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近畿自動車道松葉高架橋塗装塗り替え

NEXCO西日本 塗膜剥離剤と循環式エコクリーンブラスト工法を併用して既設塗膜除去と素地調整

公開日:2019.08.24

 西日本高速道路関西支社大阪高速道路事務所は近畿自動車道守口JCT~門真IC間の松葉高架橋において、塗膜剥離剤と循環式エコクリーンブラスト工法を併用して既設塗膜の除去と素地調整一種を行い、塗替える工事を進めている。同橋の塗膜にはPCBの含有が39~460mg/kg(平均157mg/kg)、鉛が280~93,000mg/kg(平均26,500mg/kg)、六価クロムが50~4,100mg/kg(平均1,040mg/kg)、コールタールが5,500~160,000mg/kg(平均70,890mg/kg)確認されており、その除去が必要であるが、従来の非金属系研削材によるブラスト工法では塗膜剥離や素地調整に用いる研削材そのものが粉砕し有害物質と混ざることによって特別管理産業廃棄物の処理量が膨大になる。その最小化と素地調整品質の確保、作業者の安全性の向上を目指し、今次の併用工法を試験的に採用したもので、廃棄物処理量は、同現場においては約8分の1に減少させ、素地調整も従来ブラスト比1~2割増の1日当たり60~70㎡の施工効率を見込んでいる。

 同橋は橋長1263.3m、幅員10.47~12.02mで、単純合成鈑桁および連続合成鈑桁(4、5主桁)により構成される。下り線は1970年3月、上り線は1972年12月に供用された。今次の塗り替えはP36~P57間延長425m分で、上下線合わせて主桁と補強桁の合計19,546.9㎡が対象となる。同橋は概ね2回程度塗替塗装を実施しており、本工事施工範囲の一部においては1984年次いで1998年に2種ないし3種ケレンにより塗り重ねられており、最近では1998年に2種ケレンによる塗替えが成されていた。既存塗膜(右上、施工前状況写真、NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)の構成は浸透性変性エポキシ樹脂塗料(『エポオール♯40下塗』)が3層、次いで特殊部のみ3層目に厚膜型変性エポキシ樹脂塗料(『エポニックスH』)を塗り、中塗り、上塗りはいずれもポリウレタン樹脂系塗料(『VトップH』)を施工していた。膜厚は主桁部が最小で172μmから最大で986μmに達している個所もあった(平均膜厚は378μm)。同様に補強桁部は最小154μm~最大690μmとなっている(平均膜厚283μm)。PCBが含有されていたことに対して、「理由については不明だが、現在調査を進めている」(NEXCO西日本)ということだ。


施工対象径間平面図

 施工は、基本的に3径間(径間長は最小18~最大31m)を1ブロックとしてとらえる形で施工を進めており、現在は21径間のうち塗膜除去は全径間が完了、素地調整および下塗り1層目は16径間、下塗り2層目から上塗りまで全て完了しているのは13径間で6割程度の進捗となっている。

 施工はまず、塗膜剥離剤(『エコクリーンバイオ』)を1回あたり0.5kg/㎡塗布後、24時間以上養生した後に既設塗膜を掻き落とす。これらを3回行う。次いで曲面加工した後に、剥離剤では除去できなかった塗膜の処理を合わせる形で循環式エコクリーンブラストによる素地調整を行う。ブラストは8ノズル体制で施工していた。次いで素地調整後4時間以内に有機ジンクリッチペイントを塗布し、間をおいて順に下塗りをもう2層(変性エポキシ樹脂塗料)、中塗り(ふっ素樹脂塗料用中塗り)、上塗り(同上塗り)を塗布していく。特殊部においては下塗り3層目に厚膜型エポキシ樹脂塗料を施工し、桁端部や下フランジ上面などの増塗部では下塗りを4層に増やしている。塗膜処理および素地調整~下塗りに3~4週間、塗装に1ヶ月程度かける工程で進めている。(右上フローチャート参照)


