東日本高速道路(NEXCO東日本)新潟支社は、関越自動車道の水上IC~湯沢IC間の一級河川魚野川渡河部に位置する松川橋床版取替工事を実施している。5月17日から7月19日には64日間の終日対面通行規制を実施して、同橋・下り線のA1~P5間(236.7m)の床版2,400m2を取り替えた。同工事では、プレキャスト壁高欄の採用に加えて、床版端部も現場打ちからプレキャストPC床版に変更して省力化と工程短縮の取組みを行った。床版取替工のほか、橋脚の耐震補強なども実施する本工事を取材した。
左:位置図(NEXCO東日本提供。注釈なき場合は以下同)
右:全景。手前がA1(水上IC)側(大柴功治撮影)
2期2年で上下線の床版全面7,831m2を取替え
橋梁概要と損傷状況
松川橋(下り線)は、橋長341m、幅員10mの鋼5径間連続鈑桁橋+鋼3径間連続鈑桁橋で、平面線形はA=300~R=580m、横断勾配5%、縦断勾配1.2%となっている。同橋が架橋されている水上IC~湯沢IC間下り線の2017年度交通量は8,655台/日で、大型車混入率は29.3%だ。
橋梁概要図
1985年度の供用から33年が経過し、下り線では2003年に床版防水工を実施している(上り線は2014年にA1~P5で床版補修と床版防水工、P5~A2で床版補修を実施)。凍結防止剤の散布量は約1,500t/年(2018年度、土樽PA~湯沢IC間)で、鉄筋近傍の塩化物イオン濃度は健全部0~0.2kg/m3、損傷部0.02~6.08kg/m3と損傷部で発錆限界値を大きく超えていた箇所があった。凍結防止剤散布の影響による塩害や車両の大型化による輪荷重の繰り返しなどにより、厚さ220mmの既設RC床版下面にひび割れや剥離、上面に土砂化などの損傷が発生していることから、抜本的な対策として上下線の床版全面7,831m2をプレキャストPC床版(厚さ220mm)に取り替えることにした。
損傷状況
施工は1連ごとで、下り線のA1~P5間は完了、同P5~A2間(104.3m)は8月28日から10月25日までの59日間の終日対面通行規制を実施して完了させる予定。上り線(橋長324m)はA1~P5間を来年5~7月に、P5~A2間を8~11月に工事を行う計画になっている。
工程表
プレキャスト壁高欄「EQ-WALL」を採用、1日あたり約45mを施工
場所打ちは床版間詰め部と伸縮装置の後打ちコンクリート部のみに
省力化と工程短縮の取組み
床版端部や壁高欄のプレキャスト化により場所打ち部を極力少なくして、現場省力化と工程短縮を図ったことが本工事の大きな特徴だ。当初計画では、端部(P5は桁連続化のため、橋台側のみ)は場所打ちPC床版だったが、扇形のプレキャストPC床版に変更している。そのため、A1側では約13m2の場所打ちが不要になった。
端部(A1)へのプレキャストPC床版架設
壁高欄には、三井住友建設が開発したプレキャスト壁高欄「EQ-WALL」を採用した。鉄筋端部を円錐台状に加工した機械式定着鉄筋(Trunc-head)を使用し、Trunc-headを床版の地覆部に設けた箱抜き孔にモルタル定着させて一体化する構造のため、設置が簡単(Easy)で急速施工(Quick)が可能になる。
EQ-WALL概要図/地覆部の箱抜き孔(右写真:大柴功治撮影)
また、間詰め部(場所打ち)が必要ないことも特徴だ。1ブロックの延長は4.4m(標準タイプ)で、A1~P5間の施工では調整タイプも含めて1日平均12ブロックの設置を行い、施工延長は約45m/日に達した。
EQ-WALLの施工
このふたつの取組みで、場所打ちは新設プレキャスト床版の間詰め部と、伸縮装置の後打ちコンクリート部のみとなり、A1~P5間では場所打ち面積を約47m2にすることができた。
また、省力化の取組みのひとつとして、床版取替および同時施工する耐震補強などの詳細設計を行う際に、3Dレーザースキャナー測量を採用している。これにより、足場を架設することなく測量が可能になり、省力化とともにコスト削減も図ることができた。施工者の三井住友建設・IHIインフラ建設JVの三井住友建設では、床版取替工事での3Dレーザースキャナー測量は2016年度に実施した中国道の下熊谷川橋(下り線)で試験採用しているが、本採用は今回が初めてとなった。
3Dレーザースキャナーでの測量