剥離剤使用時と比較して廃棄物を50%程度削減
国土交通省宮崎河川国道 橋梁塗替えにIH式塗膜剥離工法『エレクトロリムーバー』を採用
国土交通省九州地方整備局宮崎河川国道事務所は、日南国道維持出張所管内の風田橋橋側歩道橋上下線の主桁下フランジ・横桁、下横構・水平補剛材の一般部148㎡と山王橋橋側歩道橋の主桁上下フランジ・横桁下部・支承本体・橋脚の一般部81㎡に小型のIH式塗膜剥離工法『エレクトロリムーバー』を使用した。剥離後の鉛を含む産業廃棄物量の削減や剥離の手間・コストの縮減を考慮し、同工法を採用したものだ。
両橋とも既設塗膜に鉛を含有していることが事前調査で分かっており、通常は剥離剤による塗膜除去を行った上で素地調整としてⅡ種ケレンを行う。しかし風田橋上り線の既設膜厚は650μm弱に達する個所もあり、下地には鉛丹を含んでいる。「土木構造物用塗装剥離ガイドライン(案)」改訂第2版に対応する剥離剤では2~3回塗布・養生を繰り返さなければならず工期が長期化することや、剥離剤も含めて全てが鉛を含んだ有害廃棄物になってしまうため、その後の処理コストが高くなってしまうことから、加熱直後に塗膜剥離が可能で、廃棄物も剥離した塗膜のみに限定される同工法を用いたものだ。
『エレクトロリムーバー』はビルドメンテック(北九州市門司区)が開発した小型IH式塗膜剥離工法。
使用電圧は200V、皮相電力は5.6kvAと電圧は従来機の半分、電力は1割強に抑制している。そのため既存のIH式塗膜剥離工法のような水冷設備も必要とせず、発電機も1t車に収納できる。機材重量もインバーター(誘導加熱装置)が20kg、アタッチメントが5㎏とコンパクトかつ軽く、ハンドリングが良いことが特徴だ。
施工対象は、中規模以下の鋼橋のPCBや鉛を含む既設塗膜の除去。施工能力は1時間当たり6㎡程度。施工半径は発電機から50m程度。アタッチメント(加熱コイルパッド)は、ウエブ面とフランジや斜材に使用する2つのタイプを使い分ける。設置はマグネットで4点支持し、45~50秒程度加熱して120℃まで温度を上げて塗膜を軟化させ、鋼板と塗膜の縁を切り、その後スクレーバーで掻き剥がす。マグネットで支持しているため手を放しても機械が落ちることがなく安全に施工することが可能。赤外線温度センサーをアタッチメント背面に付けており、設定温度の120℃に到達すると光や音で知らせ加温した温度をキープする。
塗膜剥離剤同様に鉛丹など無機リッチな塗料は取れにくい傾向がある。また、添接部・隅角部などの部位においては塗膜剥離剤やほかのケレン機器を併用していく必要がある。
両橋の施工に際しては、所轄の労働基準監督署へ工法説明を行い、同意を得たうえで施工した。作業に当たっては集塵機とエアシャワーの設置および防塵服の着用などにより安全に配慮した。特に「主桁フランジ下は塗膜剥離剤使用時に床面の防護養生フィルム上に液状の塗膜くずが残り防護服への浸透が懸念されるが、IH工法では除去した塗膜片が乾燥しているため床面からの除去が容易であり。この点でも施工性が向上した」(元請の増田工務店)としている。
また産業廃棄物量も剥離剤使用時と比較して50%程度削減することができた。同事務所では「電源確保など課題もあり、施工前の綿密な架設計画の検討も必要であるが、塗替え規模に比例して産業廃棄物コスト縮減効果は高まる。また、狭隘部やボルト部に使用可能なエレクトロリムーバーの加熱ヘッドを開発していると聞いており、将来的には剥離剤との併用なく工期短縮を図られると期待している」とし、今後も剥離剤使用の施工に限定せず、IH工法の選定を前向きに検討していく方針だ。
実際の施工状況