200t吊と160t吊の2台のクレーンで施工
2パーティで1日に最大8枚を架設
床版の撤去前には、既設壁高欄の撤去を行った。撤去用の吊孔とワイヤーソー切断孔をコアカッターで削孔し、ワイヤーソーにより橋軸方向8mのブロックに分割。60t吊クレーンで吊上げ後、撤去をしていった。
既設壁高欄の撤去
床版の撤去と架設は、P6からP3方向は200t吊オールテレーンクレーンで、P6からA2方向は160t吊オールテレーンクレーンで施工し、6月1日から開始して22日に完了している。橋梁中央の掛違い部から2方向へ展開する施工は、「クレーン2台を使用することで作業効率が上がり、工期短縮が図れる」(NEXCO西日本)ためだった。
既設床版はコンクリートカッターで橋軸方向2m×橋軸直角方向4.35m(重量5.6t/1枚)に切断し、油圧ジャッキを使用して鋼桁から剥離した。1日あたりの撤去枚数は最大16枚(片側8枚)となり、合計362枚を撤去していった。
既設床版の切断と撤去
既設床版撤去後(大柴功治撮影)
床版厚220mmの新設プレキャストPC床版は橋軸方向1.65m×橋軸直角方向10.3m(重量約11t/1枚)で、合計123枚を1日に最大8枚(片側4枚)を架設した。
新設床版の架設
プレキャストPC床版の製作にあたっては、コンクリートに高炉スラグ微粉末を使用して、水密性の向上による凍結防止剤などのコンクリート構造物内への浸食に対する抵抗性を期待している。床版緊張時の床版収縮を型枠(底版)が拘束することを防ぐため、型枠パネル間にゴム目地を設ける工夫を行ったほか、地覆前面の気泡を少なくするためにエア抜きシートを型枠に貼り付けてコンクリートを打設した。また、蒸気養生1日後に水中養生を3日間実施している。
プレキャストPC床版の製作。型枠パネル間にゴム目地を設けた
3日間の水中養生
現場打ち部と床版防水など
継手部はループ継手を採用し、総継手数は121箇所となった。間詰めコンクリートの打設幅は330mmで施工している。床版間詰め部(164m2)と床版端部(7m2)の現場打ちコンクリートは、高炉スラグ微粉末入りの早強コンクリートを用い、強度はプレキャストPC床版と同じ50N/mm2、スランプ12cmとした。
ループ継手を採用
間詰部の打設
壁高欄(165m2)は早強コンクリートで、強度30N/mm2、スランプ10cmで打設した。また、耐久性向上のために壁高欄全域に含浸系コンクリート改質剤(マジカルリペラー)を塗布した。鉄筋は、ループ継手、間詰め部や壁高欄などの場所打ち部に耐食性向上のためにエポキシ樹脂塗装鉄筋(AG-エポキシバーおよびMKエポザク)を採用している。
壁高欄の打設
床版防水は高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、マスターシールブリッジ5100を用いて5日間かけて施工した。舗装は、基層が橋梁レベリング層用混合物(FB13)、表層は高機能舗装Ⅰ型で、基層2日、表層2日の4日間で完了している。
防水工/レベリング工(右写真:ガイアート提供)
足場は、パネル式吊り棚足場「スパイダーパネル」(タカミヤ)を採用した。ユニットパネルを連結して組み立てることにより安全性と作業性が向上するとともに、パネル上で容易に組み立てができるため、本線上の規制が不要となるためだ。
足場はスパイダーパネルを採用した
桁端部の二重の漏水防止対策として簡易排水装置を設置
床版取替工事以外の工事
床版取替工事前の昨年9月から今年3月にかけては、同橋前後の中央分離帯防護柵をガードケーブルからカードレールに交換する工事を行った。施工箇所には通信用の光ファイバーケーブルが埋設されており、「埋設箇所を確認するために、360箇所で深さ約800mmの試掘を人力で行ったことも大変だった」(極東興和)という。
今後は、支承の取替(32基)、耐震補強工事(落橋防止装置設置・段差防止構造)を施工するほか、伸縮装置の経年劣化での漏水による桁端部の腐食を防止するために、二重の漏水防止対策として遊間部に排水溝の設置を行う。排水溝は、「トータク簡易排水装置 TYPE-M」を採用し、伸縮装置からの漏水を受け樋のような形で集水して排水管で排水する。排水勾配は13%で土砂が堆積しにくい構造となっているとともに、スライド機能でさまざまな遊間部に対応できることが特徴だ。
簡易排水装置のイメージ図
8月中旬からは同区間にある烏帽子第二橋(下り線)の床版取替工事にも着手する予定だ。
元請は、極東興和。一次下請けは、トラスト工業(床版撤去・架設工)、岩崎運送(クレーン)、二次下請けは、ダイヤモンド工業(カッター工)、矢野機工(床版撤去・架設工)。舗装工事元請は、ガイアート。
(2019年8月7日掲載 大柴功治)