや全断面修復を必要としないJ-THIFCOM工法を採用した。

非常に狭小な条件下での施工

 現場は保土谷バイパス、横浜新道、第三京浜、首都高速神奈川3号狩場線などが密集する個所にあり、交通条件が非常に厳しい。そのため、床版補修は4車線を施工ごとに車線規制して20回に分けて施工している(図)。1回あたりの施工面積は橋軸直角3.5m×橋軸9~10mとした。具体的には、まず7月に狩場出口左側車線1車線、次いで9月に狩場出口右側車線と本線走行車線、最後の10月に本線追い越し車線をそれぞれ規制して施工した。記者が取材した9月26日夜は本線走行車線側の床版補修で、「2車線規制しているため、まだ通行車両のプレッシャーは緩い方」(同社)だったが、それでも床版の最外部の施工はWJ(スピンジェットによる薄層研磨)、J-THIFCOMの打設共に機械の車輪を車線規制のために設置しているコーンぎりぎりまで張り出しており、見ていて緊張するものがあった。



法泉高架橋の施工スケジュールおよび打設個所図など

一期施工時の施工写真① 施工前/舗装切削後の状況(俯瞰/接写)

一期施工時の施工写真② WJの施工/WJ施工後の床版上面/ワイヤーメッシュの設置

一期施工時の施工写真③ J-THIFCOMの製造および敷均し

WJ ノズル配置は星型5列 施工幅は25cm
 回転しながら舐める様にはつりとる 引張接着強度2.5N/m2を確保

 規制は18時半に路肩規制から始め、工事のための規制が完了するのが21時前。21時から工事は開始される。

 まず舗装を切削し、脆弱部をピック等ではつり、WJで薄層研磨を行う。WJは回転用のエアモーターで回転するスピンジェットノズルを用いている。15個のノズルを星型に5列に配置し、ノズル角はこころもち外を向けるようにしている。ここでは水圧240MPa、水量38ℓ/分で使用したが、水量・水圧は現場でキャリブレーションを行い、その都度で決めていく。回転しながら舐めるようにはつっていくため、下まで打ち抜くことなく脆弱部をはつりとり、J-THIFCOMとの界面の引張接着強度は2.5N/mm2程度を確保している。一度にWJできる施工幅は約25cmで1車線に付きだいたい8往復程施工する。外縁部はガラ飛散防止用設備の足を舗装に載せて、機械そのものも少し浮かして施工している。そのため、コーンぎりぎりまで張り出すこともあり、安全性の面で少し改善の余地を感じた。また、それは施工者側も感じているようで「無理をせず、縁ぎりぎりまではつれるWJ機械になるよう改造を進めている」(コンクリートコーリング㈱(東京))ということだ。なおWJ機械は水が飛散しないようにバキュームと接続して施工している。


9月26日の施工① WJの施工 施工者はもちろん、養生器具の移動、ホースの持ち手など5、6人の人員を必要とする。(井手迫瑞樹撮影)

9月26日の施工② WJの施工 外縁部はガラ飛散防止用設備の足を舗装に載せて、機械そのものも少し浮かして施工している(井手迫瑞樹撮影)

9月26日の施工③ WJの施工後の床版上面 回転して研磨していることが分かる表面だ。
(井手迫瑞樹撮影)


星形のノズル配置(コンクリートコーリング提供)

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