大型クレーンの手配に苦労するも約半年で被災した橋梁の撤去を完了
オホーツク総合振興局網走建設管理部 いわね大橋復旧工事の軌跡
平成30年7月豪雨で、一般道道遠軽芭露線の湧別川に架かるいわね大橋は、橋脚の沈下と上部工に損傷を受けた。幸いにも人的被害は発生しなかったが、復旧までには約2年かかる見通しであるため、北海道オホーツク総合振興局網走建設管理部では、同橋の安全確保と供用の早期再開を目指した復旧工事を進めている。その現場をレポートする。
洗掘によりP7橋脚のフーチングが沈下
2径間(P6-P7とP7-P8間)の桁が沈下
橋梁概要と被災状況
同橋は、1980年に供用された橋長336.6m、全幅員9.9m(車道部幅員6.75m+歩道部幅員2.25m+地覆幅0.90m)の鋼10径間単純合成鈑桁橋。JR遠軽駅や役場のある遠軽町西地区と住宅地が広がる東地区を結ぶ遠軽町市街中心部に位置しており、住民にとって重要な役割を果たしている。交通量は3,925台(平日24時間/H27センサス)となっていた。被災により同橋が通行止めになったことで、住民は上流に架かる国道242号の遠軽大橋への迂回をしなければならなくなった。同橋の補修・補強履歴では2007年に耐震補強工事として落橋防止装置(緩衝チェーン)設置工を実施している。
位置図(北海道オホーツク総合振興局網走建設管理部提供。以下、注釈なき場合は同)
橋梁一般図(赤色部分が被災箇所)
網走建設管理部では、時間雨量(1時間20mm/2時間35mm/3時間50mm)と連続雨量(60mm)を超過した時点から定期的に道路異常時パトロールを開始したが、7月4日午前7時15分のパトロールでは同橋に異常は認められなかった。同8時45分に地域住民から警察に通報があり、橋脚の沈下と上部工の損傷が確認され、警察が現地で緊急の通行規制(513m)を実施し、同55分には網走建設管理部が通行止め(513m)を実施している。
その後、網走建設管理部では橋脚の沈下の監視を右岸の高水敷から固定カメラによる24時間体制で行い、5日からはノンプリズム測定機器による沈下観測を開始した。12日時点でも河川の水位が下がっていなかったため、詳細調査に着手できなかった。
沈下したのは低水路部のP7橋脚(直接基礎、壁式橋脚)で、洗掘によりフーチングが上流側約1.5m、下流側約1m沈下した。
P7上流側から/P7-P8間桁下から
これにともない、P6-P7とP7-P8間の桁(いずれも支間長32.95m)がP7部分で約1.5m沈下した。P7上の支承と伸縮装置の破断、防護柵の変形も発生した。P5-P6とP8-P9間の桁も落橋防止装置で桁連結されていたため、若干の変形が見られたが、大きな損傷とはならなかった。
P6-P7とP7-P8間の桁の沈下
橋面の損傷(左写真:大柴功治撮影、以下、大柴撮影は*)
P7部分での桁の沈下/P7上の支承の破断(*)と伸縮装置の損傷
P6部分の損傷(*)
P7とP6に橋脚保護ブロックを295個設置
復旧工事①(橋脚保護ブロック設置)
下流側の分離歩道橋は、河川の水位が下がったことから、点検を実施し、安全が確認できたため、17日には午前6時から午後7時の間に限り通行可能とした。
復旧工事は19日から再出水に備えた橋脚保護ブロックおよび大型土のうの設置工事に着手した。右岸側からの施工にあたり、ブロックや重機の搬入路と足場を確保するために砂利を敷くとともに、既設護岸ブロックを傷めないように搬入路の一部に大型土のうを設置し、さらに大型クレ-ンが走行することから鉄板を敷いた。保護ブロック(重量2t/個)は分離歩道橋の橋脚を含めたP7とP6の周囲に設置し、P7側は断面をそろえて下流側から上流側へ向けて160個を設置していった。
保護ブロック設置図
P7側の設置工
P6側の設置工
P6側は重機足場確保のため、土砂を入れて足場をつくりながらブロックを積み、さらにその上に土砂をかぶせて積む作業を上流側から下流側へ向けて繰り返して135個を設置していき、8月3日に完了した。
橋脚保護ブロック設置工完了(左:P7側/右:P6側)