架設時のプレキャストPC床版の標準サイズは1.625m×10.45mで、億首川橋では187枚(1,964t)、明治山第一橋では106枚(1,113t)を架設した。床版の撤去・架設の1日当たり施工量は、億首川橋のトラス桁部でクレーン1台につき10枚撤去(既設床版を中央で2分割)し、5枚架設を2パーティーで施工した。同様に鈑桁部は架設機1台で8枚撤去(同)し、4枚架設を1パーティーで行った。明治山第一橋ではクレーン1台につき12枚撤去(同)し、6枚架設を2パーティーで行った。継手部はエンドバンド継手を採用しており、継手幅は485mmの長さとしている。
億首川橋のプレキャストPC床版割付図
明治山第一橋プレキャストPC床版割付図
プレキャストPC床版の架設状況
端部版及び斜角の影響については。億首川橋のA2および明治山第一橋のA1・A2では、端部も工期短縮の目的でプレキャストPC版とした。端部版は台形形状としているが、斜角の影響が大きいため、その手前のパネルも異形版を追加配置するなど工夫した。億首川橋のP3、P5、P11は過年度の施工で設置した伸縮装置を活用するために、今回の床版取替区間において端部場所打ち床版が発生した。プレキャストPC端部版と同様の台形形状になるため、床版へ均等にプレストレスが導入されるようにするため、扇状にポストテンション方式のPC鋼線を配置した(下写真)。
床版の鉄筋はプレキャストパネル部、継手部全てにエポキシ樹脂塗装鉄筋(安治川鉄工および富士ボルト製作所製)を採用している。壁高欄部、場所打ち床版部も同様だ。コンクリートはプレキャスト部材については早強セメント50%+高炉スラグ微粉末50%を使用した。スランプは15±2.5㎝(28日強度 50N/㎟)とした。間詰部及び場所打ち床版部については、普通セメント50%+高炉スラグ微粉末50%を使用した、スランプは20±2.0㎝(1週間強度30N/㎟)とした。間詰部は億首川橋で188箇所、明治山第一橋で107箇所施工している。間詰部の打設に際しては写真のように、現場に屋根を設けて風や少雨でも施工できるよう工夫を凝らし、工期に影響がないよう努めている。
現場に屋根を設けて風や少雨でも施工できるよう工夫/
上空に高圧電線があることからクレーンでなく門型機械を用いて撤去・架設する区間もあった
(井手迫瑞樹撮影)
間詰部(井手迫瑞樹撮影)/エンドバンド継手
間詰部の打設/及び養生(井手迫瑞樹撮影)
床版設置後は、壁高欄施工となるが、工期短縮と品質向上を図るためDAK式プレキャスト壁高欄を採用して施工した。
DAK式プレキャスト壁高欄の採用
高性能床版防水(グレードⅡ、ここではノバレタンESを採用した)は億首川橋で5074㎡、明治山第一橋で1,987㎡、舗装面積は同5,217㎡、2379㎡をそれぞれ施工した。施工は吹き付け施工により、1日約300㎡施工できるが、雨天時や雨天時直後の表面含水率が高い状況では施工できないことを見越して、億首川橋で2パーティー16日間、明治山橋では1パーティー10日間の日数を見越して施工した。
高性能床版防水はノバレタンESを採用した
舗装工の施工
鋼桁は一部で腐食が見られるほか、全体的に塗膜の劣化が見られる。膜厚はⅢ種ケレン以上で塗り重ねていたため、薄いところで700μ、厚い個所では一般部で1,500μ、添接部では2,000μを超える箇所もあった。「塗膜剥離剤を試したが歯が立たない」(元請のオリエンタル白石・日本橋梁JV)ため、今回は許田高架橋でも採用したIHで塗膜の大部分を剥離したうえで、ブラストにより素地調整する手法を採用する方針だ。伸縮装置には耐食性の高いアルミ製合金ジョイントを用いた。検査路もFRP製を採用する予定だ。添接部や高力ボルトには溶射ボルト(TAPSボルト)を使うことを検討している。
塗膜の劣化状況
既存塗膜が厚すぎて塗膜剥離剤では厳しかった
IHで塗膜を除去
TAPSボルトの採用
元請はオリエンタル白石・日本橋梁JV。一次下請は床版取替工事がトラスト工業(二次下請は丸雄組)、クレーン工事が大丸重機(二次下請は金功重機)、床版防水工事が橋口工業、舗装工事が沖舗、塗替塗装工事が沖縄神洋ペイント。
(2019年5月24日掲載)