クロソイド曲線桁を下り勾配で送出し
気仙沼湾横断橋(川口地区) 送出し桁長は52.8m、手延べ桁と合わせた重量は約680t
国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所は7月17日と18日、気仙沼湾横断橋の川口地区(陸上部・7径間連続鋼箱桁橋、橋長473.5m)において、大川を渡河するP3-P5間の第1回送出しを実施した。送出し桁長は52.8m、手延べ桁(62.2m)と合わせた重量は約680tだった。約1.5%の下り勾配での送出しであり、架設桁の平面線形がクロソイド曲線であるため、後方アンカーやスライドシップで桁の制御を行いながらの施工となった。
全景(提供:国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所、以下注釈無きは同)
橋梁概要図
送出し全長239.15mを4回に分けて送出し
P3-P5の支間長は179m、P3-P4が88.5m、P4-P5が90.5mだ。送出し全長は239.15mで、これを4回に分けて橋脚高約30mの上からP3に向けて送り出す大規模な架設となる。
送出し架設ステップ図
軌条設備は、主桁のウェブ本数と同じ4本で、既にトラッククレーンベント工法で架設が完了した主桁上に組み立てた。また、本橋は3室1箱桁で横桁がない構造のため、下フランジ下面に中ウェブの位置を事前に罫書きし、確実にウェブ位置で支持できるようにする工夫を行った。
架設が完了したP5-P9
ダブルツインジャッキとエンドレス滑り装置を用いて工期短縮
送出しでは、「ダブルツインジャッキとエンドレス滑り装置を使用して、盛り替え不要な連続した送出し架設を行い、工期短縮を図った」(元請の横河ブリッジ)ことが特徴だ。ダブルツインジャッキは2種類(4つ)のジャッキを交互に使用することで、連続稼動が可能になる。さらに、継手部での盛り替えをなくすために、ウェブ位置で継手部の連結板を分割して、ヒシプレートを挿入できるスペースを設けている。
エンドレス滑り装置は、支点となるP5の架台上に耐荷能力500t×4基、同じく支点のP6の架台上に耐荷能力250t×4基を設置。設計上の第1回送出し最大反力はP6で約530tなので、2倍近い耐荷能力を確保した。
ダブルツインジャッキ(大柴功治撮影)
エンドレス滑り装置/連結板を分割してヒシプレートを挿入可能に(大柴功治撮影)
また、第1回送出しでは、エンドレス滑り装置以外に、桁後方に台車設備(ウェブ1本につき40t台車を橋軸方向に2台(合計8台))を配置した。
後方台車(大柴功治撮影)
桁逸走に対する安全対策で後方にブレーキング装置を設置
スライドシップで桁の橋軸直角方向の調整を行う
今回の送出しで一番のポイントとなったのは、軌条設備のあるP5-P7間でP5に向けて約1.5%の下り勾配であることと、主桁の平面線形がクロソイド曲線となっていたことだ。
下り勾配での橋軸方向の桁逸走に対する安全対策では、後方にアンカーを設置してブレーキング装置とした。ブレーキング装置のジャッキには、1基5t×4基=合計20tの反力を導入し、送出し方向と逆向きに引っ張ることで主桁の逸走を防止した。また、反力調整時などの作業中断時にはラッシングを徹底して、安全確保を行っていた。
後方に設置されたブレーキング装置(大柴功治撮影)
クロソイド曲線桁は一定の割合で徐々に曲率が変わる桁で、送出しを進めると橋軸直角方向へのズレが生じることになる。その対策として、P5-P7上の軌条をクロソイド曲線にできるだけ近い円弧形状で設置した。直線であるP5-P7の既設桁にあわせて軌条を設置すると、橋軸直角方向のズレが大きくなってしまうためだ。
軌条設備図
さらに、後方台車は橋軸直角方向に移動ができないので、不安定な状態を避けるため、台車の偏心をできるだけ小さくする必要があった。そのため、第1回送出しでは手延べ桁と主桁を旋回した状態で軌条に配置した。
支点のP5・P6ではエンドレス滑り装置で橋軸直角方向に生じたズレの調整をしていくが、そのためにエンドレス滑り装置の下にジャッキ(片側100tジャッキ2基)で橋軸直角方向に動くスライドシップを構築した。エンドレス滑り装置自体が橋軸直角方向に動くようにしたのだ。
スライドシップとスライドシップ移動用ジャッキ
第1回送出しの橋軸直角方向のスライド量はP6で最大400mmに達し、送出しを行いながらジャッキオペレーターがスライド量を細かく調整していた。さらに、スライドシップ上には片側2基のガイドローラーを設置して下フランジコバ面を支持することで、桁の方向調整を行っていた。
ガイドローラーで下フランジコバ面を支持。桁の方向調整を行った(大柴功治撮影)