中国道有野川橋 スピンジェットノズル+桁下面からの低圧樹脂注入
NEXCO西日本 全て桁下から施工可能な増厚床版部剥離補修システムを初採用
鉄道線直上の径間で新システムを採用
水養生に細心の注意
今回、増厚補修システムを採用したのは、神戸電鉄三田線直上のA1~P3および、下り線のみP4まで至る部分の合計約1,900㎡。支間長はA1側から27.64m、32.7m、28.0m、19.05m。斜角は87~91°とほとんどない。横断勾配は3%。鉄道交差部という条件以外は、比較的補修しやすい構造と言える。
足場配置図
しかし、架線条件と桁高から足場内は狭い。当日はスピンジェットノズルの施工を見学するため内部に入ったが、下段足場(クリアランスは70mm程度か?)の移動にはやはり苦労した。足場には設置上の安全と施工性を考慮して、ここではスパイダーパネルが採用されていた。
千鳥に削孔している
スピンジェットノズルは、ヘッドの高圧水射出口(ノズル)を複数、水平方向に配置しノズルを高速回転させながら水を射出することで、最小0.1mm幅のひび割れや剥離面にあるノロなど堆積物を取り除く装置である(右図)。ひび割れや剥離位置は先述した通り、Single i 工法で床版下面から位置を確認し、その位置に床版下面からφ32mmの孔を千鳥配置で穿孔し、そこに装置を差し込み、治具で固定した後に施工する。1孔平均で半径500mmの範囲の不純物を除去することが可能。除去の確認は排出される水の色の変化(不純物が混ざっている場合は乳濁食で徐々に無色透明に変わっていく)で確認する。課題となるのは水の処理だ。上部へのしみ出しは、「増厚界面より上にノズルを出さず、水平方面にしか水を射出しないことから生じない」(NEXCO西日本)としている。また、同システムは水圧100MPa、水量37l/毎分のポンプを使っている。下は供用している鉄道のため、水を外部に漏らすことは厳禁だ。そのため、射出する孔の直下にはバキュームを配置して水を吸い取るとともに、他の予め穿孔された孔から出た水は、下に配置した桶で受け止める。さらに足場内は防炎シートと養生シートで二重防護し、水の外への漏れ出しを防止している。
施工フロー/削孔状況
洗浄状況
排出される水の色で洗浄状況の進捗を調べる。
広範囲の孔から水が落ちることでひび割れの広がりもわかる
7割以上の充填率が期待できる
床版取替までの時間を稼ぐ
その後、床版下面の同じ穴から水中硬化型エポキシ樹脂(今回は、コニシ製『ボンド E 2601』)を低圧注入する。同樹脂は水中硬化型のため、通常の樹脂より乾燥養生に要する時間を短くできる。最小0.1mm~最大10mmのひび割れ幅に充填することが可能だ。ノロなど不純物の除去率を大幅に改善しているため、樹脂接着面積も高まっており、7割以上の充填率が期待できるため、「少なくとも10年以上の耐久性が期待でき、床版取替までの時間を稼ぐことが可能になる」(同)ということだ。
樹脂注入状況
施工人員および1日当たり施工面積は、スピンジェットノズルで1班6人、30㎡。低圧樹脂注入が1班5人、100㎡。先行して内部を洗浄し、ある程度進んだのちに樹脂注入を行うという手順となる。