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端部のプレキャスト化、「EQ-WALL」の採用で現場省力化と工程短縮を図る

NEXCO東日本 関越道松川橋 上下線全面の床版取替工事を実施中

公開日:2019.09.05

200t吊クレーン2台で施工
 1日に合計8枚の床版を撤去し、翌日に同数を架設

既設床版撤去・新設床版架設
 A1~P5間の床版取替工は200t吊オールテレーンクレーン2台を用いて、P2~P3中間部付近から両端に向かって撤去・架設する作業を繰り返した。当初計画では120t吊クレーンの使用を予定していたが、作業時間が長くなり撤去後の主桁上フランジ上面のケレンと塗装を撤去日に行えず、雨天による工程遅延リスクの可能性があったため、作業効率が高い200t吊クレーンへと大型化している。


床版撤去架設概要図

床版割付図

 既設床版は壁高欄と一括で吊上げ撤去するために、標準で橋軸方向2.2m×橋軸直角方向5.6mと橋軸方向2.2m×橋軸直角方向6.05mに2分割し、分割したブロックの重量(9.3t)が同じになるようにした。床版切断にあたっては、同橋の平面線形がA=300m~R=580mの「曲線桁のためにカッター施工の際に測量を行って、鋼桁を傷つけないように苦労した」(三井住友建設・IHIインフラ建設JV)という。1日あたりの撤去枚数は1パーティー平均8枚(2分割しているので16ブロック)で、合計108枚(216ブロック)におよんだ。床版撤去後は上フランジ上面のケレンを行い、有機ジンクリッチペイントでの1層塗りを施している。


既設床版と壁高欄の切断

既設床版の撤去

上フランジ上面のケレンと塗装

 新設プレキャストPC床版は橋軸方向2.2m×橋軸直角方向11.65m、重量15.9tで、撤去日の翌日に撤去枚数と同数を架設した(全架設枚数は108枚)。


新設床版の架設(大柴功治撮影)

 プレキャストPC床版はIHIインフラ建設の滋賀工場で製作し、型枠底版部にスライド部と緩衝部を設けた型枠構造を採用した。型枠がPC床版の変形に追従して拘束しないため、ひび割れや損傷を回避する効果がある。また、現場での工程遅延リスクを排除するために、工場の敷地内で同橋の線形、縦横断勾配を1径間ごとに再現した仮組支保工の上にプレキャストPC床版を配置して、床版据付の精度や適応などの確認を行っている。確認後には地覆立ち上げ部の打設を行い、プレキャストPC床版と一体化することで現場施工の省力化と工程短縮を図った。


現場条件を再現した仮組支保工の上にプレキャストPC床版を配置

伸縮装置の後打ちコンクリート部に「J-ティフコム」を打設

場所打ち部と床版防水など
 床版継手部はループ継手を採用し、総継手数は107箇所となった。間詰めコンクリートの打設幅は1箇所あたり下幅350mm~上幅390mmで施工している。コンクリートは、はく落防止対策のためにバルチップ入りコンクリートを採用し、強度50N/mm2、スランプ15cmとした。


継手部(大柴功治撮影)/間詰めコンクリートの打設

 伸縮装置の後打ちコンクリート部には、圧縮強度130N/mm2の超緻密高強度繊維補強コンクリート「J-ティフコム」を40mm厚で打設して高耐久化を図っている。また、桁端部は伸縮装置からの漏水などにより劣化が進みやすいことから、長期耐久化を目的に狭隘部に適したAl-Mg合金プラズマアーク溶射(TAPS工法)を実施した。


J-ティフコムの打設

 鉄筋は耐食性向上のために、プレキャストPC床版の最外縁および壁高欄、継手部、間詰め部にエポキシ樹脂塗装鉄筋(AG-エポキシバーおよびMKエポザク)を使用している。
 床版防水は高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、ニチレキ「HQハイブレンAU工法」で2,400m2に施工した。舗装は、基層が橋梁レベリング層用混合物(FB13)、表層は高機能舗装Ⅱ型用混合物としている。防水工および舗装の1日あたりの施工数量は約800m2だった。


防水工と舗装の施工

 足場は、パネル式吊り棚足場「スパイダーパネル」(タカミヤ)を使用している。隙間および段差の少ないユニットパネルをチェーンで吊下げ、連結して構成されたパネル式吊り棚足場システムで安全性と作業性に優れるためだ。


足場は「スパイダーパネル」を採用した

A1~P5間施工完了

床版取替工事以外の工事
 本工事では、耐震補強工事もあわせて実施している。大規模地震発生時に路面に大きな段差を生じさせず、速やかな機能回復を可能とするための対策(耐震性能2)で、橋脚補強、支承取替、桁の連続化(P5橋脚部、8径間連続構造に変更)、橋台の縁端拡幅を行う。


耐震補強工概要図

 橋脚補強工は上下線全14基が対象。P1~P4橋脚は河川区域内で現況の下部工形状ですでに河積阻害率が7%であったために、補強厚の小さい鋼板巻き立て工法とした。P5~P7橋脚についてはRC巻き立て工法を採用している。支承取替は上下線172箇所が対象で、既設のBP支承をゴム支承+すべり支承とする。


橋脚の耐震補強工

支承の取替(左写真は取替前)

 元請は、三井住友建設IHIインフラ建設JV。協力会社は、国土(クレーン・架設工)、第一カッター興業(切断工)など。
(2019年9月5日掲載 大柴功治)

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