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上り線施工時の一時的な活荷重の増加が床版の急速な劣化を招く

東日本高速道路 東北道迫川橋(下り線) 予想外の床版取替工事現場ルポ

公開日:2019.07.24

壁高欄の施工
 間詰コンクリートの養生完了後は、壁高欄を設置するが、迫川橋では工期の縮減と施工品質の確保を両立するため、DAK式プレキャスト壁高欄を使用した。同高欄はNEXCO各社で既に多くの採用実績がある。迫川橋では精度管理のため工場製作時や現場打ちコンクリート部の鉄筋配置に気を付けると共に床版と高欄の接合部には低発熱無収縮モルタルを採用し、さらに透明型枠を用いて充填状況を目視で確認しやすくした。


プレキャスト壁高欄の施工状況

床版防水
 床版防水は高性能床版防水(グレードⅡ)を採用する。迫川橋では耐久性の高いアスファルトウレタン系の『HQハイブレンAU工法』を吹付け施工した。床版と防水層の接着剤にはエポキシプライマー、防水材としてはアスファルトウレタン系の樹脂を床版面と地覆立ち上がりまで施工する。舗装と防水層の接着層にはポリマー改質アスファルト接着剤、次いで珪砂を散布する。また地覆立ち上がり部には端部保護材としてウレタン系の樹脂を塗布した。その後の舗装は規定通り、基層にFB13、表層に高機能舗装Ⅱ型を使用している。なお舗装はホットジョイントにて施工した。


床版防水工前の表面研掃/研掃後の床版表面

防水工施工状況

舗装およびライン工が完了した状況

床版品質の確保
 プレキャストPC床版の製作にあたっては、工場製作中にもタンピングを行い、気泡を減らすように努めた。さらに蒸気養生して耐久性を向上させた。さらに防水の付着性向上のため表面を研磨し、後工程に配慮した。また、施工中は床版上面にビニル状の保護シートを貼って作業によって傷や汚れがつかないように配慮している。鉄筋も防食性を高めるためプレキャストPC床版の橋軸方向および壁高欄との継手部、床版継手部、両端の現場打ち部は全てエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用している。さらに間詰部とP3橋脚上の現場打ち部には早強コンクリート、早期に強度発現が必要な端部の場所打ち部では普通ポルトランドセメントを使用した設計基準強度30N/m㎡のコンクリートに「速硬性混和材Facet(ファセット)」を後添加したコンクリートを用いることで、プレキャスト床版部と同様に最終的に強度が50N/mm2になるようにし、端部が弱点になることを防いでいる。

後工程
 同現場では、床版のほかに、支承の交換(鋼製支承→ゴム支承)を32基、落橋防止装置の設置も行う。その施工性を考慮して、足場には先行床施工式フロア型システム吊り足場『クイックデッキ』を採用している。作業床を先行して構築できるため足場から乗り出して作業することが不要になるため安全性が高いのが特徴。施工の面においても、吊り材間隔が広く、開口部段差が無い足場であり、作業効率・安全性が高く、「今回工事のように支承取替を同時に行う場合は、大型ブラケットの取り込みなどで非常に有効」(川田建設)としている。


クイックデッキ

支承の交換も進める

 また、劣化状況や構造の把握をより確実かつ効率的にするため、下り線部では工事現場を3DVR化することが可能なITソリューション「BridgeStudio powered by NavVis technology」を試験的に使用した。橋長約215m、橋面積約2,300㎡の主橋体すべての点群データと380地点の画像データを約10時間で取得し、2日後には関係者間で3DVR化された現場情報のWebページでの共用を可能にし、設計技術者の現場に訪れる回数なども大きく軽減している。

 元請は川田建設、一次下請は川崎技興(床版取替)、ボンドエンジニアリング(支承取替、床版取替)、松本建設(床版取替・クレーン)、共成建設(床版取替)、第一カッター興業(床版切断)、東北ニチレキ工事(床版防水)、佐藤渡辺(舗装)。
(2019年7月24日掲載)

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