塗膜剥離剤による塗膜除去状況

素地調整状況

 循環式エコクリーンブラスト工法最大の魅力は極めて破砕しにくく、回収して繰り返し施工できるスチールグリッドを採用している点だ。スチールグリッドはほぼ廃棄物とならず、塗膜滓のみ廃棄物となるため、塗膜剥離剤による既設塗膜剥離後に循環式エコクリーンブラスト工法による素地調整を実施した同現場では処理量を8分の1に縮減できる見込みである。また、素地調整の際、グリッドが破砕しにくいため、粉塵がほとんど生じず、素地調整の品質を施工時および施工後に素早く確認可能で、次工程である4時間以内の有機ジンクリッチ塗装を確実に施工できる。粉塵の巻き込みもなく、塗装品質の向上に寄与できる。NEXCO西日本では今後の PCB含有橋梁の塗替塗装への採用も含めて検討することを目的とし、現段階において採用可能な剥離作業の特徴、品質、施工能力、粉じん等の飛散状況、廃材量等について当該工事で試験施工という位置づけでエコクリーンブラスト工法を採用した。

粉塵がほとんど生じず、素地調整の品質を施工時および施工後に素早く確認可能

 足場には、段差がなくフラットな足場を実現したGS足場を採用した。足場の内側は、外部に研削材や粉塵が漏出しないように追従性が高く破れにくい、エコクリーンブラストシート(NETIS CB-190023-A)で覆っている。


GS足場、ブラスト機

 記者は、7月中旬に現場に入ったが、現場での最大の強敵は「粉塵」と「暑さ」だ。とにかく密閉された空間での塗り替え作業は暑い、本当に暑い。同現場での作業は、作業従事者の環境と安全を守るため、高性能フィルターを装着した集塵装置を設置し場内の環境をクリーンに保った。また従事者の安全衛生では、顔を含む全身を高密度ポリエチレン繊維に特殊ポリマー処理を施したエコクリーンクールスーツ(NETIS CB-190009-A、右写真)で覆い、背中から屋外の清浄空気を供給し、スーツ内部を陽圧に保ち、作業時の粉塵を取り込まないようにし、さらにフェールセーフとして防塵マスクを装備している。夏季は、熱中症対策として冷風を供給するクーレットを装備することでスーツ内部の気温を約10℃度程度低下させることが可能で、快適な温度に保っており、同スーツを着て取材した筆者も、それらの工夫が作業性を向上させていることが身をもって実感できた。それでもブラストを打つノズルマンは2時間に1回、スチールグリッドを回収する担当者(低い姿勢での作業を強いられるため非常にハードな労働となる)はさらに短いスパンで休憩を取らせ、作業者の健康に配慮していた。

 また、作業体制的にも「二次までの下請体制にして当社が統制できるような体制にする
とともに、ほぼすべてを循環式エコクリーンブラスト研究会の会員で固め、技術・安全上の齟齬が出ないようにした」(元請のヤマダインフラテクノス)。
 塗替えは一般部が250μm、増塗部が310μm、特殊部が490μmで基本的には吹付で塗装し、狭隘部のみ刷毛を用いて塗り替えていた。



下塗り施工状況

増塗施工状況

中塗り施工状況

上塗り施工状況

 同工法は、首都高速において標準工法として位置付けられているほか、NEXCO中日本、NEXCO東日本、国土交通省、自治体などの現場で実績を増やしている。「今後も研究会での検討活動により施工や安全性に関わるマニュアルを充実させて、発注者や労基署などの監督機関に品質や安全性の高さをアピールして採用を増やしていきたい」(ヤマダインフラテクノス)考えだ。

 元請はヤマダインフラテクノス。下請は昭和塗工社、シダックス、協栄工業など。工期は2020年1月26日まで。(2019年8月24日掲載)

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